Jトラストは上値を試す展開へ、25年12月期は大幅営業増益で増配予想、指標面の割安感も評価材料
- 2025/2/27 10:07
- アナリスト銘柄分析
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Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大を推進している。25年12月期は大幅営業増益で増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は利益確定売りで昨年来高値から反落の形となったが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。
■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開
日本、韓国・モンゴル、及びインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。
24年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は日本金融事業が70億40百万円、韓国及びモンゴル金融事業が9億64百万円、東南アジア金融事業が15億09百万円、不動産事業が3億61百万円、投資事業が15億95百万円の損失、その他が2億11百万円の損失だった。不動産事業では前期計上した負ののれん発生益が剥落した。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。
■成長加速に向けて事業基盤拡大
日本金融事業は日本保証が保証事業、パルティール債権回収が債権回収事業、Frontier Capitalがファクタリング事業を展開している。なお22年4月に完全子会社化したNexus Bank(旧SAMURAI&J PARTNERS)については23年4月に吸収合併した。23年10月には西京カードを子会社化した。Jトラストグローバル証券(JTG証券、22年3月に子会社化したエイチ・エス証券が22年10月に商号変更)は、TOKYO PRO Market上場支援と一般市場へのステップアップ上場支援を1社完結で実現させた実績を持つ国内唯一の証券会社である。
韓国及びモンゴル金融事業は韓国・JT貯蓄銀行、韓国・JT親愛貯蓄銀行、債権回収業務の韓国・TA Assetが展開している。なお24年10月に、Jトラストアジアが保有するJ Trust Credit NBFI(モンゴル、以下:JTM)の全株式を譲渡(モンゴル国金融当局の承認が条件)すると発表した。これによりJTMは連結除外となる。
東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB)が銀行業務を展開している。なお23年6月に、Jトラストアジアが保有するJトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)の株式を譲渡(譲渡実行日はインドネシア金融庁の承認後)する株式売買契約を締結した。これによりJTOは連結除外となる。
24年5月にはJTRBがカンボジア王国経済財務省との間で、カンボジア王国の政府調達における入札保証および契約履行保証業務に関する覚書を締結した。24年6月にはBJIとJトラストコンサルティングインドネシアが、インドネシアランドバンク機構バダン バンク タナと新首都ヌサンタラのエコシティプロジェクトを含む土地利用に関する基本合意書を締結した。24年8月にはBJIが販売する預金商品が、インドネシア・ベストバンク2024において持続可能な銀行商品(KBMI1/民間部門)を受賞した。24年9月にはBJIが、24年のマーケターズ・エディターズ・チョイス・アワードで「グリーン・セービング・プログラム・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。また25年1月にはBJIがINDONESIA WOMEN‘S OPEN 2025にメインスポンサーとして協賛した。
不動産事業は同社、Jグランド、ライブレント、グローベルス<193A>(24年6月20日付で東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場)が展開している。なお23年2月に同社がミライノベートを吸収合併、23年5月にJグランドがライブレントを子会社化した。
投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGLH社に出資したが、17年10月にタイGLH社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGLH社、此下益司氏、およびGLH社の関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。
GLH社に対する訴訟の解決・債権回収については、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。
タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLH社の請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLH社の上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。またGLH社に対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。なおGLH社が同社に対して提起していた損害賠償を求める訴訟については、2月13日にタイの民事裁判所による判決の言い渡しがあり、GLH社の請求が全て却下された。
英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。
日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。
シンガポールにおいては、23年4月にシンガポール高等法院が被告らに対して連帯で約1億24百万米ドルおよび21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決(第1審判決)を言い渡し、控訴審においてシンガポー高等法院上訴部が23年11月22日付で第1審判決を維持する判決を言い渡した。さらに24年1月11日付で控訴裁判所が控訴を棄却し、23年4月の第1審判決が確定した。24年3月にはシンガポール高等法院がJトラストアジアの申し立てに基づき、GLH社の清算手続開始を決定し、GLH社に対して清算人を選任した。24年5月には、24年1月11日付の確定判決により約1億24百万米ドル(判決言い渡し当時の為替レート1米ドル=146円換算で約181億円)および21年8月以降の利息に係る判決債権を有しているが、同判決に基づき、キプロスにおいて此下益司氏実質的に保有している銀行預金口座等に対する強制執行を実施し、合計約8億47百万円(1ユーロ=167円、1米ドル=155円で換算)を差し押さえて回収した。なお24年3月の清算人選任に対してGLHの親会社であるGLが控訴を行っていたが、24年8月に控訴裁判所からGLによる控訴が撤回されたとの連絡を受けた。これにより、GLHの清算手続開始決定が確定した。25年1月には21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決に基づき、キプロスにおいて此下氏が実質的に保有している銀行預金口座および此下氏が実質的に保有している企業の銀行預金口座に対する強制執行を実施し、約6億07百万円を差し押さえて回収した。
