ラバブルマーケティンググループ、25年10月期は増収増益予想、SNSマーケティング事業が牽引
- 2025/2/25 10:32
- アナリスト銘柄分析
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ラバブルマーケティンググループ<9254>(東証グロース)は大企業・ブランド向けを中心とするSNSマーケティング支援を主力に、成長戦略としてSNSマーケティング事業の拡大加速、DX支援事業の基幹事業化、東南アジアを中心とする海外展開、新しいテクノロジーを活用した新規事業の育成、サステナビリティマネジメントを推進している。25年10月期もSNSマーケティング事業が牽引して増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く安値圏だが、ボックスレンジ下限で調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお3月14日に25年10月期第1四半期決算発表を予定している。
■SNSマーケティング事業を主力としてDX支援事業も展開
企業やブランドのSNSマーケティングを支援するSNSマーケティング事業を主力とする持株会社である。SNS普及期の08年に設立(コムニコ設立、14年に純粋持株会社へ移行)して培ったSNSマーケティングに関する豊富なノウハウを強みとしている。さらに第2の柱としてDX支援事業も展開している。
子会社はSNSマーケティング事業のコムニコ、23年4月に設立したジソウ、SNSに関する正しい知識の普及と効果的かつ安全にSNSを活用できる人材育成を目的として16年11月に設立した一般社団法人SNSエキスパート協会、23年4月に子会社化したタイのDTK AD、DX支援事業のDXディライト、24年11月に子会社化したWeb制作・マーケティング支援のユニオンネットである。また25年2月には子会社インバウンド・バズを設立し、タイのTALONTRAVELからインバウンドメディア事業(訪日タイ人観光客向けインバウンドメディア運営・インバウンドプロモーション支援)を譲り受けた。
24年10月期のセグメント別業績(売上高は外部顧客への売上高、利益は全社費用等調整前営業利益)は、SNSマーケティング事業の売上高が20億58百万円で利益が6億06百万円、DX支援事業の売上高が1億03百万円で利益が7百万円の損失だった。SNSマーケティング事業の売上高構成比は運用支援が79.2%、運用支援ツール提供が20.1%、教育が0.7%だった。
■SNSマーケティング事業は運用支援~ツール提供~教育の好循環で成長
SNSマーケティング事業は、SNSマーケティングに関する運用支援~運用支援ツール提供~人材教育サービスという3つのソリューションで構成されている。企業のSNSマーケティングのオペレーションをフルサポートし、3つのソリューションが相互補完しながら好循環で成長するビジネスモデルを特徴としている。コムニコは予算規模の大きい大企業やブランド、ジソウは中堅・中小企業など小規模でSNS運用する企業・団体向けを主たるターゲットとして展開している。SNSエキスパート協会は人材教育サービスを展開している。
運用支援は、SaaS型SNS運用支援(アカウント投稿・分析)ツールcomnico Marketing Suiteや、SNSキャンペーン支援ツールATELUにより、顧客企業のSNSアカウント戦略策定からアカウント開設、運用支援・代行、投稿コンテンツ制作、コメント対応、キャンペーン企画・運営、広告出稿、レポート作成、効果検証までをワンストップサービスで提供(受託)している。ATELUのキャンペーン実施数は24年11月末時点で累計1.3万件を突破した。
新ツール・サービスの開発では、23年3月にInstagramのダイレクトメッセージの自動応答に対応するチャットボットツールautouを開始、24年5月にジソウが生成AI機能を搭載したMEOツール・運用代行サービスを開始、24年7月にはジソウがOTA(Online Travel Agent)運用支援サービスを開始、24年11月にはジソウがデジタル広告運用支援サービスを開始した。25年1月にはコムニコが、食分野に特化したインフルエンサーマーケティング支援サービス「Life in the Kitchen」(24年12月にアーティザンから事業譲受)の本格提供を開始した。
人材教育サービスは、SNSエキスパート協会がSNSアカウント開設・運用に係るノウハウや、炎上などSNSに潜むリスクに関する内容を体系化した検定講座を開発・提供している。このほかにセミナー、講演、書籍、メディアを通してSNSに関する正しい知識の普及・啓蒙活動にも努めている。社内人材のプロ化にもつながり、3つのソリューションの相乗効果を高めている。
■海外は東南アジアを中心に展開強化
海外は23年4月にDTK ADを子会社化し、東南アジアを中心にインバウンドプロモーションや海外マーケティング支援の事業展開を開始した。23年7月にはアジア向け越境ECを支援するアジアンブリッジと資本業務提携し、DTK ADとアジアンブリッジがサービス提供エリアを拡大している。
