【どう見るこの相場】逆業績相場も業績相場?!「第2のフアナック」を先取りして深押し銘柄の業績ガイダンスをマーク
- 2025/4/28 08:13
- どう見るこの相場

■トランプ劇場、急転換の舞台裏!米中摩擦、FRB人事…予測不能な変幻自在
「クルマは急に止まれない、曲がれない、後戻りできない」などといわれる。クルマは、場合によっては「走る凶器」と激変するから慎重な上にも慎重な安全運転が必要なことを促す警句である。このクルマに比べて申訳ないが、米国のトランプ大統領は、「急に止まれて曲がれて後戻り」ができるようである。むしろ伝家の宝刀としている印象さえある。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に辞任を迫った直ぐあとに退任させる積りはないと前言を翻し、中国への145%の追加関税を発動して3週間も経たないうちに50%~60%に引き下げ余地があるとすり寄ってみせたりするからだ。超大国の為政者、リーダーからは想像できない変わり身の早さであり、言葉の軽さである。
■手のひら返しは日常茶飯事?トランプ発言に翻弄される株式市場、勝者は誰だ
おかげで世界のマーケットは、振り回され揺さぶり続けられ急落と急反騰を繰り返し、ほんの1週間前の米国株安、債券安、ドル安のトリプル安が、足元では一転してトリプル高に一変しつつある。もちろんマーケットは、ことこの変わり身の早さではトランプ大統領には負けず劣らずである。「きのうの売りはきょうの買い、きょうの買いはあすの売り」と割り切るのが、兜町の勝ち組投資家の必須条件になるから当然である。日経平均株価は、トランプ大統領が相互関税の詳細を発表する直前の4月2日から4月7日の取引時間中の年初来安値3万792円まで4900円超の棒下げに見舞われたが、前週末25日は3日続伸し取引時間中には4月2日終値を上回る場面もみられ「きのうの売りがきょうの買い」になったことを示した。トランプ関税による景気下押し懸念が和らぎ、円高・ドル安進行にも歯止めが掛かるとの期待がフォローの材料となった。
この「きのうの売りがきょうの買い」への一変は、折からスタートした決算発表シーズンに照らし合わせると、わずか2週間の時間差しかなかったことが明らかになっている。これは、例えば安川電機<6506>(東証プライム)とファナック<6954>(東証プライム)の決算発表に如実に表れている。安川電機は、今年4月4日に2月期決算を発表し、今2026年2月期の業績ガイダンスについては営業利益を前期比19.6%増と増益転換を予想したが、トランプ関税の影響は織り込んでいないとしたことから翌週明け7日の株価はストップ安と急落した。一方、ファナックは、4月23日の3月期決算発表時にトランプ関税の影響、為替動向など不透明な要素が多く業績予想を合理的に算定するのは困難として今2025年3月期の業績ガイダンスを未定とした。ただ株価は、翌24日に45円高と続伸し週末25日は178円高とさらに上値を伸ばした。
■逆風を追い風に!決算プレイで株価爆上げ、市場は「業績相場」へシフトか
この約2週間に「トランプ・ディール(取引)」の風向きが変わり、また業績ガイダンスを未定としたファナックも、業績開示とともに自己株式取得を発表したことも株価のポジティブ反応を促した側面もある。同社株のほか業績ガイダンスを未定とした信越ポリマー<7970>(東証プライム)やトランプ関税を業績ガイダンスに織り込まなかった日本航空電子<6807>(東証プライム)、エクセディ<7278>(東証プライム)も、株価はプラス反応した。またトランプ関税で今12月期業績を下方修正したキヤノン<7751>(東証プライム)や、業績ガイダンスではないが2025年3月期業績を下方修正し、過去最大の赤字を計上し無配転落を発表した日産自動車<7201>(東証プライム)の株価も、3日続伸して週末を終えた。安川電機さえ、4月22日の年初来安値2582円から3日続伸し約500円のリバウンドを演じた。
この一連の個別株動向は、本来は逆業績相場になるはずの相場トレンドさえ業績相場としてポジティブに評価されつつあることを示唆していると受け取ることもできる。マーケットにとっては、大歓迎である。トランプ関税も円高・ドル安も怖いものなしの気分が高揚すること請け合いである。となれば、ここから5月15日にピークを向けて業績発表を先取りする決算プレイに期待が高まることになり、有力な銘柄選択戦術として浮上する。いわば「第2のフアナック・キヤノン探し」である。取り敢えずは大型連休の谷間の4月28日から5月2日までの4日間に決算発表を予定している251銘柄が対象となる。
■大幅調整後の相場持ち直しで反発期待高まる深押し銘柄群
当コラムでは、この251銘柄のうち深押し銘柄の決算発表に注目することにした。日経平均株価は、4月7日に2644円安して年初来安値に突っ込み、このとき東証プライム市場では全体の99%超の銘柄が年初来安値を更新した。さらに日経平均株価は、4月9日も再度、1298円安と揺り戻しを受け、同市場では108銘柄が年初来安値を更新した。フアナックと航空電子、さらに前週末25日大引け後に3月期決算を発表し次期業績ガイダンスを未定としたスタンレー電気<6923>(東証プライム)も、この9日に年初来安値へ売り込まれた深押し銘柄となっている。「下げた株ほどよく戻る」とする「リターン・リバーサル」がより期待できることになる。251銘柄のうち7銘柄とさらに一段安となった2銘柄も含めて決算動向をマークしたい。
これに加えて世界同時株安が吹き荒れた4月7日、9日に年初来高値に買われた逆行高9銘柄は、その後の全般相場持ち直し、ハイテク株高とともに今度は逆行安と売られているが、なお前途多難の万一の場合の「トランプ・ディール」への保険つなぎからも、下値カバーも一法として注目される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)