アスカネットは反発の動き、経営体制を刷新して26年4月期以降の収益回復を目指す

 アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力として、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業の拡大にも注力している。25年4月期は4月8日付で下方修正して減益予想としたが、経営体制を刷新して26年4月期以降の収益回復を目指すとしている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新したが、下方修正に対するネガティブ反応は限定的で反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中ディスプレイも推進

 葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力として、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業の拡大にも注力している。

 24年4月期のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)構成比はフューネラル事業47%、フォトブック事業51%、空中ディスプレイ事業2%、営業利益構成比はフューネラル事業168%、フォトブック事業151%、空中ディスプレイ事業▲71%、調整額▲149%だった。フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 23年12月にはBETの全株式を取得して子会社化した。BETはバーチャルライバー(Vライバー)(バーチャルキャラクターにて各種アプリサービスを利用し、ライブを行う配信者)事務所Razzプロダクションの運営を行うスタートアップ企業で、所属Vライバーが550名を超える最大手のVライバー事務所である。バーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。

 また新規事業も視野に入れて、人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Techを推進

 フューネラル事業は、専門オペレーターによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器売上などである。

 92年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、24年4月期末時点のハード設置件数は23年4月期末比166ヶ所増加の2986ヶ所、24年4月期の遺影写真加工枚数(新規加工枚数)は23年4月期比6.1%増の47万246枚となっている。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約3割~4割(1位)となる。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐ訃報配信・香典サービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)の拡大、ASKA3Dプレートを使用した焼香台や動画・サイネージによる新たな演出ツールの提供など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。なお「tsunagoo」は全国3800以上の会館に導入されており、24年には年間11万件を超えるWEB訃報作成数を達成し、過去最高の利用者数を記録した。今後もサービス機能充実に向けて開発やアライアンスの強化を推進する方針だ。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。

 全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け(BtoB)の「アスカブック」と、一般消費者向け(BtoC)の「マイブック」を主力として、NTTドコモのフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を供給するOEMも展開している。24年3月期の分野別売上高構成比はBtoBが64%、BtoCが29%、海外が1%、送料ソフトオプションその他が6%だった。また24年4月期末時点のBtoB契約件数は23年4月期比991件増加の1万6980件、稼働件数は229件増加の5817件、マイブック会員数は8.7%増の36万9397人となった。

 BtoBではスタジオ写真向けや建築写真向け製品などの拡販、BtoCでは子どもの成長記録やカレンダー・卒業アルバムなど季節製品の拡販、等身大アルバム付き出張撮影サービスなどを推進している。24年4月には、赤ちゃんの成長記録をほぼ等身大で残せるフォトボード「Photo Growth」の販売を開始した。

■XR領域へ展開

 22年8月には、仮想空間で活動するメタバースユーザーの「おもい」を表現していくソーシャルVR向けサービスとして「かえでラボ」を設立し、仮想空間上で撮影された写真を現実空間でカタチにするテストマーケティングを開始した。23年11月には、ソーシャルVRやメタバースで撮影した思い出の写真をフォトアイテムにできる新商品「スクボ」「ラミカ」の販売を開始した。

 今後は子会社化したBETと連携し、Vライバーとの商品企画・開発・制作、リアル×バーチャルのコミュニケーション企画、メディミックスなどバーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。

 なお4月7日にはVTuber×地域交流イベント「第2回おりづるVTuberフェス」を25年8月30日~31日に開催すると発表した。ミラクルマイル、中国放送、ペペロンチーノの協力のもと、広島の魅力をVTuberと共に発信する。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレート

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートとして、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中に映像を浮かばせる空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造が特色であり、サイネージ分野の他、車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートについては従来よりも大きいサイズの開発により、操作パネルとしての用途拡大を推進している。

 生産面では、外注によって月産3000枚~1万枚程度の生産能力を有しているほか、20年6月に技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立し、ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を推進している。

 営業面では20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。24年11月にはシンガポールのAcoustics社、韓国のNAG社、タイのROKUGO ELEMEC社と販売代理店契約を締結し、海外販売体制を拡充している。

 なおASKA3D採用事例としては、22年1月に大和ハウス工業およびパナソニックとASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を開始した。22年2月にはセブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。22年6月にはASKA3Dプレートを搭載した非接触ホログラフィックエレベータ操作端末が、米国クリーブランド・ホプキンス国際空港に設置された。

 22年9月には、ASKA3Dプレートの北米地域におけるパートナー企業であるHolo Industriesが、ASKA3Dプレートを使用した「Holographic Touch」と、Mastercard社のタッチレス決済機能を組み合わせた非接触クレジットカード決済システムを共同開発中と発表した。23年5月には広島市並びに広島サミット県民会議の依頼を受け、ASKA3Dを使用した空中ディスプレイインフォーメーションをG7広島サミット国際メディアセンター内の広島情報センターに展示・実演した。

■サステナビリティ経営

 サステナビリティ経営への取り組みとしては、23年7月に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を更新し、目標として女性管理職比率13%以上、正規雇用労働者の男女賃金差異78%以上、有給休暇取得率85%以上維持を掲げている。

 CSR活動としては23年12月に広島県グリーンボンドへの投資を実行した。さらに地元・広島のスポーツチームへの応援として「広島カープ」の広島市民球場、および「サンフレッチェ広島」のエディオンスタジアムとエディオンピースウイング広島に看板を掲げている。

 環境問題への取り組みとしては、スタッフが葬儀社を定期的に訪問し、使用済みインクカートリッジ回収に取り組んでいる。23年の回収個数は4015個、回収率は13%だった。

■25年4月期は下方修正して減益予想、26年4月期収益回復を目指す

 25年4月期の連結業績予想については25年4月8日付で下方修正し、売上高が24年4月期比3.1%増の72億57百万円、営業利益が60.6%減の1億76百万円、経常利益が61.9%減の1億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億66百万円の損失(24年4月期は2億14百万円)としている。配当予想は据え置いて24年4月期と同額の7円(期末一括)としている。

 前回予想(24年6月10日付の期初公表値、売上高77億20百万円、営業利益5億20百万円、経常利益5億35百万円、親会社株主帰属当期純利益3億24百万円)に対して売上高を4億62百万円、営業利益を3億43百万円、経常利益を3億54百万円、親会社株主帰属当期純利益を5億90百万円、それぞれ下方修正した。

 フューネラル事業は堅調に推移しているが、フォトブック事業の需要回復遅れなどにより売上高が全体として計画を下回る見込みだ。営業利益と経常利益についてはフォトブック事業における稼働率低下や材料費増加、空中ディスプレイ事業における棚卸資産評価減計上(売上原価に2億54百万円計上)なども影響する。親会社株主帰属当期純利益については、営業利益と経常利益の下方修正に加え、特別損失に空中ディスプレイ事業の固定資産減損損失1億47百万円、投資有価証券評価損2億30百万円を計上することも影響する。

 なお25年5月1日付(予定)で経営体制を刷新(社長交代を含む代表取締役の異動および役員の異動)する。下方修正の責任を明確化するとともに経営陣の世代交代を図り、26年4月期以降の収益回復を目指す。積極的な事業展開で26年4月期以降の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。

■株価は反発の動き

 24年12月20日付で発表した自己株式取得(上限46万株または2億円、取得期間24年12月23日~25年4月30日)については、25年3月31日時点の累計取得株式数が12万7000株となっている。

 株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新したが、下方修正に対するネガティブ反応は限定的で反発の動きを強めている。出直りを期待したい。4月15日の終値は432円、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS374円12銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約75億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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