【株式評論家の視点】三菱重工、社会インフラで成長加速、今期増配、初飛行も材料

株式評論家の視点

三菱重工業<7011>(東1)は、三菱重工グループとしてのより大きなシナジーを発揮するため、700製品にわたる同社の製品をエネルギー・環境、交通・輸送、防衛・宇宙、機械・設備システムの4つのドメイン(事業領域)に再編し、それぞれ最適な事業戦略に基づいて積極的な事業展開を進めるよう、マネジメント体制の再構築を図っている。

エネルギー・環境ドメインは、火力、原子力、再生可能エネルギーなどのエネルギー分野と、水処理、排煙処理といった環境分野での最適なソリューションを提供しているほか、化学プラントといった社会インフラを始めとして三菱重工で持っている各事業・製品群のEPC(Engineering, Procurement and Construction:設計・調達・建設)機能を組み合わせ、EPCソリューションを拡大し、大規模インフラ事業、スマートコミュニティなどの新事業開発を推進している。

交通・輸送ドメインは、民間航空機、商船、交通システムなどの陸・海・空の先進的交通・輸送システムを提供している。三菱重工は、「陸・海・空の交通・輸送事業」を手掛けており、それぞれの分野の技術を共有することにより、高い安全性と厳格な規制への対応や、最新技術、高品質および高信頼性を備えた製品を提供している。陸・海・空の分野において、空港や港湾などの各製品の共通するビジネスモデルを最適化し新しい事業分野の開拓を行っている。

機械・設備システムドメインは、製鉄機械、コンプレッサー、物流機器、空調・冷凍機器、ターボチャージャ、工作機械など、三菱重工グループの総合力を示す多彩な中量産品からプラント設備まで、国内外をリードする多種多様な事業を展開。各製品が持つ強みを最大限に引き出し、世界の国々のインフラ発展に大きな役割を果たしている。

防衛・宇宙ドメインは、艦艇、防衛航空機、ロケット、特殊車両などの陸・海・空・宇宙の統合防衛システムと宇宙関連サービスを提供しています。防衛・宇宙の各事業分野で培ってきた技術やノウハウを融合し、我が国を代表する防衛・宇宙のシステムインテグレータとして高付加価値の製品・サービスを提供している。

10月30日に今2016年3月期・第2四半期決算を発表。第2四半売上高は1兆8820億6700万円(前年同期比7.0%増)、営業利益は1159億7000万円(同1.9%減)、経常利益は1118億8400万円(同12.6%減)、純利益は433億5200万円(同14.0%増)に着地した。

第2四半期の各事業領域の業績は、エネルギー・環境事業では、一部のガスタービンコンバインドサイクル用蒸気タービンの不具合対策費用の計上や、火力事業のPMIを進める上での先行費用を掛けていることなどにより減益。交通・輸送事業では、民間航空機のコスト改善や商船の船種ミックス改善等に加えて、円安効果もあり増益。機械・設備システム事業では、製鉄機械・フォークリフトの事業統合効果や従来事業(ターボチャージャ・冷熱等)の規模拡大により増加。防衛・宇宙事業では防衛等の増収により増益。機械・設備システム事業では、前年同期の在外グループ会社決算期変更影響等により減益だった。

通期業績予想は、売上高が4兆2000億円(前期比5.2%増)、営業利益が3200億円(同8.1%増)、経常利益が3000億円(同9.2%増)、純利益が1300億円(同17.7%増)を見込む。年間配当は12円(同1円増)と増配を予定している。

株価は、6月4日につけた年初来高値805円から9月29日につけた年初来安値514.2円まで調整を挟んで10月26日高値635.5円と上昇。その後、モミ合っている。24か月移動平均線が上値抵抗線となっているが、500円どころが下値として意識されている。三菱航空機(愛知県豊山町)は1日、開発中の国産ジェット旅客機「MRJ」の高速での地上走行試験を県営名古屋空港(同町)で始めた。9~13日に実施する初飛行に向けた試験の一環で、今後、最高速度を離陸時と同じ時速200キロ超まで上げて試験すると伝わっているほか、仏原子力大手アレバの原子炉製造子会社アレバNPへの出資について検討を開始するもようで、今後の事業展開は注目される。中長期的な視点で押し目は買い妙味が膨らみそうだ。(株式評論家&アナリスト・信濃川)

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