【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事は調整一巡して戻り歩調、指標面に割安感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・非鉄金属関連の専門商社である。M&Aも活用してグローバル展開を加速し、15年12月にはメキシコの線材二次加工拠点が稼働予定である。株価は調整が一巡して戻り歩調だ。16年3月期利益予想に再増額余地があり、5~6倍近辺の予想PER、3%台の予想配当利回り、0.5倍近辺の実績PBRという指標面の割安感を評価する動きを強めそうだ。

■神戸製鋼所グループの中核商社

鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。

■M&Aも積極活用

14年7月には筒中金属産業が新設分割によって設立した国内卸売事業会社(コベルコ筒中トレーディング)の株式70%を取得して子会社化した。

15年5月には子会社のコベルコ筒中トレーディングが筒中金属産業から、韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウムの株式88.89%を取得して子会社化(ケーティーエヌに商号変更)した。

15年8にはミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。同支店を市場調査・情報収集の拠点として、鋼材・非鉄製品・溶接材料など取り扱い製品の拡販や、神戸製鋼グループの進出支援を図るとしている。

15年9月には、非鉄金属材料の素材および加工品を販売する中山金属が新設分割によって設立する国内外卸売事業会社の株式80%を取得し、同社および同社の海外子会社を子会社化すると発表した。株式取得は16年1月の予定で、株式取得対象会社の商号は中山金属とする。海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。

■メキシコ線材二次加工拠点は15年12月稼働予定、グローバル展開加速

14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。

メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。15年9月に建屋完成、10月に設備搬入、12月に稼働を予定している。

■営業利益拡大基調

15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円、そして第4四半期(1月~3月)2298億71百万円だった。経常利益は第1四半期16億38百万円、第2四半期13億59百万円、第3四半期17億44百万円、第4四半期18億34百万円だった。収益拡大基調だ。

また15年3月期の配当性向は17.8%だった。ROEは14年3月期比0.5ポイント上昇して10.2%、自己資本比率は同1.2ポイント上昇して10.2%だった。

■16年3月期第2四半期累計は最終増益、通期利益は再増額余地

10月30日発表の今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績(7月29日に利益を増額修正)は、売上高が前年同期比1.6%減の4194億83百万円、営業利益が同1.1%減の30億13百万円だが、経常利益が同10.0%増の32億95百万円、純利益が同7.3%増の21億30百万円だった。

輸入鉄鋼原料の価格下落や国内の人員増加などで減収、営業減益だったが、受取配当金の増加などが寄与して経常増益、最終増益だった。売上総利益率は3.18%で同0.26ポイント上昇、販管費比率は2.47%で同0.26ポイント上昇した。営業外では為替差損益がマイナスサイドに転じたが、デリバティブ評価損益がプラスサイドに転じ、受取配当金が増加した。特別損益では固定資産売却益が一巡した。

セグメント別(連結調整前、経常利益)に見ると、鉄鋼は同5.9%増収で同21.2%増益、鉄鋼原料は同13.4%減収だが同1.9%増益、非鉄金属は同10.2%増収だが同2.4%減益、機械・情報は同1.7%増収だが同52.4%減益、溶材は同2.3%増収だが同48.7%減益だった。

鉄鋼は鋼板、線材とも円安に伴って輸出数量が増加し、線材の輸出価格上昇が寄与した。鉄鋼原料は神戸製鋼所向け輸入鉄鋼原料の価格が下落して減収だったが、取扱量は増加した。非鉄金属は空調用銅管やアルミ地金の取扱量が増加した。機械・情報はアルミ加工機械が減少したが金属成膜装置が増加した。溶材では国内造船向け溶接材料、鉄骨溶接ロボットシステムなどが増加した。

なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2163億60百万円、第2四半期(7月~9月)2031億23百万円、経常利益は第1四半期20億49百万円、第2四半期12億46百万円だった。

通期の連結業績予想は、前回予想(7月29日に利益を増額修正)を据え置いて、売上高が前期比1.1%増の8800億円、営業利益が同8.7%減の62億円、経常利益が同4.2%減の63億円、純利益が同1.9%減の39億円としている。

国内人員増加やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想だが、円安による収益改善、受取配当金の増加に加えて、海外子会社の初期投資費用の発生時期を見直した結果、第2四半期累計の利益が計画を上回り、通期ベースでも期初計画に比べて減益幅が縮小する見込みだ。

配当予想は前回予想(4月28日公表)を据え置いて前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は18.2%となる。配当については、企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

セグメント別計画(連結調整前)を見ると、鉄鋼は売上高が3090億円、経常利益が28億円、鉄鋼原料は売上高が2530億円、経常利益が8億円、非鉄金属は売上高が2420億円、経常利益が13億50百万円、情報・機械は売上高が760億円、経常利益が10億50百万円、溶材は売上高が430億円、経常利益が4億円としている。

通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.7%、営業利益が48.6%、経常利益が52.3%、純利益が54.6%と概ね順調な水準である。自動車関連やエレクトロニクス関連が好調に推移して再増額の余地があるだろう。

なおメキシコ新工場に関しては、16年3月期には立ち上げ費用負担が先行するが、17年3月期以降の収益寄与が期待される。M&A戦略やグローバル展開の強化で中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して戻り歩調、指標面に割安感

株価の動きを見ると、9月の年初来安値222円から切り返し、250円~260円近辺まで上伸している。調整が一巡して戻り歩調の展開だ。

11月17日の終値257円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円04銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は3.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS479円84銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約228億円である。

日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。16年3月期利益予想に再増額余地があり、5~6倍近辺の予想PER、3%台の予想配当利回り、0.5倍近辺の実績PBRという指標面の割安感を評価する動きを強めそうだ。

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