その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務を展開している。J Syncは22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始した。
KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部をミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)し、持分法適用関連会社となっている。
■25年12月期は大幅営業増益で増配予想
24年12月期の連結業績(IFRS)は営業収益が23年12月期比12.2%増の1281億70百万円、営業利益が22.4%減の62億52百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が63.0%減の60億40百万円だった。配当は23年12月期と同額の14円(期末一括)とした。配当性向は31.4%となる。
前期の特殊要因(不動産事業においてミライノベートを吸収合併したことに伴い負ののれん発生益101億円を計上)の剥落により大幅減益だが、営業収益は日本金融事業の成長加速などにより過去最高と順調に拡大した。また韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業は黒字転換した。
日本金融事業の営業利益は51.2%増の70億40百万円だった。大幅増益で計画を約13億円上回って着地した。証券業務やクレジット・信販業務における手数料収益増加などで17.7%増収となり、前期に貸倒引当金(損失評価引当金)を積み増した反動も寄与した。
韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は9億64百万円(23年12月期は33億34百万円の損失)だった。貯蓄銀行業における貸出金の減少などで2.6%減収だが、利息費用の減少や貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少などにより黒字転換した。
東南アジア金融事業の営業利益は15億09百万円(23年12月期は10億19百万円の損失)だった。銀行業における貸出金増加に伴う貸出金利息収入増加、銀行預け金の平残増加や基準金利上昇に伴う預金利息収入増加などで24.3%増収となり、徹底した不良債権管理による貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少なども寄与して黒字転換した。
不動産事業の営業利益は96.7%減の3億61百万円だった。売上収益は販売用不動産増加などで23.9%増収だが、利益面はミライノベートを吸収合併したことに伴い前期計上した負ののれん発生益が剥落して大幅減益だった。
投資事業の営業利益は15億95百万円の損失(23年12月期は20億72百万円の損失)だった。PCL社に係る訴訟判決による回収金を計上して営業損失が縮小した。その他事業の営業利益は2億11百万円の損失(23年12月期は55百万円の損失)だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は営業収益が315億54百万円で営業利益が2億81百万円の損失、第2四半期は営業収益が338億73百万円で営業利益が23億38百万円、第3四半期は営業収益が314億88百万円で営業利益が29億68百万円、第4四半期は売上収益が312億55百万円で営業利益が12億27百万円だった。
25年12月期の連結業績予想については、営業収益が24年12月期比5.4%増の1351億円、営業利益が77.5%増の111億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が7.6%増の65億円としている。配当予想は24年12月期比3円増配の17(期末一括)としている。予想配当性向は34.7%となる。
セグメント別営業利益の計画は、日本金融事業が5.9%増の74億59百万円、韓国及びモンゴル金融事業が83.7%増の17億71百万円、東南アジア金融事業が100.1%増の30億21百万円、不動産事業が161.8%増の9億46百万円、投資事業が49百万円の損失(24年12月期は15億95百万円の損失)、その他事業が2億20百万円の損失(24年12月期は2億11百万円の損失)としている。
日本金融事業は信用保証業務、債権回収業務、証券業務が順調に伸長して増収増益を見込む。韓国及びモンゴル金融事業は、短期延滞債権の回収に注力して貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少を見込むほか、大型不良債権のリファイナンシング等による貸倒引当金(損失評価引当金)戻入益を見込む。東南アジア金融事業は、インドネシアでは銀行業務の積極的な貸出残高の増強など、カンボジアでは富裕層を主要顧客とする貸出および運用提案を強化する。不動産事業は総合不動産会社として商品ブランド認知に注力する。投資事業は裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、GL社に対する債権回収強化を図る。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年6月末日対象
株主優待制度は毎年6月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。25年2月には優待内容の一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。
■株価は調整一巡
株価は利益確定売りで昨年来高値から反落の形となったが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。2月26日の終値は418円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円96銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約4.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1184円52銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約575億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)