クリーク・アンド・リバー社、クリエイティブ分野で高成長へ、26年2月期大幅増収増益で増配予想

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。26年2月期は日本クリエイティブ分野を中心に各事業の成長を見込み、M&A効果も寄与して大幅増収増益、増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化の影響で急落する場面があったが、その後は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。

 プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにプロフェッショナル50分野構想を掲げ、グループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。25年2月期末時点でプロフェッショナルクリエイター41万5000人、クライアント5.2万社のネットワークを構築していることが強みだ。

 新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などの分野にも積極展開している。

 23年1月にテレビ番組企画・制作や人材サービスなどを展開するシオン・グループ3社を子会社化、23年5月に施設建築領域全般においてマネジメント・セミナー事業を展開するALFA PMCを子会社化、24年2月にVR・メタバース関連事業を展開するShiftall社を子会社化、24年3月に生成AIを活用してクリエイターの総合支援を行うリヴァイを子会社化し、グループは31社となった。24年3月には北米のゲーム開発ニーズに対応してモントリオール(カナダ)支社を開設した。25年3月にはモバイルゲーム開発のURS Games(バンダイナムコエンターテインメントとの合弁会社)を設立した。また子会社のC&Rインキュベーション・ラボが、T&Wオフィス(手帳・日記および書籍等の企画・編集・出版業を展開する高橋書店グループの持株会社、以下:高橋書店グループ)を子会社化した。

 25年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する顕彰制度において、健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に3年連続で認定された。

■事業シナジー強化

 事業シナジーを見越した資本参加としては、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。22年9月にはWeb3事業・NFT事業パートナーとしての連携強化を図るためシンガポールDEA社に追加出資した。

 22年10月には投資事業を行う子会社としてC&Rインキュベーション・ラボを設立した。既存事業とのシナジーや新規事業立ち上げのシーズ獲得など、グループとしてのM&A・事業承継、事業再生への取り組みを本格化させる方針だ。そして24年2月期末時点で9社(劇団運営および公演のYTJ、クラウドシングルサインオンのインターナショナルシステムリサーチ、デジタル商社のStandage、スポーツコンバインや人材紹介のF&V、食品原料Web売買プラットフォームのICS-net、毛髪再生医療・次世代インプラントのオーガンテクノロジーズ、エンジニア派遣のネクサスホールディングス、IPO・IRテックのUniforce、経営・IRコンサルのストラテジー・アドバイザーズ)に出資している。

■日本クリエイティブ分野が拡大基調

 25年2月期の事業分野別の構成比は売上高がプロデュース51%、エージェンシー派遣34%、エージェンシー紹介11%、ライツマネジメント・他4%、売上総利益がプロデュース44%、エージェンシー派遣20%、エージェンシー紹介30%、ライツマネジメント・他6%だった。

 セグメント別の構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野6%、医療分野11%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)8%、営業利益(調整前)が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野▲0%、医療分野30%、会計・法曹分野3%、その他▲2%、調整額▲1%だった。日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム37%、映像(テレビ・映画)32%、Web26%、電子書籍2%、新規エージェンシー3%、その他▲1%、営業利益がゲーム58%、映像25%、Web28%、電子書籍12%、新規エージェンシー▲7%、その他▲16%だった。

 カテゴリ別(10カテゴリを8カテゴリに再編)の構成比は、売上高がゲーム&ライツマネジメント29%、ブロードキャスティング&動画28%、プロモーション&マーケティング14%、メディカル&ヘルスケア11%、AI/DX・IT6%、プロフェッショナル・エージェンシー5%、Quality of Life5%、インキュベーション&デベロップメント5%、消去▲2%、営業利益がゲーム&ライツマネジメント42%、ブロードキャスティング&動画16%、プロモーション&マーケティング16%、メディカル&ヘルスケア30%、AI/DX・IT2%、プロフェッショナル・エージェンシー2%、Quality of Life2%、インキュベーション&デベロップメント1%、消去▲10%だった。

 収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期(特に第1四半期)に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

■プロフェッショナル50分野構想

 中長期の成長戦略として「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、新中期経営計画では、最終年度26年2月期の目標値(25年4月に下方修正)に売上高600億円、営業利益50億円、営業利益率8.3%を掲げている。株主還元については配当性向目標を30%水準としている。

 基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。

 グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業のプラットフォーム「漫画LABO」、クリニックの経営支援、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AR胸腔ドレナージ(順天堂大学と医療ARを共同研究・開発中)、AI需要予測「Forecasting Experience」、事業承継・M&A事業、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(プラットフォーム開発中)などがある。

 アグリカルチャー分野の子会社コネクトアラウンド(アグリテックを活用した新たな農業ビジネスを展開する目的で22年4月設立)は、23年2月に川崎市中原区で6次化農業・実習施設「FUN EAT MAKERS 武蔵新城」を開設した。さらに25年2月には福島県大熊町で農・食・滞在の複合施設「FUN EAT MAKERS in Okuma」の完成を予定している。

 AI/DX分野の深耕では、24年3月に開始した中堅・中小企業向けAI/DX運用・オペレーション業務導入サポート「DXの森」が順調に拡大している。24年8月には生成AI人材育成研修プログラム「アイシル」の提供を開始、24年9月にはAIチャットボットの提供を開始した。

■25年2月は期減益、26年2月期は大幅増収増益で増配予想

 25年2月期の連結業績は売上高が24年2月期比1.0%増の502億75百万円、営業利益が11.9%減の36億14百万円、経常利益が10.7%減の36億94百万円、親会社株主帰属当期純利益が15.3%減の22億51百万円だった。配当は24年2月期と同額の41円(期末一括)とした。配当性向は38.9%となる。

