【どう見るこの相場】「予測不可能」な4年間のディールを前に金関連株に消去法的な安全資産投資

■米国第一主義の行方と市場の動揺、金価格は史上最高値へ

 石破茂首相と穏かに共同記者会見をするトランプ米大統領をテレビ画面で観て、「タリフマン(関税男)」の印象は変わっただろうか?これなら週明けにはUSスチールの買収にストップを掛けられている日本製鉄<5401>(東証プライム)は安心買いできると考えた投資家は少なくないかもしれない。しかし、油断はできないとするのが、テレビや新聞などの大手メディアの論調である。

■トランプ・リスクが市場を揺るがす、先行き不透明な4年間

 揺さぶられて振るい落とされ、担ぎ上げられハシゴを外されるなどと散々に振り回された記憶がなお生々しいからだろう。兜町でいうところの大仕手そのものである。メキシコとカナダへ25%の追加関税を決定したと思ったら発動を1カ月延期し、パレスチナのガザ地区の所有・再開発構想を発表して、国際的なブーイングを浴びたら、ガザ住民の強制移住は一時的なものだと大統領報道官が、釈明に追われた。

 もともと「予測不可能」といわれたトランプ大統領の「ディール(取引)」である。目指すところが民主主義や自由主義のイデオロギーの擁護ではなく、唯一「アメリカンファースト(米国第一主義)」のようだから、「一将功なって万骨枯る」の「近隣窮乏化政策」のにおいがふんぷんとする。対峙する強権主義国家はもちろん、仲間内の同盟国でさせ何を標的にどんな弾丸がどういう経路で飛んでくるか身構えなくてはならない。穏やかに共同記者会見を終えた石破茂首相にも、後から飛んでもない請求書が送り付けられることを願い下げにしたい。

 1月20日の就任式からまだ3週間しか経っていないのにこの「トランプ・リスク」、ちゃぶ台返しである。トランプ大統領の任期は、あと4年間も残っているから「米国第一主義」がどこまで突っ走るのかまさに「予測不可能」で、「パンドラの箱」が開いて魑魅魍魎が飛び出したら後戻りできなくなる恐れさえ心配になる。マーケットは、就任式以来、上下に大きくブレた。日経平均株価は一時、4万円台にタッチしたものの、前週末7日は279円安と反落してほぼ往って来いとなり、ニューヨーク工業株30種平均(NYダウ)は、2月6日の取引時間中に昨年12月の過去最高値に接近したものの前週末は続落して1月21日の終値を277ドル上回るだけで、為替相場も、1ドル=156円台の円安・ドル安から前週末は150円台と急速な円高・ドル安に振れた。

■円高・ドル安と日米金利差の縮小が影響、金先物は上昇基調

 この円高・ドル安は、米国の10年物国債利回りが一時、4.620%と上昇したものの、足元では4・423%と低下し、安全資産の国債買いと日本銀行による政策金利引き下げによる日米金利差縮小が要因となっている。この安全資産買いでは、一貫して上昇しているのがニューヨーク商品取引所の金先物価格である。1月21日のトロイオンス=2759.2ドルから連日のように史上最高値を追い、前週末7日は一時、2910.6ドルと史上最高値まで買われ、10.9ドル高の2887.6ドルで引けた。1月の米国の雇用統計の内容が強弱マチマチとなり、FRB(米連邦準備制度理事会)の金利引き下げの先延ばし観測が強まり、同じ安全資産の国債が売られ、10年物国債利回りが上昇したのとは対照的となった。

 金は、「有事の金買い」、「無国籍通貨」ともいわれ安全資産の最たるものである。そこに各国の中央銀行は、ドル離れへ準備資産に占める金の保有ウエートを高めて価格が上昇し、さらに米国の経済制裁や今回の追加関税を回避する買い増し需要の上乗せも予想される。市場コンセンサスでは、早くから2025年年末の金先物価格は、1トロイオンス=3000ドルと強気に観測されていたものの、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利据え置き、利下げ回数の減少から後退を余儀なくされていた。それが「トランプ・リスク」とともに金先物価格が連日の最高値追いと騰勢一方で、市場コンセンサスは10カ月以上も早く実現可能性を強めている。

■先行き不透明な市場、金関連株に投資家の関心集まる

 足元のマーケットでは、折からの決算発表で好業績銘柄や業績上方修正銘柄、株主還元銘柄への物色を強め業績相場様相となっているが、今後の業績推移の前提となる為替動向やトランプ大統領の追加関税政策は不透明である。となれば消去法的に浮上するのは、金価格関連株の可能性も強まる。金関連株には、今週相次いで決算発表を予定する銘柄もあり、産金株、貴金属回収のリデュース株、貴金属買い取り・再販のリユース株の定番銘柄にスタンバイするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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