- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄診断】日本エンタープライズは今期減額修正と公募増資による希薄化で調整一巡の水準
【アナリスト水田雅展の銘柄診断】日本エンタープライズは今期減額修正と公募増資による希薄化で調整一巡の水準
- 2014/12/22 09:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
コンテンツ制作・配信の日本エンタープライズ<4829>(東1)の株価は、ゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」の人気化期待で11月28日には戻り高値634円まで上伸したが、今期(15年5月期)業績見通しの減額修正と公募増資による希薄化で急反落し、12月18日の386円まで調整した。ただし目先的な売られ過ぎ感を強めている。調整一巡の水準だろう。
コンテンツ配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。13年3月には音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化した。さらに14年4月には、ネイティブアプリの開発やメッセンジャーアプリとの相互連携によるコンテンツプラットフォームをグローバル展開するため子会社HighLabを設立した。
今後の展開としてはネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成するため、HighLabはネイティブアプリの開発、andOneは企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の技術支援を強化する方針だ。
中国・上海の携帯電話販売については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの施策を推進して早期の黒字化を目指している。
コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信して自社コンテンツ資産の2次利用を推進する方針だ。
法人向けの事業展開では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。
今期(15年5月期)の連結業績見通しは11月28日に減額修正して、売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.3%減の2億20百万円、経常利益が同32.3%減の2億30百万円、そして純利益が同65.7%減の1億50百万円としている。営業増益見通しから一転して営業減益見通しとなった。なお配当予想は前回予想(7月9日公表)を据え置き、前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。
ソリューション事業で広告ビジネス(店頭アフィリエイト広告)が回復基調だが、新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発期間が伸びたことに伴って売上高が想定を下回るようだ。利益面では、子会社HighLabの無料チャットアプリ「Fivetoak」およびゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響するようだ。
ただし12月1日には、子会社HighLabが配信している無料チャットアプリ「Fivetoak」、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」、ゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」の累計ダウンロード数が500万ダウンロードを突破したと発表している。ネイティブアプリの収益寄与本格化が期待される。
なお12月9日に新株式発行および株式売出しを発表した。公募による新株式発行235.7万株、株式売出し46.4万株、オーバーアロットメントによる売出し(第三者割当による新株式発行)42.3万株で、最大278万株(増資前の発行済株式総数3770万株に対する割合7.38%)の新株式発行となる。発行価格および売出し価格は382円(12月16日公表)で、調達資金(手取概算額合計上限12億68百万円)はソフトウェアの開発資金やネットワーク設備のリプレイスに係る投資資金などに充当する。
株価の動きを見ると、ゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」の人気化期待で11月28日には戻り高値634円まで上伸したが、今期業績見通しの減額修正、さらに公募増資による希薄化で急反落し、12月18日の386円まで調整した。
12月19日の終値389円を指標面(増資前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円98銭で算出)は98倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS111円20銭で算出)は3.5倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が19%程度まで拡大し、目先的な売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線に到達した。調整一巡の水準だろう。