23年8月にはVIDA Corporationおよびプログレッソ ディレクションと協業して「お試し出店サービス」を開始した。海外出店を希望する飲食事業者に対し、期間限定で海外に出店するために必要な戦略の策定、テナントの紹介、仕入業者の手配、集客のためのマーケティングソリューションなどを提供する。23年10月にはマレーシアにおける「お試し出店サービス」の展開促進を目的として、VIDA Corporation、プログレッソ ディレクションおよびザクロスと共同で、マレーシアに合弁会社TASTE FOOD JAPANを設立した。24年5月には「お試し出店サービス」第2弾のプロジェクトとして、富山ブラックラーメン「麺家いろは」のマレーシア初進出支援が決定した。同店初の試みとなる「ハラル」メニュー提供店舗として出店する。24年6月にはマレーシアに現地法人を設立した。
今後の海外展開としては、その他のアジア地域にも支援領域を拡大し、東南アジアに進出する日系企業のマーケティング支援や東南アジアからのインバウンド需要の獲得、双方の顧客に対するアップセル・クロスセルにより、海外事業拡大を目指す方針だ。25年2月には子会社インバウンド・バズを設立してインバウンドメディア事業を譲り受けた。
■大手企業・ブランド向け運用支援が中心
SNSマーケティング事業の主な収益は、SaaS型月額課金の運用支援ツール利用料、月額課金の運用支援基本料金、従量課金のコンテンツ制作料金(企画数、原稿作成、撮影数など投稿数によって変動)である。受注は大手広告代理店経由と直接受注がある。23年3月期の継続契約率はcomnico Marketing Suiteが98%以上、ATELUが97%以上と高水準である。
同社のSNSマーケティング運用支援は大手企業を中心に銀行、小売、情報通信、飲食サービス、自治体など多種多様な企業・官公庁に幅広く導入されている。多数のブランドを展開する企業がブランド毎にSNSアカウントを運用するケースが増えているため、大型案件の受注が増加傾向となっている。複数アカウントのクライアント例(23年10月末時点)としては、大手ITグループ245アカウント、大手自動車メーカー166アカウント、大手IP会社41アカウント、大手出版社41アカウント、ライフスタイルブランド会社26アカウント、大手ホテル運営会社20アカウントなどがある。
■主要KPI
24年10月期のSNS運用支援新規受注件数は前年同期間449件比7.1%増の481件だった。また24年10月期末時点のロイヤルクライアント(年間取引高10百万円以上の顧客)は23年10月期末比1社増加の42社で、取引高上位10社の平均取引高は20.6%増の約63.7百万円となった。なおジソウの支援社数は24年10月末時点で累計45社となった。
24年10月末時点のSNS運用支援ツール累計契約件数は23年10月末比54件増加の594件(comnico Marketing Suiteが20件増加の416件、ATELUが24件増加の157件、その他が10件増加の21件)となった。また24年7月~10月のARR(年間経常収益)は前年同期比9.4%増の2億96百万円で、解約率は0.7%だった。comnico Marketing Suiteの4アカウント以上契約社数は23年10月末比24社増加の108社となった。
人材教育サービスでは、24年10月末時点の累計検定受講者数(SNSリスクマネジメント検定、SNSエキスパート初級、SNSエキスパート上級)が23年10月末比743人増加の6309人となった。
■成長に向けてDX支援や新規事業も育成
同社は大企業・ブランド向けを中心とするSNSマーケティング支援を主力に、成長戦略としてSNSマーケティング事業の拡大加速、DX支援事業の基幹事業化、東南アジアを中心とする海外展開、新しいテクノロジーを活用した新規事業の育成、サステナビリティマネジメントなどを推進している。
SNSマーケティング事業は「SNSマーケティングの総合代理店としてのシェアNO.1」を目指し、事業拡大(運用支援数拡大、支援領域拡大、運用支援ツール拡大)に向けた重点施策として、運用支援および運用支援ツール提供では付加価値の高いサービスの提供、サービス品質とコンテンツパフォーマンスの向上、新サービスの開発・拡充、SaaS型クラウドツールのクロスセル、カスタマーサクセスの実現、幅広いSNSプラットフォームへの対応とサービス拡充などを推進する。人材教育サービスではマーケティング強化によるブランディング、検定受講者数の拡大、法人向けサービスメニューの拡大などを推進する。こうした成長戦略を支えるため積極的な人材投資を継続する。
DX支援事業は成長に向けた育成事業と位置付けて、DXディライトがSalesforceを中心にMA、CRM、SFAなどの導入・運用支援を展開している。さらなる事業拡大に向けてSFA・CRM領域の開発案件新規開拓、SFA領域における事業提携などを推進している。
