インフォマート、25年12月期は大幅増収増益で連続増配予想、地合い悪化も目先的な売りは一巡

 インフォマート<2492>(東証プライム)は、企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注、全業界を対象とする請求書など)を運営している。25年12月期は大幅増収増益で連続増配予想としている。引き続き利用企業数が順調に増加するほか、価格改定効果やサーバーのクラウド移行完了によるデータセンター費の減少なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して急落したが、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお4月30日に25年12月期第1四半期決算発表を予定している。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム

 企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoBプラットフォームを運営している。24年3月には、食品卸と個人飲食店の受発注デジタル化サービスを展開するタノムを子会社化した。

 主なプラットフォームとしては、BtoB-PF FOOD事業では飲食店(主に外食チェーン)と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化する受発注、小・中規模飲食店向けの受発注ライト、食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理する規格書、LINEを使った発注が可能なTANOMU、店舗オペレーション管理ツールのV―Manage、BtoB-PF ES事業では全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化する請求書、安心・安全な契約書管理を実現する契約書、取引先との見積書・発注書・納品書・検収書をデジタル化するTRADE、業務用食品食材の商談をデジタル化する商談などがある。また、多様な価値提供の一環および新たな収益源育成に向けて、100万社の顧客基盤に基づく商流データを活用したBtoB Financeを開発中(一部機能をリリース済み)である。

 23年7月には自治体のLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応したBtoBプラットフォーム on LGWANを本格稼働、23年12月には紙やPDFなど様々な形式で受け取る請求書をAI OCRでデータ化するサービスBP Storage for 請求書の提供を開始した。25年4月にはBtoBプラットフォームTRADEにおいて、建設業の商慣習に対応した新機能「請求書機能」の提供を開始する。

 なお24年12月期の売上高は、BtoB-PF FOOD事業が99億49百万円、BtoB-PF ES事業が56億81百万円だった。主な収益は利用企業から得る使用料収入およびセットアップ費用である。受発注ではフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食等)から得る月額システム使用料、売り手企業(食材メーカー・卸等)から得る定額制または流通金額に係る従量制のシステム使用料、請求書ではシステム使用料(基本料金+従量制)などが柱となっている。

■26年12月期営業利益50億円目標

 中期業績目標値には26年12月期売上高200億円、営業利益50億円、売上高営業利益率25%を掲げ、5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。

 中期経営方針として、BtoBプラットフォームの強化(新サービス・新プロダクツを含む機能強化、販売力強化、認知度向上、CS向上など)、増収増益基調の継続と高収益性への回帰、出資先のシナジー拡大と収益化を掲げている。24年12月にはBtoBプラットフォームが、クラウドセキュリティの国際標準規格ISO/IEC27017認証を取得した。

 なおFood Techに特化したファンドを設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携(22年6月に追加出資)した。23年6月には、国内の旅館・宿泊業の再生支援を行うRQ旅館再生ファンド投資事業有限責任組合に出資した。

■利用企業数は増加基調

 利用企業数の増加に伴って収益が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、24年12月期末の全社ベースの利用企業数は23年12月期末比13万8123社増加の114万9299社となった。主要プラットフォームでは、受発注の買い手企業が189社増加の4104社、売り手企業が2089社増加の4万6133社となった。請求書は利用企業数が13.8万社増加の114.1万社、有料契約企業が1071社増加の1万2879社となった。

 国内最大級のBtoBプラットフォームである。東京商工リサーチの調査(24年6月)においてはBtoBプラットフォーム請求書が、請求書クラウドサービス市場国内シェアNO.1を4年連続で獲得した。24年9月には未来トレンド研究機構調べ(調査期間24年7月~8月)の受発注クラウドサービス市場における受発注流通金額において国内シェアNo.1を獲得した。

 BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024においては、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム受発注が受発注管理システム部門で、それぞれ1位を受賞した。アイティクラウドのITreview Grid Award 2024 Springでは、BtoBプラットフォーム請求書が請求書・見積書作成ソフトおよび請求書受領サービスの2カテゴリで最高位のLeaderを受賞した。24年6月にはアイティクラウドのITreviewにおいて、Customer Voice Leaders 2024をエグゼクティブ活用部門で受賞した。

 なお25年3月には、BtoBプラットフォームを通じて24年の1年間で削減できた紙の枚数が5.8億枚に到達したと発表している。その枚数をCO2排出量に換算すると年間約5046トン、東京ドーム122個分に相当する。

■アライアンスも積極推進

 アライアンス戦略も積極推進している。21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。

 21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携して設立した合弁会社Restartz(リスターツ)は、22年11月に飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。そして23年8月末に利用企業数が100社を突破した。

 24年11月にはJTBのグループ企業であるJTB旅連事業と業務提携した。宿泊施設と生産者・加工食品業者をつなぎ、食材の調達業務効率化する「ホテル・旅館向けマーケットプレイス」を「BtoBプラットフォーム商談」内に開設し、宿泊業界のデジタル化を推進する。24年12月には国立大学法人東京大学大学院工学系研究科早矢仕研究室とAIを用いた共同研究を開始した。

■25年12月期大幅増収増益予想

 25年12月期の連結業績予想については売上高が24年12月期比24.7%増の194億91百万円、営業利益が91.6%増の23億円、経常利益が92.4%増の22億83百万円、親会社株主帰属当期純利益が106.9%増の13億56百万円としている。配当予想については24年12月期比2円72銭増配の4円46銭(第2四半期末2円23銭、期末2円23銭)としている。連続増配で予想配当性向は74.4%となる。

 セグメント別の計画は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が21.2%増の120億54百万円で営業利益が17.9%増の22億92百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が30.9%増の74億37百万円で営業利益が7百万円(24年12月期は7億46百万円の損失)としている。

 25年12月期も大幅増収増益で連続増配予想としている。引き続き利用企業数が順調に増加するほか、価格改定効果(BtoBプラットフォーム受発注は24年8月実施、BtoBプラットフォーム請求書は25年4月実施予定)や、サーバーのクラウド移行完了(24年9月)によるデータセンター費の大幅減少なども寄与する見込みだ。BtoB-PF ES事業は黒字転換の計画である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は目先的な売り一巡

 株価は地合い悪化も影響して急落したが、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。4月8日の終値は323円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS5円99銭で算出)は約54倍、今期予想配当利回り(会社予想の4円46銭で算出)は約1.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS48円23銭で算出)は約6.7倍、そして時価総額は約838億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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