インテージホールディングス、25年6月期は上方修正して増益幅拡大見込み、ビジネスインテリジェンス事業が好調
- 2025/2/25 10:30
- アナリスト銘柄分析
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インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。成長戦略として、Date+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM推進への価値を創出することなどを目指し、NTTドコモとのシナジー創出も推進する。25年6月期は2月6日付で利益予想を上方修正し、期初計画に対して増益幅が拡大する見込みとした。ビジネスインテリジェンス事業が計画以上に好調に推移するほか、マーケティング支援事業におけるコスト最適化施策なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は戻り高値圏で上げ一服の形となったが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。なおTOBによって23年10月にNTTドコモの連結子会社となった。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。24年6月期のセグメント別構成比は、売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援65%、ヘルスケア分野のマーケティング支援23%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援35%、ヘルスケア分野のマーケティング支援52%、ビジネスインテリジェンス13%だった。
海外事業に関しては23年1月に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。市場環境の変化に対応してアジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針とした。
■消費財・サービス分野のマーケティング支援
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。24年7月にはNTTドコモとの合弁会社であるドコモ・インサイトマーケティング(DIM)の株式を取得して完全子会社化した。
24年9月にはインテージがエコノミクスデザインと業務提携した。精度の高い価格調査方法であるプライシングソリューション「BDMオークション」の提供を開始する。
■ヘルスケア分野のマーケティング支援
ヘルスケア分野のマーケティング支援は一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。24年9月にはインテージヘルスケアが展開するCRO(医薬品開発業務受託機関)事業をアルフレッサホールディングスに譲渡した。
22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。
■ビジネスインテリジェンス
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。
■第14次中期経営計画
第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)では成長戦略として、Date+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進への価値を創出することなどを目指し、NTTドコモとのシナジー創出も推進する。目標値には、最終年度26年6月期の売上高735億円、営業利益60億円、一人当たり利益(=(営業利益+投資)/人員数)GAGR12%、ROE(自己資本利益率)12%などを掲げている。24年2月にはシナジー戦略部を新設した。
利益改善については、各セグメントの売上増加、販売価格の最適化、生産性向上などに加えて、SCI刷新によるコストイノベーションや新旧SCIのダブルランコストの解消を見込んでいる。配当方針については、第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとしている。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、リサーチにとどまらず販促・広告市場においても新しい価値創出を目指す新たなプラットフォームとして、子会社のリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォームの開発を推進する。第1ステップはRNIのプロダクトにインテージの事業資産を組み込んでマネタイズを加速、第2ステップはRNI特許を活用してSCIをリニューアル、第3ステップはSCI-CODE一体活用によるCXマーケティングプラットフォームの確立(提供ツールを開発してリサーチと広告・販促の一気通貫サービスを提供)を目指す方針としている。
なおINTAGE Open Innovation Fund(SBIインベストメントと共同設立)は、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。23年6月には、一人ひとりに合わせて行動を促す個別化エンジン「Nudge AI」を開発するGodotに出資した。投資先のIPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。25年2月現在の投資実績は28社、合計28.5億円となっている。
サステナビリティ経営に関しては、23年度からサステナビリティ委員会を設置して取り組みを強化している。23年12月には、健康企業宣言東京推進協議会が運営する健康企業宣言制度において、21年より3年連続で「健康優良企業 銀の認定」を取得した。24年3月には健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)に認定された。
■25年6月期は上方修正して増益幅拡大見込み
25年6月期の連結業績予想は2月6日付で売上高を据え置き、各利益を上方修正して、売上高が24年6月期比7.5%増の680億円、営業利益が36.8%増の45億円、経常利益が27.0%増の45億円、そして親会社株主帰属当期純利益が52.6%増の37億50百万円としている。配当予想は据え置いて24年6月期比2円増配の45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。予想配当性向は45.8%となる。なお25年6月期より中間配当を実施した。
第2四半期累計は売上高が前年同期比4.2%増の320億27百万円、営業利益が16.4%増の17億81百万円、経常利益が6.3%増の17億44百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が98.8%増の20億17百万円だった。
売上高は期初計画を4億72百万円下回ったが、営業利益は期初計画を6億81百万円、経常利益は6億44百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益は17百万円それぞれ上回り、期初計画の減益予想から一転して増益での着地となった。ビジネスインテリジェンス事業が計画以上に好調に推移したほか、マーケティング支援事業におけるコスト最適化施策の成果や、CRO事業譲渡に係る諸費用が計画を下回ったことなども寄与した。営業利益2億51百万円増益の要因分析は、増収効果で12億88百万円増加、変動費増加で3億05百万円減少、人件費増加で2億46百万円減少、経費増加で4億60百万円減少、投資増加で25百万円減少だった。なお特別利益に事業譲渡益15億88百万円を計上、特別損失に投資有価証券評価損3億82百万円を計上した。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は売上高が12.7%増の216億91百万円、営業利益が3.0倍の2億27百万円だった。売上面はパネル調査やカスタムリサーチが堅調に推移し、ドコモ・インサイトマーケティングの新規連結も寄与した。利益面は増収効果で人件費や投資費用等の増加を吸収した。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が11.7%減の66億09百万円、営業利益が8.0%増の11億86百万円だった。売上面はCRO(医療品開発業務受託機関)事業売却の影響で減収だが、主力のリサーチ事業が堅調に推移し、収益性が改善した。
ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が7.2%減の37億26百万円、営業利益が3.3%増の3億67百万円だった。売上面は前期の大型案件の反動で減収だが計画を上回り、利益面も価格設定見直しや業務効率化等の効果で計画を上回った。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が150億57百万円で営業利益が1億87百万円、第2四半期は売上高が169億70百万円で営業利益が15億94百万円だった。
第2四半期累計の各利益が計画を上回ったため、通期利益予想は期初計画に対して営業利益を7億円、経常利益を7億円、親会社株主帰属当期純利益を50百万円それぞれ上方修正し、期初計画に対して増益幅が拡大する見込みとした。
修正後のセグメント別計画については、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が14.6%増の472億円で営業利益が37.9%増の16億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が9.3%減の130億円で営業利益が35.5%増の23億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が0.4%増の78億円で営業利益が39.2%増の6億円としている。
ビジネスインテリジェンス事業が計画以上に好調に推移するほか、マーケティング支援事業におけるコスト最適化施策なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。
■株価は上値試す
株価は戻り高値圏で上げ一服の形となったが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月21日の終値は1700円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS98円21銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS844円73銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約687億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)