マーケットエンタープライズ、25年6月期は大幅増収増益予想、メディア・モバイル通信事業でシナジー効果発揮へ

 マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。中期経営計画では、個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。25年6月期は大幅増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸した昨年来高値圏から一旦反落したが、利益確定売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 24年6月期セグメント別(調整前)売上構成比はネット型リユース事業58%、メディア事業3%、モバイル通信事業39%、営業利益構成比はネット型リユース事業41%、メディア事業25%、モバイル通信事業34%だった。

 なお大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結し、そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。会計上の取り扱いとしては各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。24年9月には差金決済型自社株価先渡取引の先渡期間延長および先渡価格変更を発表した。また25年2月14日付でSBI証券に対して、25年2月21日を期限前解約基準日とする一部期限前解約を通知した。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 また「高く売れるドットコム」と日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」(19年2月に事業譲受)のシステム連携・送客も強化している。24年6月には出張買取専門サービス「買いクル」などを展開するRCが「おいくら」と業務提携した。「おいくら」加盟店は24年12月末時点で1000店舗を突破した。

 リユースセンターについては23年9月に広島リユースセンター、大阪リユースセンター東住吉店(大阪府内としては吹田市に続く2拠点目)を開設し、全国16拠点となった。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した自治体の不用品リユース事業は、25年1月に大阪府池田市、愛知県春日井市、岐阜県輪之内町、埼玉県さいたま市、埼玉県三芳町、宮城県利府町、静岡県沼津市、愛知県西尾市、滋賀県米原市、沖縄県名護市、茨城県阿見町、兵庫県小野市、25年2月に滋賀県彦根市、大分県国東市、島根県松江市、愛知県扶桑市、沖縄県読谷村、栃木県大田原市、東京都清瀬市、静岡県長泉町、岡山県総社市、福島県会津坂下町、愛知県阿久比町で導入され、導入自治体数は全国で239となった。

 また24年10月には静岡県に位置する磐田市、袋井市らと6者間連携のリユース事業協定を締結した。24年12月には成田国際空港と空港内で発生する不用品のリユースに関して業務提携した。25年2月には福島県に位置する二本松市、本宮市、大玉村、安達地方行政組合とリユース事業協定を締結した。

■中古農機具

 中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。

 なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。

 23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。24年6月にはバリュークリエーション<9238>と業務提携した。バリュークリエーションが運営する解体工事プラットフォーム「解体の窓口」を通じて中古農機の仕入を強化する。

■メディア事業とモバイル通信事業

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。25年2月には新サービスとして動画メディアサービスを本格的に展開すると発表した。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月に設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を公表(21年12月24日付で提出、24年3月18日付で更新)した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年9月30日には24年年6月末時点での計画進捗状況を公表した。流通株式時価総額については基準を充たしていないため、引き続き、中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年12月には日興アイ・アールの「2024年度全上場企業ホームページ充実度ランキング」において総合部門「優秀サイト」に選出された。同ランキングにおいて19年から6年連続でランク入りしている。

 なお中期経営計画については23年8月14日付で新3ヶ年中期経営計画(24年6月期~26年6月期)を公表し、目標値に26年6月期売上高300億円、営業利益20億円を掲げている。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。

■25年6月期大幅増収増益予想

 25年6月期の連結業績予想は、売上高が24年6月期比21.0%増の230億円、営業利益が134.3%増の7億円、経常利益が6億50百万円(24年6月期は40百万円)、親会社株主帰属当期純利益が3億30百万円(同4億76百万円の損失)としている。デリバティブ評価損益については算定困難なため見込んでいない。

 第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比比34.6%増の114億75百万円、営業利益が2億49百万円(前年同期は41百万円の損失)、経常利益が3億13百万円(同2億82百万円の損失)、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が1億53百万円(同6億27百万円の損失)だった。

 大幅増収で各利益は黒字転換した。ネット型リユース事業とモバイル事業の拡大が牽引し、販管費増加などを吸収した。営業利益の前年同期比2億90百万円増益の要因分析は、増益要因として増収要因で10億77百万円増、生産性向上による販管費比率改善で3億65百万円増、前期の拠点開設・移転関連一時費用解消で1億07百万円増、減益要因として本社移転関連一時費用で68百万円減、粗利益率低下で2億04百万円減、売上増に伴う販管費増加で9億87百万円減だった。営業外ではデリバティブ評価損益(SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益)が3億05百万円改善(前期は評価損1億91百万円、当期は評価益1億13百万円)した。

 ネット型リユース事業は売上高が15.9%増の59億21百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が182.5%増の4億32百万円だった。売上高の内訳は総合リユースが22.1%増の45億99百万円、マシナリー(農機具)が1.6%減の13億百万円だった。マシナリーは海上運賃高騰に伴う買い控えの影響で減収だったが、総合リユースの個人向けリユースが大幅伸長し、おいくらも順調だった。

 メディア事業は売上高が19.4%減の2億66百万円、利益が10.8%減の1億37百万円だった。Google社が実施した検索エンジンにおけるコアアルゴリズム変更の影響が継続して減収減益だった。

 モバイル通信事業は売上高が71.5%増の53億38百万円、利益が54.5%増の2億73百万円だった。新規回線獲得が順調だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が54億92百万円で営業利益が69百万円、第2四半期は売上高が59億83百万円で営業利益が1億80百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。生産性向上施策の進捗と24年4月以降の増員効果などにより大幅増収・大幅増益予想としている。通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が50%、営業利益が36%、経常利益が48%、親会社株主帰属当期純利益が47%である。利益進捗率がやや低水準の形だが、これは、同社の収益構造として引越シーズンを含む3月~5月が需要のピーク期であるため下期の構成比が高くなる季節要因のほか、当期は第1四半期に本社移転関連の一時費用が発生したことが主因である。

 なおデリバティブ評価損益については算定困難なため見込んでいないが、SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約について、2月14日付でSBI証券に対して、25年2月21日を期限前解約基準日として一部期限前解約を通知したことを発表した。この一部解約により評価損益が一部確定することになる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を拡充

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、24年6月末対象から新設し、毎年6月末時点で100株以上保有株主を対象として500円分のクオ・カードを贈呈するとしていたが、24年12月19日付で株主優待制度の拡充を発表した。拡充後は毎年6月末日と12月末時点で、それぞれ500株以上保有株主に対して2万5000円分のデジタルギフトを贈呈することとした。25年6月末より適用する。

■株価は上値試す

 株価は急伸した昨年来高値圏から一旦反落したが、利益確定売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。2月27日終値は1427円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円84銭で算出)は約23倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS164円84銭で算出)は約8.7倍、そして時価総額は約76億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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