ベステラ、プラント解体事業好調で大幅増収増益、26年1月期も成長加速、株主還元を強化

 ベステラ<1433>(東証プライム)は、製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとして、脱炭素解体ソリューションを推進している。25年1月期はプラント解体事業の好調が牽引して大幅増収増益だった。26年1月期も大幅増収増益予想で、配当は大幅増配予想としている。老朽化プラント解体工事の増加で中期的に事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどとなっている。

 20年2月にはインターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤を子会社化した。23年8月には、水島コンビナートを抱える岡山県倉敷市を拠点に石油精製装置や化学装置など各種プラントの建設・メンテナンス・躯体工事を行うオダコーポレーション、およびオダコーポレーションの100%子会社でマンションや商業ビルの大規模修繕を行うTOKENを子会社化した。

 なお株式交付により25年4月15日付(予定)で、同社の筆頭株主であるTERRA・ESHINO社(以下、テラエシノ、同社創業家の資産管理会社)を子会社化し、株式交付完了後にテラエシノを吸収合併予定である。

 25年1月期のセグメント別業績(全社費用等調整前)は、プラント解体事業(同社単体)の売上高が90億38百万円で営業利益が5億77百万円、その他事業(グループ会社)の売上高が19億32百万円で営業利益が1億40百万円の損失(24年1月期は53百万円)だった。

 完成工事高の業界別構成比は電力が28%、製鉄が23%、石油・石化が35%、ガスが2%、3Dが1%、環境が4%、その他が7%で、完成工事高に占める元請案件は39億14百万円、元請比率は37%だった。受注高は107億05百万円、期末受注残高は71億97百万円だった。受注残高の業界別構成比は電力が17%、製鉄が51%、石油・石化が26%、ガスが1%、環境が2%、その他が3%である。

■優良な顧客基盤や特許工法・知的財産の保有が強み

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 22年7月には日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において、ベステラが保有する「発電用風車設備解体に関する特許技術(転倒工法)の実施許諾契約を締結した。22年9月には民間住宅解体分野において全国約1600社の専門工事会社と施主をマッチングするサービス「クラッソーネ」を運営するクラッソーネと資本業務提携(12.5%出資)した。22年10月にはクレーン測定ロボットの開発を完了し、当ロボットを用いたシステムによるクレーンレール測定サービスの提供を開始した。

 22年12月には、一般的にガスタンクと呼ばれる球形のガスホルダーおよびこれと用途が類する円筒形タンク等の解体に関して、三谷産業<8285>と業務提携した。24年7月には海外プラントの解体ビジネス展開に向けて、DENZAIと戦略的パートナーシップ提携契約締結について合意した。

 25年3月12日には、J&T環境(株主はJFEエンジニアリング64%、JERA36%)と、廃棄物適正処理および再資源化推進に関する業務提携契約を締結した。

■中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」

 受注環境は良好である。第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、同社試算の市場規模は電力関連が約13兆円、製鉄関連が約2兆円、石油・石油化学関連が約8兆円、その他製造業が約20兆円+αとしている。

 22年12月公表の中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」では、基本方針に「脱炭素経営と企業風土の変革による収益力向上」を掲げ、数値目標としては26年1月期売上高120億円(脱炭素解体ソリューション90億円、DXプラントソリューション30億円)、営業利益12億円、当期純利益8億80百万円、1株当たり純利益(EPS)99円、ROE(自己資本利益率)13%、工事監督員数92人(22年1月期実績44人)としている。従来の「中期経営計画2025」の26年1月期目標値に対して売上高を20億円、営業利益を2億円、当期純利益を1億28百万円、それぞれ上方修正した。

 重点戦略として、工法によるイノベーションとしての脱炭素解体ソリューション、IT活用によるイノベーションとしてのDXプラントソリューション、さらなるイノベーションを産み出す土台としての人事戦略を掲げている。脱炭素経営を通じて企業価値・ブランド向上を実現するため、脱炭素解体に資する工法開発(リンゴ皮むき工法や風車転倒解体に続く脱炭素解体工法の開発)、解体工事のリユース・リサイクル率向上(脱炭素解体の要素技術確立とトレーサビリティ確保による付加価値創出)、脱炭素経営に紐づいた新規ビジネス創出(プラント解体工事から派生する工事以外のビジネス創出)を推進する。

 投資計画としては3年総額35億円の積極投資を実行する。内訳は、脱炭素解体ソリューションで13億円(工法開発、実証実験、M&A)、DXプラントソリューション16億50百万円(AUSE、天井クレーンロボ、遠隔・無人化施工、ロボット・システム開発、M&A)、人事戦略5億50百万円(採用・紹介、教育、M&A)としている。株主還元については配当性向40%を目安として安定的な配当を実施する。

