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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは戻り歩調で年初来高値目指す、16年3月期営業増益・増配予想
- 2015/11/24 08:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
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インフォコム<4348>(JQS)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力としている。株価は9月の直近安値から切り返して戻り歩調だ。16年3月期は特別損失発生で最終減益予想だが一過性要因であり、営業・経常増益予想および増配予想を評価して6月の年初来高値1390円を目指す展開だろう。
■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開
帝人<3401>グループで、企業向けにITソリューションを提供するITサービス事業(医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、一般企業向けSIのエンタープライズ事業、ERPソフト「GRANDIT」や緊急連絡・安全確認サービスなどのサービスビジネス事業)と、一般消費者向けに電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。
サービスビジネス事業では、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」の導入企業数850社超、3800サイト超で、緊急連絡・安全確認サービス「エマージェンシーコール」は導入企業数800社超、登録従業員数200万人超の規模に達している。
15年9月にはサービスビジネス事業分野で、企業・団体向けに特化したMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始すると発表した。格安SIMカードによるデータ通信・SMSサービスで、コストメリットをフルに活用できるサービスラインナップを取り揃えた。そして今後、スマートデバイスのレンタルサービスおよび中古スマートデバイスの買取・販売事業を開始する予定だ。
ネットビジネス事業の電子書籍配信サービスでは、06年11月開始スマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」が、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位を独占し、月間利用者数500万人を記録するなど国内トップクラスの地位を強固にしている。また13年11月開始マルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。
なおソーシャルゲームについては15年4月に「ソーシャルゲームサービスの自社開発・提供を終了」する方針を発表した。12年8月にイストピカを連結子会社化してスマートフォン向けソーシャルアプリゲームの開発・提供に取り組んできたが、市場環境の変化が激しく今後の収益化を見通すことが困難と判断した。自社タイトル開発・配信を終了して国内外の人気ミニゲームの流通に特化し、経営資源を電子書籍サービスに集中する。
■アライアンスも積極活用
中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、グループ会社統合・再編も進めている。
13年9月には医薬品業界CRM事業強化に向けて、ミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。14年3月にはEC事業の運営効率化に向けて、アムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。
14年9月には新規事業の発掘を目的として、米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。また15年2月に米SYSCOMの株式を譲渡した。
■ヘルスケア、GRANDIT、電子書籍配信が重点3事業
中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3分野として、目標数値に17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。
■ヘルスケアは新規分野も積極開拓
ヘルスケア事業の分野では帝人との連携も強化しながら、厚生労働省が進める「地域包括ケア」に対応して、医療ITからヘルスケアサービスへの展開を強化している。そしてインフォコムファンドによる投資も積極化している。IoTクラウド基盤企業やセンサー開発企業への資本投資を促進して、米EverySense(エブリセンス)社に25%出資した。
15年3月にはヘルスケア事業の一環としてアスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」を開始した。トップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能、活動資金援助、就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。15年8月にはトレーナー向けアプリも提供開始した。
15年7月には新規事業創出プログラム「デジタルヘルスコネクト」におけるアクセラレータープログラムの参加者募集を発表した。プログラム参加者に対して医師が抱える現場の課題(ニーズが明確なテーマ)を提供し、この解決策を挑戦者と一緒に考え具体化し、現場での試行を重ねて製品化を目指す。
11月16日には、医療事務受託の国内大手で介護サービス事業も展開しているソラスト社(旧日本医療事務センター)と、ヘルスケア事業分野における事業発展を目的として業務・資本提携すると発表した。ITを活用した医療・介護現場の効率化などを含む新たなソリューションの創出を目指し、ソラスト社の株式3%を取得する。
11月17日にはリゾートソリューション<5261>とのメンタルヘルスケア事業における協業開始を発表した。当社の「メンタルヘルス管理クラウドサービス」を同社が展開する福利厚生サービスにおける重点メニューとして導入し、15年12月実施のストレスチェック義務化に合わせて、グローバル展開企業のメンタルヘルスケアをサポートする。
11月18日には医療機関業務システムの製品ラインナップとして、がん患者指導管理支援システム「OP Meister」を新たに開発して、提供開始したと発表している。がん患者への投薬指導に関する院内・薬局業務をサポートするシステムである。
■GRANDIT事業はクラウド対応強化
完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業では、クラウド対応やマイナンバー制度関連対応を強化している。このため技術者の育成を促進するととともに、提携パッケージソフトウェアと提携開発販売パートナーを拡充する。
なおインフラ関連のゼネラルパートナーは3社で、提携パッケージソフトウェアのアライアンスパートナーは20社、提携開発販売のビジネスパートナーは43社に達している。
