ファーストコーポレーション、25年5月期は大幅増収増益・増配予想、指標面の割安感も評価材料
- 2025/2/26 10:04
- アナリスト銘柄分析
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ファーストコーポレーション<1430>(東証スタンダード)は、造注方式を特徴として分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組んでいる。25年5月期は大幅増収増益・大幅増配予想(24年12月13日付で通期連結業績予想および期末配当予想を上方修正)としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて昨年来高値更新の展開だ。低PERや高配当利回りなどの指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■造注方式が特徴のゼネコン
東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。
造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。
品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。
■当面の目標は年商500億円企業
24年5月期は、建設事業の売上高が219億81百万円で営業利益(全社費用等調整前)が18億94百万円、不動産事業の売上高が62億85百万円で営業利益が10億26百万円、その他(設計業務、不動産賃貸、マンション管理運営など)の売上高が2億18百万円で営業利益が4億98百万円の損失だった。不動産売上は大型案件によって変動する可能性がある。建設事業の受注高は7件合計208億82百万円(うち造注が35億45百万)で、期末受通残高は344億60百万円だった。なお22年11月に受注した仮称:千葉駅東口西銀座B地区優良建築物等整備事業新築工事(26年3月完成予定)については、補助事業として入札手続を経たため一般請負にカウントしている。
24年7月に公表した新中期経営計画「Innovation2024」(25年5月期~27年5月期)の経営目標値には、最終年度27年5月期の売上高400億円(完成工事高203億円、不動産売上166億円、共同事業収入24億円、その他売上7億円)、売上総利益49億40百万円(完成工事総利益22億30百万円、不動産売上総利益20億円、共同事業収入総利益6億20百万円、その他売上総利益90百万円)、売上総利益率12.4%(完成工事総利益率11.0%、不動産売上総利益率12.0%、共同事業収入総利益率25.8%、その他売上総利益率12.9%)、営業利益29億50百万円、経常利益28億円、親会社株主帰属当期純利益19億40百万円、受注高200億円(うち造注50億円)を掲げている。
当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組み、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すとしている。重点施策として、資本収益性の向上では造注比率の向上、建設事業の強化、再開発事業の推進により、数値目標の着実な達成を目指す。成長投資としてはM&Aの積極活用に加え、研究開発投資や人的資本投資も強化する。また市場評価の向上に向けて、連結配当性向30%以上や機動的な自己株式取得により株主還元を強化するほか、IR活動も強化する。
中核事業の造注方式の強化では、東京郊外の好立地アクティブ・シニア向けマンションなどを推進するほか、九州エリアへ進出した。再開発事業の強化では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工、24年3月に完成、24年6月に引き渡し完了した。
21年9月には新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げた。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、子会社ファーストエボリューションが竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。第一弾として中央住宅および中央日本土地建物との共同事業である分譲マンション「CANVAS南大沢」(東京都八王子市)が22年11月に竣工した。
24年12月には、長崎県大村市の(仮称)大村バスターミナル地区第一種市街地再開発事業に事業協力者として事業参画することを発表した。
M&A・アライアンスでは、23年9月に小林工業(群馬県前橋市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。また23年12月に吉田組(群馬県桐生市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。
またサステナビリティ経営に関しては24年7月にマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ基本方針およびサステナビリティ推進委員会のもとで取り組みを強化している。
■25年5月期大幅増収増益・増配予想
25年5月期連結業績予想(24年12月13日付で上方修正)は売上高が24年5月期比45.7%増の415億円、営業利益が72.0%増の25億円、経常利益が68.7%増の24億円、親会社株主帰属当期純利益が73.6%増の16億40百万円としている。配当予想(24年12月13日付で期末4円上方修正)は24年5月期比11円増配の42円(期末一括)としている。大幅増配で、予想配当性向は30.6%となる。
第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比2.0倍の272億28百万円、営業利益が2.3倍の15億64百万円、経常利益が2.3倍の15億16百万円、親会社株主帰属四半期(中間期)純利益が2.3倍の10億24百万円だった。
大幅増収増益だった。完成工事総利益率が一時的に低下したものの、不動産売上高の計画を上回る大幅増収や、前期完成したJR前橋駅北口再開発事業の分譲による共同事業収入の大幅増加が牽引した。
完成工事高は0.8%減の112億86百万円、完成工事売上総利益は27.6%減の7億79百万円、完成工事総利益率は2.6ポイント低下して6.9%だった。完成工事総利益率が資材価格高騰の影響などで一時的に低下した。
不動産売上高は6.9倍の136億68百万円だった。事業用地の販売が計画を大幅に上回った。不動産売上総利益は2.8倍の10億10百万円、不動産売上総利益率は10.6ポイント低下して7.4%となった。共同事業収入は12.9倍の21億43百万円、共同事業収入総利益は24.3倍の6億56百万円、共同事業収入総利益率は14.3ポイント上昇して30.6%となった。前期完成したJR前橋駅北口再開発事業の分譲が牽引した。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が76億92百万円で営業利益が5億64百万円、第2四半期は売上高が195億36百万円で営業利益が10億円だった。
通期連結業績予想は24年12月13日付の上方修正値を据え置いている。前回予想(24年7月12日公表の期初計画値、売上高345億円、営業利益22億50百万円、経常利益21億70百万円、親会社株主帰属当期純利益15億円)に対して、売上高を70億円、営業利益を2億50百万円、経常利益を2億30百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億40百万円それぞれ上方修正した。建設事業において完成工事、完成工事総利益が順調に推移することに加え、不動産事業において事業用地販売が想定を上回り、増収増益幅が拡大する見込みだ。
修正後の通期の事業別計画(24年5月期比)については、完成工事高が5.4%減の208億円、完成工事総利益が10.9%減の17億40百万円、完成工事総利益率が0.5ポイント低下の8.4%、不動産売上高が4.0倍の157億30百万円、不動産売上総利益が2.1倍の13億50百万円、不動産売上総利益率が7.3ポイント低下して8.6%、共同事業収入が2.0倍の47億円、共同事業収入総利益が2.8倍の11億60百万円、共同事業収入総利益率が6.7ポイント上昇して24.7%としている。
なお24年11月30日時点の受注は5件(うち造注方式による成約は2件)で、受注高は合計156億29百万円となった。また24年9月には販売用不動産の売却(東京都目黒区の土地、引渡日25年6月2日予定)を発表、24年11月には販売用不動産の売却(福岡市博多区の賃貸マンション、引渡日25年2月28日予定)を発表、25年1月には販売用不動産の取得(東京都文京区の土地、引渡日25年12月26日予定)を発表している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年11月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈している。
■株価は上値試す
株価は水準を切り上げて昨年来高値更新の展開だ。低PERや高配当利回りなどの指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。2月25日の終値は898円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS137円22銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の42円で算出)は約4.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS708円48銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約120億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)