朝日ラバー、25年3月期は減益予想も3Qの営業損益が大幅に改善、26年3月期の収益回復に期待

 朝日ラバー<5162>(東証スタンダード)は自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の事業拡大も推進している。2030年を見据えた長期ビジョンではSDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。25年3月期は自動車内装照明用ASA COLOR LEDの需要回復遅れ等で減益予想だが、四半期別に見ると第3四半期は一過性費用が一巡して営業損益が大幅に改善した。積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。

 24年3月期のセグメント別業績は、工業用ゴム事業の売上高が56億45百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が3億04百万円、医療・衛生用ゴム事業の売上高が15億35百万円でセグメント利益が1億20百万円だった。地域別売上高は国内が53億02百万円、海外が18億78百万円(アジアが17億48百万円、北米が1億08百万円、欧州が21百万円)だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

 2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。

 中期事業分野を光学事業(ASA COLOR LED、ASA COLOR LRNS、白色シリコーンインキなど)、医療・ライフサイエンス事業(採血用・薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケット、ARチェックバルブ、マイクロ流体デバイスなど)、機能事業(自動車スイッチ向けゴム製品、同社独自のペルチェデバイス「F-TEM」、卓球ラケット用ラバー、風力発電関連など)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、やわらか保護カバー、伸縮配線など)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

 24年3月期の中期事業分野別の売上高は光学事業が24億85百万円、医療・ライフサイエンス事業が15億63百万円、機能事業が26億88百万円、通信事業が4億42百万円、主要製品の売上高はASA COLOR LEDが22億50百万円、医療用ゴム製品が15億17百万円、卓球ラケット用カバーが7億02百万円、RFIDタグ用ゴム製品が3億40百万円だった。

 第14次三カ年中期経営計画(23年5月公表)では数値目標に26年3月期売上高85億円以上、営業利益率5%以上を掲げている。基本戦略として、売上構成の転換(ゴム単品からモジュール・完成品へ、OEMからODMへ)によって収益力の向上を図る方針だ。

 光学事業(売上高23年3月期実績26億円、26年3月期計画30億円)では、テーマに「再構築と挑戦」を掲げた。標準製品の付加価値向上と複合モジュールの開発・展開などにより、光の可能性を追求した高付加価値製品による市場への貢献を目指す。

 医療・ライフサイエンス事業(売上高23年3月期実績15億円、26年3月期計画20億円)では、テーマに「第2の柱へ成長させる」を掲げた。ODM設計・複合デバイスやシステム機器への挑戦により診断・治療機器の製造販売を目指す。24年8月には医療・ライフサイエンス事業の強化に向け、医療機器・医療機器用製品の販売子会社として朝日フロントメディックを設立した。なお23年12月に医療・ライフサイエンス事業における今後の開発製品の受注見通しを踏まえて、第二福島工場を増築(26年3月完成予定)すると発表していたが、25年2月に増築の延期を発表した。複数の取引先と複数の開発案件に関する開発スケジュールを精査したところ、要求品質に応じた建物設計が確定できないことから増築の延期を決定した。今後の増築時期については、開発状況と受注見通しを踏まえて判断する。

 機能事業(売上高23年3月期実績25億円、26年3月期計画29億円)では、テーマに「新たな柱を創る」を掲げた。サーモモジュール応用製品の開発・ものづくり体制の確立(23年2月に相互製品販売特約店契約を締結したフェローテックマテリアルテクノロジーズとの販売連携活動強化)や、子会社で研究開発・実証実験を行ってきた風力発電のO&M(Operation and Maintennance)事業化に向けた製品開発を推進する。

 通信事業(売上高23年3月期実績6億円、26年3月期計画6億円)では、テーマに「基礎基盤を固める」を掲げた。モノ・センサ・通信規格・情報処理アプリケーションを駆使して、新たな社会価値への取組に参画するなど、スマート社会の発展に貢献することを目指す。