 売上高は横ばい、各利益は減益だった。日本クリエイティブ分野において第1四半期に発生した大手ゲームパブリッシャーの案件縮小の影響、日本クリエイティブ分野における人材紹介サービスの成約長期化の影響、医療分野において前期後半から実施した営業体制見直し等の構造改革の影響などで売上高が横ばいにとどまり、利益面ではAI/DX領域への先行投資、オリジナルコンテンツ開発投資(IZON、電子書籍等)なども影響した。

 日本クリエイティブ分野(5社)は売上高が0.7%増の352億17百万円、営業利益(全社費用等調整前)が12.0%減の25億32百万円だった。一部の大手ゲームパブリッシャーの案件縮小、人材紹介サービスの成約長期化の影響などで売上高が伸び悩み、オリジナルコンテンツ開発費用の増加なども影響した。韓国クリエイティブ分野(2社)は売上高が13.4%減の30億78百万円、営業利益が10百万円の損失(24年2月期は41百万円の損失)だった。TV局向け派遣が減少したが、Webtoonの伸長などにより営業損失が縮小した。

 医療分野(2社)は売上高が2.0%減の53億07百万円、営業利益が16.2%減の10億83百万円だった。前期後半より実施した営業体制見直し等の構造改革の影響で成約数が減少した。会計・法曹分野(2社)は売上高が1.8%減の24億42百万円、営業利益が32.0%減の1億16百万円だった。派遣事業は順調だったが、人材紹介サービスの成約長期化が影響した。

 その他事業(新規事業18社)は売上高が25.8%増の42億29百万円、営業利益が83百万円の損失(同2億円の損失)だった。投資段階事業が多いため全体として営業損失だが、前期比比では損失縮小した。営業利益増減の内訳は増益の10社合計で2億01百万円増益、投資が増加した6社合計で63百万円減益、新規設立・グループ化2社合計で4百万円減益だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高128億54百万円で営業利益12億61百万円、第2四半期は売上高129億82百万円で営業利益9億34百万円、第3四半期は売上高122億66百万円で営業利益7億91百万円、第4四半期は売上高が121億73百万円で営業利益が6億28百万円だった。

 26年2月期の連結業績予想は、売上高が25年2月期比19.3%増の600億円、営業利益が38.3%増の50億円、経常利益が35.3%増の50億円、親会社株主帰属当期純利益が42.1%増の32億円としている。配当予想は25年2月期比4円増配の45円(期末一括)としている。予想配当性向は30.0%となる。

 日本クリエイティブ分野を中心に各事業の成長を見込み、M&A効果も寄与して大幅増収増益、そして増配予想としている。なお26年2月期第2四半期より、老舗手帳メーカー・出版社の高橋書店グループを新規連結する。高橋書店グループの業績寄与影響は、上期(3ヶ月分)が売上高5億円で営業利益3億円の損失、下期(6ヶ月分)が売上高44億円で営業利益8億円、通期(9ヶ月分)が売上高49億円で営業利益5億円としている。高橋書店グループを除くベースの計画は、売上高が25年2月期比10%増の551億円、営業利益が25%増の45億円である。

 カテゴリ別の計画は、ゲーム&ライツマネジメント(URS Gamesの11ヶ月分を新規連結)の売上高が14%増の169億15百万円で営業利益が16%増の17億50百万円、ブロードキャスティング&動画の売上高が4%増の148億円で営業利益が18%増の6億65百万円、プロモーション&マーケティングの売上高が7%増の75億50百万円で営業利益が13%増の6億70百万円、メディカル&ヘルスケアの売上高が6%増の56億50百万円で営業利益が29%増の14億円、AI/DX・ITの売上高が12%増の33億円で営業利益が83%増の1億10百万円、プロフェッショナル・エージェンシーの売上高が9%増の29億10百万円で営業利益が3.1倍の71百万円、Quality of Lifeの売上高が4%増の26億50百万円で営業利益が51%増の73百万円、インキュベーション&デベロップメントの売上高が4.4倍の71億75百万円で営業利益が11.7倍の36百万円、消去が売上高▲9億50百万円で営業利益▲3億47百万円としている。

 ゲーム&ライツマネジメントは需要が堅調に推移するほか、URS Gamesの新規連結も寄与する。ブロードキャスティング&動画はフジテレビ問題の影響が多少あるものの、全体として堅調な推移を見込んでいる。プロモーション&マーケティングは、官公庁や企業のプロモーション案件が堅調に推移するほか、観光資源を含めて地域の魅力を発信する観光事業も寄与する。メディカル&ヘルスケアは前々期に実施した構造改革の効果に加え、医師紹介事業の回復を見込んでいる。AI/DX・ITは、AI/DX運用・オペレーション業務導入サポートの「DXの森」における提携パートナーが順調に拡大する。またAIエージェントサービス「GenAI Admin Portal」の提供を開始する。プロフェッショナル・エージェンシーは人材紹介サービスの回復を見込んでいる。Quality of Lifeではオリジナルファッションブランド「ECLECT」が始動する。インキュベーション&デベロップメントは高橋書店グループの新規連結(9ヶ月分)が寄与する。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は反発の動き

 1月9日付で発表した自己株式取得(上限40万株または5億円、取得期間25年1月10日~25年5月31日)については、25年3月31日時点での累計取得株式数が0株となっている。

 株価は地合い悪化の影響で急落する場面があったが、その後は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。4月25日の終値は1566円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS149円88銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS750円70銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約360億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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