【どう見るこの相場】『ディール相場』に疲弊する投資家、トヨタ優待で『果報は寝て待て』の選択肢
- 2025/3/10 08:28
- どう見るこの相場

■『マッチポンプ』相場の処方箋、トヨタの優待新設に見る『安全投資』の行方
「まるでマッチポンプ」などといったら、バンス副大統領から「無礼だ」とお叱りを受けるだろうか?トランプ大統領の「ディール(取引)」である。大統領就任以来、「タリフマン(関税男)」としてカナダ、メキシコ、中国などに矢継ぎ早に追加関税を発動し、関係国が報復関税に踏み切らざるをえない貿易戦争を仕掛け、その発動時期を前に今度は逆に猶予期間の設定や対象品目の縮小検討なども相次いでいるからだ。マーケットはそのたびごとに、上に下へと対応を迫まられ忙しい。トランプ大統領の自らマッチを擦って火をつけ、火が燃え上がると今度は自らポンプの水を掛けて火を消すいわゆる「マッチポンプ」の自作自演行為に揺さぶられっぱなしである。
しかもこれが追加関税だけではない。ウクライナとロシアの和平問題、中東のパレスチナ問題の地政学リスク、さらには為替相場にまで及び、先行きの不確実性だけがますます強まってくる。マーケットは、この「マッチポンプ」の繰り返しでインフレ再燃、米国景気減速の懸念を強めてきた。ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、前週末7日に222ドル高と反発したものの、水準としては今年1月21日の大統領就任式翌日より約1200ドル安、大統領選挙当選確実となった昨年11月6日からも約930ドル安となっている。
■関税から地政学まで、広がるトランプ流『ディール』の余波
この際限なく繰り返される「ディール相場」では、リスクオンかリスクオフかの方向性は不確かになり、手持ち資金が目減りするばかりである。投資家の多くは、そんな「ディール相場」に振り回されるよりもっとシンプルに安全投資第一で臨みたいに違いないのである。
そうした投資家向けに一発回答を示唆してくれたかもしれない銘柄が出てきた。トヨタ自動車<7203>(東証プライム)である。トランプ大統領が自動車に追加関税を指示し、為替レートが1ドル=150円割れの円高・ドル安へ進む場面で、株主優待制度の新設を発表したからだ。優待制度のなかには抽選でフォームラーカーレースの観戦チケットを進呈する優待策まで含まれる。かつて同社は、全工場の操業を停止し、全従業員が毎日、運動会に明け暮れても屋台骨はビクともしない「トヨタ銀行」といわれたことがあるが、これを彷彿とさせる優待制度で、「果報は寝て待て」ということかもしれない。
■「マッチポンプ相場」を生む株主優待制度、新たな投資機会に
もともと株主優待制度は、株主への利益還元策ではやや日陰の存在であった。王道は、あくまで増配、自己株式取得、株式分割であった。ところが優待制度の新設や拡充などでストップ高と高反応する銘柄が続出するに及んで優待制度への評価が変わりつつある。もちろんトヨタは、ここまで業績の上方修正、増配、自己株式取得、株式分割などを率先して実施してきたが、さらに優待制度を新設したのである。この「マッチ」効果は、あまねく優待制度新設銘柄に及ぶ可能性がある。
優待制度の新設会社は、今年1月の年初来から前週末7日までで57銘柄を数え、ほかに優待制度を変更・拡充した銘柄も40銘柄超に達する。この銘柄のなかには、業績上方修正や増配のフルセット材料の一環として優待制度を新設した銘柄や無配でも優待制度を新設して総合利回りが大きくアップした銘柄も含まれるなどなどバラエティーに富んでいる。優待制度銘柄の内容を精査して「マッチポンプ相場」の嵐が一巡するまで安全第一で選択投資をするのも一考余地がありそうだ。
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)