ヤマシタヘルスケアホールディングス、医療機器販売が好調、専門分野の売上高が大幅増、上振れ余地も

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。25年5月期は人件費増加などで減益予想としている。ただし上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は急伸して最高値を更新した。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器卸売・メンテナンス、設備設計・施工、消耗品管理・物流などを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の製造・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器卸売・メンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営・事業承継支援などのコンサルティングサービス、イーディライトは病院向け予約ソリューション、エムディーエックスはDX技術関連製品・サービスの提供、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向けネットワーク構築・ソフトウェア受託開発、鹿児島オルソ・メディカル(23年12月子会社化)は鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器・関連消耗品の販売、マイクロソニック(24年6月子会社化)は超音波を用いた医療用機器の開発・販売を展開している。

 24年3月には山下医科器械が26年度中に新たな物流センターとして「新鳥栖TMSセンター」を開設すると発表した。物流機能の品質改善や効率化を推進する。

 24年5月期のセグメント別売上高は、医療機器販売業が615億07百万円(一般機器分野が88億03百万円、一般消耗品分野が249億05百万円、低侵襲治療分野が146億26百万円、専門分野が112億91百万円、情報・サービス分野が18億81百万円)、医療機器製造・販売業が2億67百万円、医療モール事業が68百万円、そして調整額が▲1百万円だった。セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が21億71百万円、医療機器製造・販売業が1百万円の損失、医療モール事業が0百万円、調整額が▲12億02百万円だった。

 なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。

■積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行

 新中期経営計画(25年5月期~27年5月期)では、基本方針に「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を掲げ、目標値は最終年度27年5月期の売上高730億円以上、営業利益9億50百万円、営業利益率1.3%以上、経常利益10億円としている。資本コストや株価を意識した経営としては、PBR(株価純資産倍率)1倍以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指し、株主還元としては配当性向30%以上としている。

 重点施策として人的資本経営、グループ間連携による新たな価値の創出と生産性向上、持続的成長に向けた投資、ESG経営による地域社会への貢献、ガバナンス最優先の風土醸成を推進する。

 サステナビリティ経営への取り組みでは21年8月にESG基本方針を策定、22年7月に長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定し、24年8月に「ESG経営に関わる実績および目標」を公表した。また25年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において、4年連続で健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定された。

■25年5月期減益予想だが上振れ余地

 25年5月期の連結業績予想は売上高が24年5月期比9.4%増の673億19百万円、営業利益が20.2%減の7億71百万円、経常利益が19.5%減の8億21百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が12.2%減の5億09百万円としている。配当予想は24年5月期比9円減配の61円(期末一括)としている。予想配当性向は30.0%となる。

 第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比8.5%増の313億62百万円、営業利益が15.6%減の5億22百万円、経常利益が14.4%減の5億52百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が29.5%減の3億38百万円だった。

 人件費や販管費などの増加で減益だったが、売上面は主力の医療機器販売が好調に推移した。営業利益96百万円減益の要因分析は、売上総利益の増加で2億65百万円増益、人件費・教育等関連費用の増加で1億83百万円減益、販売促進費・研究開発費等の増加で98百万円減益、水道光熱費・保険料・その他設備管理費等の増加で80百万円減益だった。

 医療機器販売業は売上高が8.7%増の313億55百万円、セグメント営業利益(全社費用等調整前)が1.9%増の11億25百万円だった。売上高の内訳は一般機器分野(画像診断機器、放射線診断装置等)が9.5%増の41億63百万円、一般消耗品分野(手術関連消耗品等)が3.5%増の127億88百万円、低侵襲治療分野(内視鏡、サージカル備品等)が4.5%増の72億44百万円、専門分野(整形、理化学、透析等)が24.6%増の63億64百万円、情報・サービス分野(設備保守メンテナンス等)が21.5%増の7億95百万円だった。放射線機器等の設備投資需要増加、検査・手術件数増加に伴う診察材料等の医療機器消耗品の需要増加に加え、23年12月に子会社化した鹿児島オルソ・メディカルの連結も寄与した。

 医療機器製造・販売業は売上高が22.8%減の1億13百万円で営業利益が82百万円の損失(前年同期は6百万円)だった。医療モール事業は売上高が2.5%減の35百万円で営業利益が0百万円の損失(同2百万円)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が151億83百万円で営業利益が1億78百万円、第2四半期は売上高が161億79百万円で営業利益が3億44百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。需要が堅調に推移して増収だが、人的資本経営の強化に伴う人件費増加などで各利益は減益予想としている。ただし第2四半期累計の進捗率は売上高47%、営業利益68%、経常利益67%、親会社株主帰属当期純利益66%だった。利益進捗率が高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は最高値更新

 株価は急伸して最高値を更新した。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。3月17日の終値は2969円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS204円47銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の61円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3429円08銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約76億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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