JSPは調整一巡、25年3月期減益予想も26年3月期収益回復期待、指標面の割安感も評価材料

 JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。新中期経営計画では、4つの成長エンジンを中心とした収益性の高い成長分野への集中投資などにより収益の最大化を図り、資本効率の向上を目指すとしている。25年3月期は需要回復遅れにより減益見込みだが、26年3月期の収益回復を期待したい。株価は戻り高値圏から反落して上げ一服の形となったが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■発泡プラスチック製品の大手

 発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレイ材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。

 22年1月には射出成形事業参入を目的としてイタリアのGHEPI社に35%出資、23年9月には射出成形事業拡大を目的としてドイツのHAPP社に70%出資した。24年1月にはリサイクル発泡ポリプロピレン(ARPRO RE)供給体制強化を目的として独GID社に30%出資した。また成長が見込まれる地域での供給体制強化に向けてインド新工場が25年1月稼働予定、メキシコ第2工場が25年第1四半期稼働予定となっている。

 24年3月期セグメント別業績は、押出事業の売上高が419億56百万円で営業利益(全社費用等調整前)が20億78百万円、ビーズ事業の売上高が872億94百万円で営業利益が65億42百万円、その他の売上高が58億円で営業利益が82百万円だった。収益は販売数量、為替、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。なお25年3月期より、その他を押出事業に統合する。

 なお、三菱瓦斯化学<4182>が所有していた同社株式の一部を自己株式として取得し、23年12月22日をもって三菱瓦斯化学が親会社に該当しないこととなった。今後は三菱瓦斯化学の持分法適用会社となって良好な取引関係を継続する。

■新中期経営計画「Change for Growth 2026」

 長期ビジョン「VISION2027」の最終段階として、24年4月に新中期経営計画「Change for Growth 2026」(25年3月期~27年3月期)を策定し、基本コンセプトにグループ全体の収益力強化、発泡樹脂製品による社会への貢献、経営期間の強化を掲げた。

 定量目標は27年3月期の売上高1600億円、営業利益100億円、営業利益率6.3%、経常利益104億円、親会社株主帰属当期純利益73億円、自己資本利益率(ROE)7.0%以上(中長期的には8%以上)とした。セグメント別目標は、押出事業が売上高540億円、営業利益(全社費用等調整前)26億円、営業利益率4.8%、ビーズ事業が売上高1060億円、営業利益86億円、営業利益率8.1%としている。前提条件は、為替が140円/米ドル、150円/ユーロ、20円/人民元、ドバイ原油価格が90米ドル/バーレルである。3期累計の投資額は300億円(押出事業60億円、ビーズ事業210億円、共通30億円)の計画としている。収益力の強化により売上高、営業利益とも過去最高を目指す。なお株主還元方針を見直し、配当性向35%以上を目安とする。

 収益力強化に向けた取り組みとしては、グローバルニッチのマーケットリーダーとしてのさらなる競争優位性の追求、4つの成長エンジンを中心とした収益性の高い成長分野への集中投資、ARPRO事業の自動車部品分野および非自動車部品分野への拡販、高まる環境ニーズに対する環境対応型製品の拡販による差別化、高付加価値製品の拡販や生産性向上によるコストダウンおよび適切な価格転嫁の実施を推進することにより、収益の最大化を図り、資本効率の向上を目指すとしている。

 なお4つの成長エンジンは、ビーズ事業におけるARPRO(アープロ)事業、押出事業における建築住宅断熱材、押出事業におけるFPD表面保護材、および新事業領域である。ARPRO事業(発泡ポリプロピレン「ピーブロック」の製品名を全世界でARPROに統一)は、インドやメキシコ北部への進出、環境対応型製品や非自動車部品分野(空調システム分野等)への用途拡大、ブランド戦略推進による増販などにより販売数量23%増(24年3月期比)を目指す。ARPROは自動車軽量化要求に対応する製品として採用が拡大しているほか、非自動車分野として北米では競技用グランド基礎緩衝材用途、欧州ではHVAC(空調システム)用途などへの採用が広がっている。

 建築住宅断熱材は、ミラフォームラムダやプレカット品など高付加価値製品の拡販により、販売数量15%増(24年3月期比)を目指す。FPD表面保護材は市場の高い成長性に加え、市場ニーズに対応した高付加価値製品の開発・拡販や新規顧客獲得により、販売数量21%増(24年3月期比)を目指す。新規事業領域は、出資する射出成形事業会社の売上規模拡大や国内開発案件(ブロー品など)の事業化に向けた取り組みを推進し、27年3月期売上高50億円を目指す。

 24年10月には押出法ポリスチレンフォーム(XPS)断熱材「ミラフォームラムダ」「ミラフォームMKS」について、環境認証ラベルEPD(環境宣言製品)の1つである「EPD Hub」を取得した。

■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスも強化

 サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスも強化している。21年4月にサステナビリティ推進室を新設、21年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明した。さらに今後も環境対応型製品による社会課題解決への貢献、グループ全体でのGHQ排出量削減、人的資本に対する取り組みを強化する方針だ。

■25年3月期減益予想だが26年3月期収益回復期待

 25年3月期連結業績予想(1月31日付で売上高・営業利益・純利益予想を下方修正、経常利益は為替差益や受取利息の増加により前回予想を据え置き)は、売上高が24年3月期比5.1%増の1420億円、営業利益が12.7%減の66億円、経常利益が9.0%減の74億円、親会社株主帰属当期純利益が18.6%減の52億円としている。配当予想は24年3月期比15円増配の80円(第2四半期末40円、期末40円)としている。連続大幅増配で予想配当性向は40.3%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比5.7%増の1082億90百万円、営業利益が10.7%減の57億39百万円、経常利益が5.9%減の64億50百万円、親会社株主帰属四半期純利益が8.9%減の49億06百万円だった。

 製品価格改定効果も寄与して増収だが、需要回復が想定を下回り、人件費増加なども影響して減益だった。なお営業外では為替差損益が1億67百万円改善(前期は為替差損66百万円、当期は為替差益1億01百万円)した。

 押出事業(その他に区分していた子会社分を当期より押出事業に変更、前期も変更後に組替)は売上高が2.4%増の374億47百万円、営業利益(全社費用等調整前)が23.6%減の15億30百万円だった。生活資材製品の食品トレー向けが順調だったが、産業資材製品における高付加価値製品の販売減少、建築土木資材製品における土木分野向けの減少などで減益だった。

 ビーズ事業は売上高が7.5%増の708億42百万円、営業利益が4.3%減の50億48百万円だった。発泡ポリプロピレン「ARPRO」を中心とする高機能材製品の自動車分野向けが減少し、人件費高騰なども影響して減益だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が344億96百万円で営業利益が12億92百万円、第2四半期は368億92百万円で営業利益が19億12百万円、第3四半期は売上高が369億02百万円で営業利益が25億35百万円だった。

 通期連結業績予想は前回予想に対して売上高を40億円、営業利益を4億円、親会社株主帰属当期純利益を1億円、それぞれ下方修正した。需要回復遅れにより売上高が想定を下回る見込みだ。26年3月期の収益回復を期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末対象、26年3月末対象から一部変更予定

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈している。なお26年3月末対象から内容を一部変更し、継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(継続保有1年以上はクオカード1000円分、継続保有期間3年以上はクオカード3000円分)する。

■株価は調整一巡

 株価は戻り高値圏から反落して上げ一服の形となったが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。2月12日の終値は2089円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS198円42銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の80円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3635円60銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約656億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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