 成長基盤整備とWell-beingへの取組では、人材育成や社内環境整備など無形資産価値の向上、ものづくり自動化・合理化・省人化などスマートファクトリーの実践、従業員の声を聞き反映させていく環境・体制整備などWell-beingの向上、さらに地域社会貢献を推進する。

 なお資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応としては、第14次三カ年中期経営計画で掲げた各種施策を着実に推進し、EPS(1株当たり利益)などの指標を向上させ、企業価値向上に向けて収益性を高めていくとともに、株主還元の強化やIR活動の強化にも積極的に取り組む方針としている。

■新技術・新製品

 23年8月には、心臓の冠状動脈モデルの製品化を発表した。医療関係の学生向けの教育ツールとして、国際医療看護福祉大学校(学校法人国際総合学園、福島県郡山市)に採用された。

 23年9月には、独自の表面改質処理によってシリコーンゴム同士を強固に接着させる分子接着接合技術を応用し、シリコーンゴムで覆ったオリジナルのRFIDタグ「やわらか保護カバーRFIDタグ」を2種類開発した。21年から展開している「やわらか保護カバー」のラインナップを拡充した。そして23年10月には、丸紅情報システムズが代理店販売を行うEnOceanデバイスに「やわらか保護カバー」が採用された。

 24年2月には独自技術で開発した極薄「ナノシート電極」などをセットにした筋電計測スターターキットを発売した。

■SDGsへの取り組みを強化

 21年8月に「サステナビリティビジョン2030」を策定し、SDGsへの取り組みを強化している。23年3月には未来を拓くパートナーシップ構築推進会議の趣旨に賛同して「パートナーシップ構築宣言」を宣言した。23年12月には、白河工場(福島県白河市)の敷地内にV2Hシステム(Vehicle to Home:クルマから家へ)を導入した。電気自動車などに蓄えられた電気を有効活用するためのシステムで、エネルギーの有効活用を推進する。24年12月には、さいたま市リーディングエッジ企業に継続認証された。

■25年3月期減益予想だが26年3月期回復期待

 25年3月期の連結業績予想(24年10月30日付で下方修正)は売上高が24年3月期比2.5%増の73億63百万円、営業利益が77.0%減の36百万円、経常利益が85.6%減の28百万円、親会社株主帰属当期純利益が92.5%減の10百万円としている。配当予想は24年3月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の56億53百万円、営業利益が8百万円の損失(前年同期は1億14百万円)、経常利益が6百万円の損失(同1億34百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が46百万円の損失(同1億27百万円)だった。

 売上面は自動車向けスイッチ関連用品の受注増加等で増収だが、利益面は主力の自動車内装照明用ASA COLOR LEDの受注減少に加え、第2四半期までに計上した新規開発製品の立ち上げコストや既存製品の工場移管費用という一過性費用も影響して減益(赤字)だった。

 工業用ゴム事業は、売上高が4.8%増の43億39百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が61.0%減の88百万円だった。売上面は自動車スイッチ用ゴム製品や卓球ラケット用ラバーの好調で増収だが、利益面は主力の自動車内装照明用ASA COLOR LEDの受注減少に加え、第2四半期までに計上した機能性ゴム製品の立ち上げコストや既存製品の工場移管費用なども影響して減益だった。

 医療・衛生用ゴム事業は売上高が18.6%増の13億14百万円、セグメント利益が33.9%増の1億12百万円だった。診断・治療向けの採血用・薬液混注用ゴム栓や医療用逆止弁、医療シミュレータなどが好調に推移して大幅増収増益だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高18億38百万円で営業利益12百万円、第2四半期は売上高18億56百万円で営業利益61百万円の損失、第3四半期は売上高19億59百万円で営業利益40百万円だった。第3四半期は一過性費用が一巡して営業損益が大幅に改善した。

 通期連結業績予想は据え置いて、主力の自動車内装照明用ASA COLOR LEDの受注回復遅れの影響で減益見込みとしている。ただし四半期別に見ると第3四半期は一過性費用が一巡して営業損益が大幅に改善した。積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は徐々に水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。2月26日の終値は561円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円19銭で算出)は約256倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1105円64銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約26億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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