綿半ホールディングス、25年3月期3Q累計大幅増益で通期再上振れの可能性、建設事業の工事が順調に進捗

 綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は経営方針に「地域に寄り添い、地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。25年3月期は大幅増益予想としている。建設事業の工事が順調に進捗し、小売事業の収益性向上なども寄与する見込みだ。第3四半期累計が大幅増益で利益進捗率も高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想に再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り歩調だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■小売事業、建設事業、貿易事業を展開

 ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。

 24年3月期のセグメント別業績は、小売事業の売上高(外部顧客への売上高)が788億68百万円で営業利益(全社費用等調整前)が13億60百万円、建設事業の売上高が403億24百万円で営業利益が11億54百万円、貿易事業の売上高が76億69百万円で営業利益が11億47百万円、その他(不動産事業など)の売上高が12億09百万円で営業利益が1億11百万円、営業利益の全社費用等調整額が▲9億58百万円だった。

■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進

 小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態、綿半パートナーズがグループの共同仕入やプライベートブランド(PB)商品の共同開発など展開している。

 基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。

 スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込んでいることが特徴である。中心市街地型店舗開発では22年9月に長野市中心部・行政庁舎に近い権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店をオープンした。生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。24年3月には、長野県内南信地域で食品スーパーマーケットを展開するキラヤと綿半ホームエイドの共同配送拡大、および長野県と北陸3県にファミリーレストランや焼肉店を展開するあっぷるアイビーと綿半ホームエイドの肉類の共同配送を本格的に開始した。

 M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化、22年4月に建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化、藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入した。

 23年3月には小諸動物病院の全株式を取得した。綿半ドラッグと連携した動物用医薬品の取り扱い、犬猫療法食等の企画販売、店舗におけるワクチン投与やトリミング事業の展開など幅広くペット市場に参入する。24年4月には養豚事業者向けに生産管理システムを開発・提供するEco―Porkと資本業務提携した。25年1月には綿半パートナーズが綿半オリジナル商品「冷凍讃岐うどん」のシンガポールへの輸出を開始した。

 小売事業の月次売上(速報値)を見ると25年1月は全店が99.7%、既存店が99.9%だった。PB商品が新商品投入や売場拡充等で好調だったが、気温の高い日が多く積雪も少なかったため季節商品が低調だった。なお24年4月~25年1月累計ベースでは全店が100.8%、既存店が101.3%となっている。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み、木造住宅も拡大

 建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「stage W」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。

 またM&Aによって子会社化したサイエンスホーム(静岡県)が戸建木造住宅FC事業、夢ハウス(新潟県)が戸建木造住宅販売・加盟店運営を展開するなど、木造住宅分野も注力している。23年1月には自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を開始、23年5月には木造システム建築「PREST WOOD」を開始した。23年6月には綿半ソリューションズが埼玉県川島町および東急不動産と、川島町における持続可能なまちづくりに係る協定書締結を発表した。再生可能エネルギー導入拡大を推進する。

 24年4月には木材加工品製造・販売の征矢野建材を連結子会社化(24年6月に社名を綿半建材に変更)した。24年9月には綿半建材が(有)須江林産(長野県佐久市)の全株式を取得した。これにより、素材丸太の生産から加工・施工・販売まで、木材に関わるすべてをグループ内で展開する体制を構築した。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売

 貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

 23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。24年1月には綿半トレーディングが世界的な化学・エネルギー企業であるSasol Chemicals社と、日本のパーソナルケア市場における独占販売代理店契約を締結した。化粧品原料ラインナップの強化および販売拡大に取り組む。

■中期経営計画

 23年5月に策定した新中期経営計画(24年3月期~27年3月期)では、経営方針を引き続き「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」として、目標数値には最終年度27年3月期の売上高1500億円、経常利益45億円、経常利益率3.0%を掲げている。地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。

 24年11月には九電工<1959>と共同で綿半ウッドパワーを設立(出資比率65%)すると発表した。ソヤノウッドパワー(SWP)の発電事業を承継(25年6月頃に新会社へ事業移管予定)し、木質バイオマス発電事業に本格参入する。また24年11月には綿半ソリューションズが、持続可能な脱炭素社会の実現を目指す企業グループである日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)へ加盟した。

■25年3月期3Q累計大幅増益、通期は再上振れの可能性

 25年3月期連結業績予想(24年10月25日付で上方修正)は売上高が24年3月期比5.4%増の1350億円、営業利益が24.0%増の35億円、経常利益が14.3%増の37億円、親会社株主帰属当期純利益が10.6%増の20億50百万円としている。配当予想は1月30日付で期末5円上方修正(上場10周年記念配当を実施)し、24年3月期比6円増配の29円(期末一括、普通配当24円+記念配当5円)としている。10期連続増配予想で予想配当性向は28.2%となる。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比5.0%増の1009億67百万円、営業利益が37.4%増の29億95百万円、経常利益が29.5%増の32億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益が41.0%増の21億46百万円だった。

 大幅増益だった。小売事業における物流コスト削減や、建設事業における大型案件の順調な進捗などが牽引した。なお特別利益では前期計上の固定資産売却益1億87百万円が剥落したが、負ののれん発生益51百万円を計上した。特別損失では前期計上の減損損失1億33百万円が剥落した。

 小売事業は売上高が0.7%増の605億52百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が60.7%増の17億73百万円だった。売上高は全体としては前年並みにとどまったが、物流コスト削減等により収益性が向上して大幅増益だった。

 建設事業は売上高が16.4%増の337億96百万円、利益が107.0%増の13億11百万円だった。大幅増収増益だった。リニューアル分野の大型案件が順調に進捗した。

 貿易事業は売上高が5.1%減の57億12百万円で、利益が41.1%減の6億01百万円だった。納入時期のズレの影響で減収減益だった。その他事業(不動産事業等)は売上高が4.1%減の9億06百万円、利益が45.7%減の59百万円だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が318億26百万円で営業利益が8億26百万円、第2四半期は売上高が334億44百万円で営業利益が9億29百万円、第3四半期は売上高が356億97百万円で営業利益が12億40百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いて、大幅増益予想としている。建設事業の工事が順調に進捗し、小売事業の収益性向上も寄与する見込みだ。第3四半期累計の進捗率は売上高が75%、営業利益が86%、経常利益が87%、親会社株主帰属当期純利益が105%だった。第3四半期累計が大幅増益で利益進捗率も高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想に再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末時点の継続保有株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続保有している株主を対象に、保有株式数に応じて綿半オリジナル信州特産品やマイホーム購入特典などを贈呈している。

■株価は戻り歩調

 なお1月31日の東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT―3)で自己株式60万株を取得した。

 株価は徐々に水準を切り上げて戻り歩調だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。そして13週移動平均線が上向きに転じてきた。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月10日の終値は1667円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS102円76銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の29円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1143円40銭で算出)は約1.5倍、そして時価総額は約333億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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