JPホールディングスは収益拡大基調、25年3月期は上方修正して大幅増益・大幅増配予想

 JPホールディングス<2749>(東証プライム)は子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。25年3月期は新規施設開設・受託、児童数増加、補助金の最大化に向けた対応、4・5歳児の対人数の変更影響などにより大幅増益・大幅増配予想(2月25日付で上方修正)としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

 子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・音楽教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。

 なお23年10月にダスキン<4665>と業務提携契約を締結した。そして学研ホールディングス<9470>が保有していた全株式をダスキンへ譲渡(23年11月)してダスキンが第1位株主となった。学研ホールディングスとの業務提携は継続している。

■保育園は期末に向けて児童数増加・稼働率上昇

 グループは持株会社の同社、全国で保育園・学童クラブ・児童館などの子育て支援施設を運営する日本保育サービス、保育園向け給食請負などを行うジェイキッチン、子育て支援施設向け英語・体操・音楽教室の請負、保育関連用品の企画・販売、保育や発達支援に関する研修・研究、保育所等訪問支援、子育て支援プラットフォーム「コドメル」運営などを行う日本保育総合研研究所、コンサルティングを行う子育てサポートリアルティ、外国人の就労支援を行うワンズウィル(24年1月子会社化)で構成されている。

 24年4月1日時点の運営施設数は首都圏を中心に、保育園が205園、こども園が4園、学童クラブが96施設、児童館が13施設、交流館が2施設、子育て支援施設合計が320施設となっている。なお23年4月に同社グループ初となる英語に特化した新業態としてバイリンガル保育園を首都圏で3施設開設するなど、既存保育園のバイリンガル保育園への業態変更も推進している。

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。

■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」

 子育て支援事業を取り巻く事業環境としては、保育園の待機児童問題が概ね解消した一方で、学童クラブの待機児童数増加対策などが新たな政策テーマに浮上し、新たな少子化対策および幼児教育・保育の質的向上対策として24年度より、親の就労を問わず生後6ヶ月から2歳を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際にこどもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大などが推進されている。

 こうした事業環境を背景として、長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業・M&A500億円)に向けて既存事業改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。

 さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値として27年3月期売上高401億65百万円、営業利益50億73百万円、営業利益率13%、ROE20%超などを掲げている。株主還元方針は配当性向30%を目指すとした。基本方針として引き続き成長・競争優位性の確立、収益構造改革、経営基盤改革を推進する。

 成長・競争優位性の確立では、新規事業として国内外専門人材派遣・紹介事業の規模並びに収益拡大、グローバル対応に向けた東南アジアを中心とする現地企業と連携した早期施設展開、既存事業拡大を見据えた新たな学習プログラムおよび地域連携による「選ばれ続ける園・施設づくり」の推進、ドミナント戦略に基づく学童クラブ・児童館受託運営の現在の2倍への早期拡大、保護者の困りごと並びに社会問題解決に向けた新たな事業展開、積極的なM&A推進を推進する。また収益構造改革では経営の効率化・コスト削減、収益基盤の強化、経営基盤改革では人財育成・風土刷新、経営管理の高度化、SDGsおよび環境改善に向けた取り組み強化を推進する。

 24年7月にはインクルーシブ保育(障害のある子、特別の配慮の必要な子を区別せず、同じ空間で保育を行い、それぞれの子の個性を尊重し認め合う保育)のさらなる機会拡大を図るため、AIAIグループ<6557>の子会社であるAIAI Child Careが提供する保育所等訪問支援サービス「AIAI VISIT」を千葉エリアの保育園3園に導入した。24年9月には茨城県境町と子育て支援に関する協定を締結、25年1月には埼玉県春日部市と子育て支援に関する協定を締結、25年1月には静岡県小山町と子育て支援に関する協定を締結した。

■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス

 子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスを強化している。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。

 第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。24年6月には業務提携先であるダスキン本社、およびダスキン東京オフィスに子育て関連商品の「コドメル寄付受付BOX」を設置した。今後は第2フェーズとして子育て世代に商品や様々なサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズとして東南アジアへのサービス展開を推進する。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。

 さらに新規領域への展開も推進している。保護者の困りごとの解決に向けた事業展開では、自宅で簡単に調理できる「夕食準備」として、東京都・神奈川県・埼玉県で運営する保育園10園において23年8月より食品のテスト販売を開始した。テスト販売の状況を確認し、販売する保育園の拡大や商品ラインナップの拡充を図り、同業他社への外販や子育て支援プラットフォーム「コドメル」を活用したWebでの販売も検討する方針としている。

■25年3月期は上方修正して大幅増益・大幅増配予想

 25年3月期の連結業績予想(2月25日付で上方修正)は、売上高が24年3月期比8.1%増の409億40百万円、営業利益が24.3%増の57億円、経常利益が27.0%増の57億43百万円、親会社株主帰属当期純利益が33.6%増の39億12百万円としている。

 前回予想(24年5月13日付の期初公表値、売上高が385億28百万円、営業利益47億51百万円、経常利益47億78百万円、親会社株主帰属当期純利益31億06百万円)に対して、売上高を24億12百万円、営業利益を9億49百万円、経常利益を9億65百万円、親会社株主帰属当期純利益を8億06百万円それぞれ上方修正した。

 新規施設開設・受託、児童数増加、補助金の最大化に向けた対応、異次元の少子化対策として実施された対人数の変更(4・5歳児の預かり児童数に対応した保育士配置基準見直し)影響などにより増収増益幅が拡大する見込みだ。当期純利益については特別利益(本社所在地域の再開発に伴う本社移転に関連した補償)も寄与する。

 配当予想(2月25日付で期末2円50銭上方修正)は、24年3月期比4円増配の12円(期末一括)としている。大幅増配で予想配当性向は26.2%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比6.5%増の290億48百万円、営業利益が25.5%増の43億55百万円、経常利益が28.1%増の43億79百万円、親会社株主帰属四半期純利益が36.6%増の30億43百万円だった。

 増収・大幅増益だった。物価高騰等による補助金の減収、処遇改善・賞与増額による人件費の増加などがあったものの、新規施設開設や児童数増加などに加え、異次元の少子化対策として実施された対人数の変更(4・5歳児の預かり児童数に対応した保育士配置基準見直し)などが寄与した。純利益については特別利益(本社所在地域の再開発に伴う本社移転補償金2億01百万円)計上も寄与した。

 施設開設は保育所2園(うち1園は東京都認証保育所から認可保育園へ移行)、認可保育園からこども園へ移行4園、学童クラブ・児童館17施設、交流館2施設の合計20施設(認可保育園・こども園への移行施設を除く)で、第3四半期末時点の子育て支援施設数は保育園205園、こども園4園、学童クラブ96施設、児童館13施設、交流館2施設、合計320施設となった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高96億円、営業利益13億98百万円、経常利益14億05百万円、第2四半期は売上高96億51百万円、営業利益13億22百万円、経常利益13億30百万円、第3四半期は売上高97億97百万円、営業利益16億35百万円、経常利益16億44百万円だった。

 25年3月期は大幅増益・大幅増配予想となった。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を導入

 2月25日に株主優待制度(詳細は会社HP参照)導入を発表した。毎年3月末および9月末時点で6ヶ月以上継続して5単元(500株)以上保有株主を対象に、年間合計2万円分のクオカード(年2回、各基準日1万円のクオカード)を進呈する。25年3月末対象より開始する。

■株価は戻り試す

 株価は反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。3月10日の終値は650円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS45円81銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS188円71銭で算出)は約3.4倍、そして時価総額は約571億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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