【アナリスト水田雅展の銘柄分析】山下医科器械はToSTNeT-3による自己株式取得発表、11月末の株主優待も注目点

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社である。11月16日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式取得を発表(11月17日午前8時45分実施)した。株価は直近安値圏1600円近辺から切り返して戻り歩調の展開だ。16年5月期業績予想増額余地、2%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の低PBRなど指標面の割安感、そして自己株式取得の積極還元姿勢や11月末の株主優待制度も注目点となる。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。

 中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。

 15年1月には、西諫早産業団地(長崎県諫早市)への進出に向けて諫早市との協定を締結した。長崎物流センター・SPDセンター(仮称)として物流体制を強化する方針だ。総投資額は約19億円で、16年9月稼働を予定している。

 15年10月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(出資比率パナソニックヘルスケア51%、当社49%)が営業開始した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。

■監査等委員会設置会社に移行

 13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)および一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。

 不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。再発防止と信頼回復に向けて今後も実施状況を随時報告する方針だ。

 なお14年11月27日を以って指名停止期間が満了となり、さらに15年8月27日を以って一般競争参加資格の降格措置期間も満了となった。そして15年8月には第67回定時株主総会の承認に基づいて監査等委員会設置会社に移行した。

■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造

 なお15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)105億82百万円、第2四半期(9月~11月)126億55百万円、第3四半期(12月~2月)118億52百万円、第4四半期(3月~5月)152億21百万円で、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期50百万円、第4四半期3億12百万円だった。

 15年5月期は指名停止が影響したが、医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造だ。また15年5月期の配当性向は30.6%、ROEは14年5月期比3.9ポイント低下して6.3%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して32.0%だった。

■16年5月期業績予想に増額余地

 今期(16年5月期)の連結業績予想(7月8日公表)は、売上高が前期比2.9%増の517億74百万円、営業利益が同2.5%減の5億25百万円、経常利益が同2.5%減の6億円、純利益が同2.1%増の3億66百万円としている。

 利益面では新物流センター設立に伴う先行費用の発生、営業人員増加による人件費の増加などで営業減益・経常減益予想としている。純利益については法人税等の実効税率低下で増益予想としている。

 配当予想(7月8日公表)は同1円増配の年間44円(期末一括)としている。予想配当性向は30.6%となる。安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。

 第1四半期(6月~8月)は売上高が前年同期比8.4%増の114億70百万円、営業利益が4百万円の赤字(前年同期は45百万円の赤字)、経常利益が15百万円の黒字(同20百万円の赤字)、純利益が0百万円(同18百万円の赤字)だった。

 医療機器販売業の売上高が同8.3%増の113億92百万円と好調に推移し、増収効果で営業赤字が縮小した。売上総利益率は11.4%で同0.1ポイント上昇、販管費比率は11.5%で同0.3ポイント低下した。営業損益は改善基調だ。

 なお医療機器販売業の売上高内訳は、一般機器分野が同16.2%増の16億10百万円、一般消耗品分野が同6.4%増の48億56百万円、低侵襲治療分野が同5.9%増の30億71百万円、専門分野が同11.2%増の15億10百万円、情報・サービス分野が同9.7%増の3億44百万円だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は低水準の形だが、第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造のため、特にネガティブ要因とはならないだろう。

 SPD契約施設数増加で一般消耗品分野が堅調に推移し、国立病院機構の一般競争参加資格の降格措置が第1四半期(6月~8月)で終了したことも寄与して、通期ベースで増収増益が予想される。期初時点では保守的な会社予想を公表する傾向が強いため利益増額余地があるだろう。

■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標

 15年7月に新中期経営計画を発表した。基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。

 そして経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は戻り歩調

 株主優待制度については、毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。

 なお11月16日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式取得を発表した。11月17日午前8時45分実施で、取得株式総数の上限4万6500株、取得価額総額の上限8314万2000円(1株につき1788円)としている。

 株価の動きを見ると、直近安値圏1600円近辺から切り返しの動きを強めている。11月12日には1817円まで上伸した。戻り歩調の展開だ。

 11月16日の終値1788円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS143円56銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2302円20銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約44億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなって上伸している。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。強基調への転換を確認した形であり、出直りの動きが本格化しそうだ。16年5月期業績予想増額余地、2%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の低PBRなど指標面の割安感、そして自己株式取得の積極還元姿勢や11月末の株主優待制度も注目点となる。

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