新規事業に関しては、SNSに関する豊富なノウハウと新たなテクノロジーを活用し、NFTやメタバースなどWeb3領域における新サービス開発・提供を目指す方針だ。22年9月にはコムニコがXRプラットフォームを提供するABALと協業した。SNSプラットフォームとバーチャル空間を組み合わせてWeb3時代のSNSマーケティングソリューションに関する新サービスの共同開発・提供を推進する。またコムニコはWeb3スタートアップ企業のプレイシンクと協業し、秘密鍵の管理不要なNFT保有手段を開発してNFT領域に参入した。24年5月にはABALと共同企画した「メタビズXR」サービスの提供を開始した。
さらにAIの積極活用にも取り組んでいる。自社内での活用による業務効率化にとどまらず、顧客のSNSマーケティングの業務効率化や品質向上に向けてAIを活用した新サービス開発も推進する。24年12月にはグループ全社でAI活用とDX推進を強化するためAI/DX推進室を設置した。
■アライアンスを積極活用
アライアンス戦略として22年11月にTikTok支援を得意とするmemeと資本業務提携した。23年1月にはコムニコがnote<5243>のnote proセールスパートナー制度のパートナー企業に認定された。23年3月にはDXディライトがオプロのパートナー企業となり、オプロが提供するBtoBサブスクリプション管理サービス「ソアスク」の企業向け導入支援を開始した。23年11月にはコムニコがマンガマーケティングを提供しているシンフィールドと提携し、SNS×マンガのマーケティング支援を開始した。24年7月にはコムニコが企業ブランディング支援を行う揚羽と業務提携した。24年11月にはXRプラットフォームを提供するABAL(22年9月に協業開始、24年10月に業務提携)へ出資した。
■サステナビリティマネジメントで人材戦略を重視
同社は、メンバーが輝くことできる「働きがいのある組織」が全活動のベースとなり、そこから生み出される事業活動によって社会の持続可能な発展に貢献するとの考え方に基づき、この循環の創造を目指してサステナビリティマネジメントを推進している。22年10月には本社を移転した。新しい発見やイノベーションが生まれる基地として多様な働き方を推進し、社員の定着、職場の一体感やエンゲージメントの向上を図る方針としている。
23年5月には従業員の働き方や成長をサポートする制度の総称を「ララサポ」に決定した。Lovable Life(ラバブルな人生)をサポートするため、環境サポート、成長サポート、健康サポート、出産・育児サポート、介護サポート、休暇制度、コミュニケーション、表彰制度、その他の9つのカテゴリーがあり、現時点で全39項目が定められている。23年12月には女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」の最高位である3つ星の認定を取得した。24年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定された。2年連続の認定となる。
■25年10月期増収増益予想
25年10月期の連結業績予想は、売上高が24年10月期比24.9%増の27億円、営業利益が9.3%増の1億50百万円、経常利益が1.4%増の1億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が10.2%増の80百万円としている。調整後EBITDA(=営業利益+減価償却費+のれん償却費+株式報酬費用)は13.6%増の2億円としている。
主力のSNSマーケティング事業が好調に推移し、24年11月に子会社化したユニオンネットの新規連結も寄与して増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は24年4月末および10月末に実施
株主優待制度については、24年4月末日および24年10月末日時点の同社株主名簿に同一株主番号で連続2回以上記載または記録され、同社株式を100株以上、半年以上継続保有する株主を対象にQUOカード1000円分を贈呈した。以降の優待対象については詳細が決定次第公表する。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍く安値圏だが、ボックスレンジ下限で調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。2月21日の終値は1390円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS55円30銭で算出)は約25倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS213円45銭で算出)は約6.5倍、そして時価総額は約20億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)