 サステナビリティ経営に関しては21年12月にサステナビリティ基本方針を制定し、サステナビリティ委員会を設置した。23年8月には、探求型学習を通して社会参加の機会を提供しているUnpacked(東京都港区)と、Unpackedの主軸事業である「みらい事業部」(法人×U18で新しい価値を創出することを目的としたU18の企画開発チーム)でパートナーシップ提携した。24年4月には定年後再雇用制度を見直して整備した。定年後の役職・職務・等級が定年前と変わらない場合、定年前の給与を100%維持することとした。

 24年7月にはCO2削減に貢献する取り組み一つとして、東京本社を含む全事業所で使用する電力の全量について、トラッキング付き非化石証書が付帯された実質再生エネルギー由来の電力に順次切り替えを開始した。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、さらなる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 24年4月にはプライム市場上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況を開示した。24年1月31日時点で流通株式時価総額が基準を充たしていないが、引き続き「脱炭素アクションプラン2025」で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組み、企業価値の向上(時価総額の増大)に努め、26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 なお24年4月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」をリリースした。直近4ヶ年については一過性の赤字工事の影響でROEが低下したが、中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」最終年度の26年1月期には一過性要因が消滅し、規模拡大によるスケールメリットにより収益体質の改善が図られる見込みであり、ROE13%以上(エクイティ・スプレッド7%)の目標を達成するとともに、PBRのさらなる向上を目指すとしている。

 また株主還元方針を変更し、累進配当を継続的に実施していくことを基本方針とした。配当性向40%を目安とすることに加え、DOE(株主資本配当率)3.5%以上を目安に累進的に配当する。25年1月期より適用した。

■26年1月期も大幅増収増益で大幅増配予想

 25年1月期の連結業績は、売上高が24年1月期比16.0%増の108億97百万円、営業利益が51.3%増の3億73百万円、経常利益が45.2%増の5億92百万円、親会社株主帰属当期純利益が77.3%増の4億09百万円だった。配当は24年1月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)とした。配当性向は43.2%となる。

 前回予想(24年9月5日付で経常利益と当期純利益を2回目の上方修正、売上高110億円、営業利益5億円、経常利益6億50百万円、親会社株主帰属当期純利益4億80百万円)を下回ったものの、前期比大幅増収増益で着地した。グループ会社の業績は低調だったが、同社本体のプラント解体事業の好調が牽引した。なお特別利益に投資有価証券売却益1億67百万円、事故損害受取保険金1億24百万円、特別損失に減損損失1億03百万円、事故損害補償損失1億15百万円を計上した。

 セグメント別(全社費用等調整前)に見ると、プラント解体事業(同社単体)は売上高が19.6%増の90億38百万円で営業利益が127.1%増の5億77百万円、その他事業(グループ会社)の売上高が2.9%増の19億32百万円で営業利益が1億40百万円の損失(24年1月期は53百万円)だった。

 完成工事高(24年1月期比16.0%増の105億95百万円)の業界別構成比は電力が28%、製鉄が23%、石油・石化が35%、ガスが2%、3Dが1%、環境が4%、その他が7%だった。完成工事高に占める元請案件は39億14百万円で元請比率は37%となった。25年1月期は低利益率の大型元請工事の影響で元請工事利益率が一時的に低下した。同社単体ベースの工事監督者1人当たり完成工事高は16百万円減少して114百万円となった。

 受注高は16.8%減の107億05百万円、期末受注残高は1.6%増の71億97百万円だった。受注残高の業界別構成比は電力が17%、製鉄が51%、石油・石化が26%、ガスが1%、環境が2%、その他が3%である。受注高は前年の長期大型案件受注の反動で減少したが、繰越工事高(受注残高)は高水準である。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が29億58百万円で営業利益が17百万円、第2四半期は売上高が28億09百万円で営業利益が1億94百万円、第3四半期は売上高が22億37百万円で営業利益が79百万円の損失、第4四半期は売上高が28億93百万円で営業利益が2億41百万円だった。

 26年1月期の連結業績予想は、売上高が25年1月期比19.3%増の130億円、営業利益が221.2%増の12億円、経常利益が116.2%増の12億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が119.6%増の9億円としている。配当予想は25年1月期比10円増配の30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。予想配当性向は29.5%となる。

 26年1月期も大幅増収増益予想で、配当は大幅増配予想としている。豊富な受注残を背景として引き続きプラント解体事業が好調に推移する見込みだ。なおグループ会社の不採算事業については、事業の選択と集中により事業の統廃合・売却等を検討する。老朽化プラント解体工事の増加など中期的に事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年1月31日時点で5単元(500株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてベステラ・プレミアム優待倶楽部で商品に交換可能な優待ポイントを贈呈する。

■株価は反発の動き

 株価は反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。3月24日終値は981円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS101円57銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS546円88銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約88億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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