クリナップ、25年3月期減益予想も26年3月期収益回復期待、指標面の割安感も評価材料で反発の動き強める

 クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。重点施策として、既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤強化を掲げている。25年3月期第3四半期累計は新設住宅着工の不振継続、原材料価格高騰、販管費増加等の影響を原価低減等でカバーできず減益だった。そして通期の減益予想を据え置いている。26年3月期の収益回復を期待したい。株価は調整一巡して1月の直近安値圏から反発の動きを強めている。25年3月期減益予想は織り込み済みの形だろう。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。

■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開

 厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。なお24年10月5日に創業75周年を迎えた。

 24年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門82%、浴槽・洗面部門12%、その他6%、新築・リフォーム別売上高構成比は新築45%、リフォーム51%、その他5%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%、22年3月期が19.8%、23年3月期が20.9%、24年3月期が22.0%、25年3月期中間期が22.2%と上昇基調である。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。

 中高級品に強みを持ち、厨房部門は最高級ステンレスキッチンCENTRO(セントロ)、中高級価格帯のステンレスキャビネットキッチンSTEDIA(ステディア)、普及価格帯システムキッチンrakuera(ラクエラ)、コンパクトキッチンcolty(コルティ)、浴槽・洗面部門はバスルームAQULIA-BATH(アクリアバス)、yuasis(ユアシス)、洗面化粧台TIARIS(ティアリス)などを主力製品としている。

 24年9月には普及価格帯システムキッチンrakueraをモデルチェンジして受注開始した。24年10月にはシステムバスルームSELEVIAにラインアップしたアイテム3品「ぐるもみジェット」「シルクベールシャワー」「乾動!優レールハンガー」が、公益財団法人日本デザイン振興会の2024年度グッドデザイン賞を受賞した。

 競争力強化に向けてショールーム戦略も強化している。20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。24年7月には熊本ショールームを約30年ぶりに移転オープン、24年11月にはつくばショールームをリニューアルオープンした。

 販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。物流面では首都圏の物流強化の一環として、24年4月には相模原プラットフォームをリニューアルして本格稼働した。

■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」

 長期ビジョンの「クリナップサステナブルビジョン2030」(CSV30)では、2030年度の目標として財務目標(連結)では売上高1500億円、営業利益95億円、ROE8.5%、非財務目標では2013年度比温室効果ガス50%削減、女性管理職比率15%、男性育児休暇取得率100%、有給休暇取得率60%を掲げている。

 既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。

 なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。そして24年7月には、クリナップ財団の24年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、12年間で累計奨学生は510名となった。

 23年2月にはCSV30の実現に向けて未来キッチンプロジェクトを始動した。武蔵野美術大学との産学共同で社会課題へ取り組む未来キッチンラボの創設、過去に販売したキッチンキャビリサイクルプログラムの開始、未来を担う子供達からアイデアを公募する未来キッチン・イラストコンテストの開始、という3つのアクションを通じて、2030年までにシステムキッチンの枠を超えた新しいキッチンの事業化、より心豊かな食文化の創造を目指す方針としている。また未来キッチンプロジェクトの一環として、会員制リフォームネットワーク「水回り工房」にて、23年4月よりキッチンキャビリサイクルプログラムを開始した。

 23年9月には同社ホームページ上にサステナビリティレポート2023を公開した。CSV30実現に向けた取り組みの進捗をはじめ、CSR方針を見直して新たに策定したサステナビリティ方針や、23年に策定したクリナップグループ環境ビジョン2050およびクリナップグループ人権方針も掲載した。23年12月には、グループの2030年度温室効果ガス削減目標においてSBT(Science Based Targets)イニシアチブからの認定を取得した。

 24年3月には、23年2月に始動した未来キッチンプロジェクトを通じて研究している次世代キッチンの1つとしてモビリティキッチンのプロトタイプを発表した。24年12月にはMUJI HOUSEのインフラゼロハウスの実証実験にモビリティキッチンのプロトタイプを提供した。25年1月には練馬区豊玉地区の防災イベントにおいてモビリティキッチンのプロトタイプと、ろ過循環装置の実証実験を実施した。

■25年3月期減益予想、26年3月期収益回復期待

 25年3月期の連結業績予想(24年10月31日付で下方修正)は売上高が24年3月期比1.6%増の1300億円、営業利益が22.0%減の10億円、経常利益が17.1%減の15億円、親会社株主帰属当期純利益が35.3%減の9億50百万円としている。配当予想は24年3月期と同額の31円(第2四半期末13円、期末18円)としている。予想配当性向は117.7%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比1.3%増の987億09百万円、営業利益が11.5%減の21億22百万円、経常利益が11.5%減の24億97百万円、親会社株主帰属四半期純利益が12.0%減の15億94百万円だった。

 新設住宅着工の不振継続、原材料価格高騰、販管費増加等の影響を原価低減等でカバーできず減益だった。部門別の売上高は厨房部門が0.3%減の794億61百万円、浴槽・洗面部門が0.1%増の116億07百万円だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が316億43百万円で営業利益が2億72百万円、第2四半期は売上高が318億88百万円で営業利益が1億07百万円、第3四半期は売上高が351億78百万円で営業利益が17億43百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。プロモーション強化による需要喚起や全社的な原価低減を推進するが、需要伸び悩みや原材料・資材価格高騰の影響をカバーできず減益予想としている。26年3月期の収益回復を期待したい。

■株価は反発の動き

 株価は調整一巡して1月の直近安値圏から反発の動きを強めている。25年3月期減益予想は織り込み済みの形だろう。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。2月17日の終値は658円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円34銭で算出)は約25倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約4.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1571円31銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約246億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■企業の半数以上が生成AIを活用、一方で会計事務所の6割は未経験  ミロク情報サービス(MJS)<…
  2. ■2025年から日米でプロモーション展開、東京シリーズでキャンペーンも  伊藤園<2593>(東証…
  3. ■360度カメラ映像と3Dモデルを組み合わせ、作業員の動きも把握  東洋建設<1890>(東証プラ…
2025年2月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
2425262728  

ピックアップ記事

  1. ■割安水準に放置されている銘柄は?  今週の当コラムでは、材料株マニア向けにコメ・卵価格高騰関連株…
  2. ■日経平均4万円は幻か?「前門の虎、後門の狼」でレンジ相場続く  「冬来たりなば春遠からじ」という…
  3. ■決算発表を控えた金関連株、消去法で選好される可能性も  米国の10年物国債利回りが一時上昇したも…
  4. ■米国第一主義の行方と市場の動揺、金価格は史上最高値へ  石破茂首相と穏かに共同記者会見をするトラ…
  5. ■業務効率化や生産性向上で目覚ましい成果  生成AIの導入が、日本の大手企業で加速している。パナソ…
  6. ■個人利用率わずか9%、中国の6分の1以下という現実  日本のデジタル化の遅れが、生成AI分野でも…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る