■電子書籍配信はコンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進
電子書籍配信サービスの分野では、コンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進している。
14年10月にはシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート社)(東京都)と業務提携した。コヨンプリート社に関しては第三者割当増資も引き受ける。
15年4月には「めちゃコミック」にて「週刊少年ジャンプ」や「マーガレット」など集英社コミックの提供を開始し、15年5月にはグリー<3632>のSNS「GREE」にてスマートフォン向け「めちゃコミック for GREE」を開始した。15年6月には「めちゃコミック」にて秋田書店のコミックの提供を開始し、さらに業務提携先の中国・ユーラボ社が同社の100%子会社を通じて中国全土でスマートフォン向け電子書籍配信アプリ「新漫画」の提供を開始した。
15年9月には、中国およびアジア地域でのアニメ・マンガ版権の保護や産業の良質な発展の促進を目的として、アムタス、少年画報社(東京都)、業務提携先の中国・ユーラボ社、および中国通信事業者のアニメ・マンガ関連部門、中国政府機関などと共同で、アジア版権保護連盟を設立したと発表した。
中国政府機関も参画することで、版権侵害行為の取り締まりから法的手続きまで行うことができ、出版・版権元および運用企業の利益と権利を守ることが可能になる。中国アニメ・マンガ市場における版権保護と市場育成を進め、将来的には加盟企業・団体を増やすとともに、対象地域を拡大する予定としている。
■ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円、第4四半期(1月~3月)122億01百万円で、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円、第3四半期3億99百万円、そして第4四半期26億17百万円だった。
ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造である。また15年3月期の配当性向は23.3%だった。ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して10.9%、自己資本比率は同4.3ポイント上昇して73.0%となった。
■16年3月期は特別損失計上で最終減益だが、営業損益は大幅改善予想
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.2%増の187億35百万円、営業利益が同2.0倍の12億03百万円、経常利益が同2.0倍の12億48百万円、純利益が11億円の赤字(前年同期は2億45百万円の黒字)だった。
中長期視点での事業構造改革の一環として、新横浜データセンター(DC)によるサービス提供を17年6月末までに終了することに伴って、事業構造改革費用27億16百万円を特別損失に計上(9月29日公表)したため、純利益は赤字だった。ただしヘルスケア事業の業績回復や電子書籍サービスの好調で、営業利益と経常利益は期初計画を上回る大幅増益だった。売上総利益率は44.7%で同2.2ポイント上昇、販管費比率は38.3%で同1.1ポイント低下した。
セグメント別に見ると、ITサービス事業は売上高が同6.5%減の104億92百万円、営業利益が同2.1倍の5億62百万円だった。連結子会社譲渡の影響で減収だったが、ヘルスケア事業の業績回復、GRANDIT事業の堅調推移、プロダクトミックス改善などで営業損益が大幅に改善した。
ネットビジネス事業は売上高が同10.3%増の82億42百万円、営業利益が同97.9%増の6億40百万円だった。電子書籍配信サービスが積極的な広告戦略やコンテンツ拡充などの効果で好調に推移し、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了も寄与して大幅増益だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)86億88百万円、第2四半期(7月~9月)100億47百万円、営業利益は第1四半期1億54百万円、第2四半期10億49百万円だった。第2四半期は営業損益が大幅に改善した。
通期の連結業績予想は前回予想(9月29日に営業利益と経常利益を増額、純利益を減額)を据え置いて、売上高が前期比6.7%増の430億円、営業利益が同22.0%増の44億円、経常利益が同19.2%増の44億円、純利益が同60.9%減の8億50百万円としている。配当予想(9月29日に増額修正)は同3円50銭増配の年間22円(期末一括)としている。予想配当性向は70.8%となる。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が43.6%、営業利益が27.3%、経常利益が28.4%である。やや低水準の形だが、ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造であり、ヘルスケア事業の業績回復や電子書籍配信サービスの好調なども考慮すれば、通期ベースでも営業損益の大幅改善が期待される。
なお新横浜DCによるサービス提供終了によって、運用コスト低減や、固定資産である建物・設備劣化に対する改修・新規投資の抑制など、データセンターのコモデティ化による売上減少回避なども含めて、10年間で約40億円の費用削減効果が得られる見込みとしている。
中期的にも、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調が期待される。
■自己株式取得は必要に応じて機動的に実施方針
なお15年5月に厚生労働省東京労働局から、子育てサポートに積極的に取り組む企業として認定マーク「くるみん」を取得した。出産・育児の他にも、配偶者の看護や両親の介護などによって、一時的に就業が困難になるような事態を想定し、社員の活躍機会をできるだけ損なわず、より柔軟な働き方ができるように制度の導入・改善に取り組んでいる。
株主優待制度については毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。
自己株式取得については、必要に応じて機動的に実施予定としている。
■株価は調整一巡して戻り歩調
株価の動きを見ると、9月の直近安値962円から切り返した。第2四半期累計の大幅営業増益も好感して11月9日には1235円まで上伸した。調整が一巡して戻り歩調の展開だ。
11月20日の終値1163円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS31円09銭で算出)は37~38倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間22円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS762円15銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約335億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。強基調へ転換したようだ。16年3月期は特別損失発生で最終減益予想だが一過性要因であり、営業・経常増益予想および増配予想を評価して6月の年初来高値1390円を目指す展開だろう。