日本エム・ディ・エム、26年3月期の収益回復基調を期待、海外展開と新製品で成長加速
- 2025/4/23 10:26
- アナリスト銘柄分析

日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。25年3月期は3月27日付で下方修正して営業・経常減益、特別損失計上で最終赤字予想となったが、積極的な事業展開で26年3月期の収益回復基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して急落する場面があったが、その後は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。なお22年1月に三井化学が筆頭株主となり、新たに三井化学と資本業務提携した。
海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指している。中国では21年5月に、米国ODEV社が中国WASTONと中国現地生産品の製造・販売を目的として合弁会社WOMA社を設立した。米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。
24年3月期のセグメント別業績(調整前)は、日本の売上高が130億04百万円で営業利益が10億93百万円、米国の売上高が143億60百万円で営業利益が6億36百万円だった。また売上高の内訳(日本は収益認識に関する会計基準を適用しているため売上高から販売促進費の一部を控除)を見ると、日本は人工関節が49億32百万円、骨接合材料が45億63百万円、脊椎固定器具が33億22百万円、その他が3億90百万円、売上控除が▲2億04百万円、米国は人工関節が101億41百万円、脊椎固定器具が32百万円だった。自社製品比率は80.2%だった。
収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。
■新製品の開発拡大
新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。
23年9月にはインフィックスおよび細胞応用技術研究所と販売提携契約を締結した。膝関節早期治療製品PRP-FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。
24年3月にはODEV社製造の人工膝関節製品BKS(Balanced Knee SYstem)に関して、中国の合弁会社WOMA社が中国における薬事承認を取得し、中国での製造を本格的に開始すると発表した。また、ODEV社の人工股関節新製品「Trivicta Hip Stem」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得し、米国での販売を開始した。
24年7月には、ODEV社製造の人工股関節大腿骨ステムOvation Tribute NEOシステムの薬事承認取得を発表した。日本人向けの治療材料として開発された製品で、25年3月期第4四半期から日本国内で販売予定としている。24年8月には、人工股関節用フェモラルヘッドの新商品JMDM BIOCERAM AZUL セラミックヘッドを発表した。京セラに開発・製造を委託し、25年3月よりに日本国内で販売開始する。
■長期ビジョンおよび1st Stageとしての3ヶ年計画
長期VISION「RT500」(25年3月期~33年3月期)では、定量目標に最終年度33年3月期の売上高500億円(日本200億円、海外300億円)、営業利益率15%以上、ROE10%以上、ROIC8%以上、配当性向30%以上を掲げた。
また長期VISION「RT500」の実現、およびPBR1倍割れの早期改善に向けた「1st Stage経営計画」(25年3月期~27年3月期)では、最終年度となる27年3月期(為替前提は期中平均1米ドル=150円)の目標値に、売上高300億円(日本150億円、米国150億円)、営業利益32億50百万円、営業利益率10.8%、当期純利益23億円、ROE8.0%、ROIC7.0%、配当性向30.0%を掲げた。なお25年3月期以降は毎年3ヶ年分を開示し、直近1年を予想、その後の2年分を目標として開示するローリング方式とする。
重点施策としては、販売力強化(米国ビジネスの拡大、日本ビジネスの拡大、中国販売基盤の構築)、製品ポートフォリオマネジメント強化、サプライチェーンマネジメント強化を推進する方針とした。
サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。
24年7月にはFTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に2年連続で選出された。25年2月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、気候変動によるリスクや影響を管理している企業として昨年度より1段階上にあたる「B」スコア(マネジメント)に認定、また水セキュリティに関しては「自社の環境リスクや影響について把握し、行動している」と評価されたことを示す「B-」スコア(マネジメント)に認定された。
■25年3月期最終赤字予想、26年3月期収益回復期待
25年3月期の連結業績予想については3月27日付で下方修正し、売上高が24年3月期比7.9%増の250億円、営業利益が14.1%減の15億円、経常利益が20.7%減の14億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億50百万円の損失(24年3月期は12億71百万円)としている。配当予想は据え置いて24年3月期比1円増配の15円(期末一括)としている。連続増配となる。
前回予想(24年4月30日付の期初計画値、売上高252億円、営業利益18億50百万円、経常利益18億50百万円、親会社株主帰属当期純利益13億円)に対して、売上高を2億円、営業利益を3億50百万円、経常利益を3億90百万円、親会社株主帰属当期純利益を15億50百万円、それぞれ下方修正した。売上高については米国において新製品の上市が遅延したことが影響し、営業利益と経常利益については売上高の計画未達に加え、円安影響による調達コスト上昇や自社製造コスト上昇も影響した。
親会社株主帰属当期純利益については、特別損失に米国ODEV社に対する損害賠償請求訴訟に係る和解金(引当金を含む)15億50百万円(10.2百万米ドル)を計上する。また25年4月1日付の事業本部制への移行に伴い在庫評価損2億20百万円を計上する。これらの特別損失に対する税効果会計の適用により、繰延税金資産および法人税等調整額▲3億60百万円(利益)を計上する。なお本件訴訟において和解金を支払うこととなった事態を真摯に受け止め、経営責任を明確にするため取締役3名について報酬の一部を自主返上する。
25年3月期は下方修正して営業・経常減益、特別損失計上で最終赤字予想となったが、足元で円高・ドル安傾向を強めていることもプラス要因であり、積極的な事業展開で26年3月期の収益回復基調を期待したい。
■株価は反発の動き
株価は地合い悪化も影響して急落する場面があったが、その後は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。4月22日の終値は552円、前期推定配当利回り(会社予想の15円で算出)は約2.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS968円74銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約146億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)