【米国第一主義の壁】USスチール買収の行方―トランプ流交渉術の真意

■日米経済関係の分岐点―日本製鉄の苦悩

 石破茂首相と並び、穏やかな表情で記者会見を行うトランプ米大統領。その姿に安心した投資家もいたかもしれない。しかし、楽観は禁物だ。トランプ氏の「ディール(取引)」は常に予測不能であり、米国第一主義を貫く姿勢に変わりはない。米国経済のためならば、同盟国さえも容赦なく巻き込む。それが彼の政治スタイルだ。日本製鉄<5401>(東証プライム)によるUSスチールの買収計画も、その波に飲み込まれた。

■トランプ大統領「誰もUSスチールの株式の過半数を取得することはできない」

 トランプ大統領は「誰もUSスチールの株式の過半数を取得することはできない」と明言し、事実上の買収禁止を打ち出した。日本製鉄にとっては計画の見直しが避けられない状況となった。代替案として「巨額の投資」を行うことで合意したものの、その具体的な内容は未定である。トランプ氏は、日本との経済協力を重視しているとしながらも、買収ではなく米国内での生産拡大や資本参加といった形での関与を求めているようだ。日本製鉄としては、投資のメリットを慎重に見極めながら、米国市場での立ち位置を確保する必要がある。

 今後の焦点は、トランプ政権が打ち出す関税政策にもある。輸入鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課す方針も発表した。これが日本製鉄の米国事業に与える影響は計り知れない。日米間の経済関係は、単なる貿易問題にとどまらず、安全保障や外交とも密接に絡み合う。日本製鉄の決断が、日米の経済関係にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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