【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キムラユニティーは16年3月期業績は過去最高更新予想、指標面の割安感も見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キムラユニティー<9368>(東1)はトヨタ向け部品包装が主力の総合物流サービス企業である。ネット通販市場の拡大も背景として物流請負のNLS事業が拡大基調だ。株価は調整一巡感を強めている。16年3月期業績は過去最高更新予想で増額含みである。そして低PER、低PBRと指標面の割安感も台頭している。収益拡大基調や割安感を見直して反発展開だろう。

■トヨタ向けが主力の総合物流サービス企業

 トヨタ自動車<7203>の補修部品・KD部品の包装・物流、および一般物流請負を主力とする総合物流サービス企業である。自動車販売・リース・整備などの自動車サービス事業、物流分野における情報サービス事業、派遣・アウトソーシングなどの人材サービス事業、太陽光発電による売電事業なども展開し、13年12月に日本最大級の軽自動車販売専門店を運営するスーパージャンボを子会社化した。

■物流請負のNLS事業が拡大基調

 物流サービス事業ではネット通販市場の拡大も追い風として、物流請負のNLS(ニューロジスティクスサービス)事業が拡大基調である。そして新規顧客開拓や生産性改善を推進している。

 14年4月にスズケン<9987>の庫内物流業務を請け負う千葉・印西事業所、14年5月に東芝ロジスティクスの物流業務を請け負う神奈川・川崎事業所を開設した。そしてNLS事業の売上高は15年3月期に83億98百万円まで拡大している。

 なお15年9月には、10年10月開設した市川事業所(千葉県市川市)の閉鎖(9月30日付)を発表している。顧客との取引契約期間終了によるもので、16年3月期業績への影響は軽微としている。

■海外事業も収益改善基調

 海外はトヨタ自動車の海外生産拡大に合わせて米国、メキシコ、ブラジル、中国、タイに拠点展開している。海外事業も物流量増加に伴って収益改善基調である。

 米国子会社は13年7月にカナダの大手自動車部品メーカーMAGNAグループのDRIVE社から倉庫内物流請負を新規受注し、14年7月には一段の受注拡大に向けて新倉庫が竣工・稼働した。

 中国では新車販売台数が減速しても、自動車保有台数は増加基調である。そして中期的に、自動車アフターマーケットにおける補修部品需要の拡大基調が予想される。

■15年3月期第1四半期をボトムとして営業損益改善基調

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)107億47百万円、第2四半期(7月~9月)110億47百万円、第3四半期(10月~12月)115億81百万円、第4四半期(1月~3月)123億93百万円、営業利益は第1四半期1億88百万円、第2四半期3億81百万円、第3四半期4億43百万円、第4四半期5億08百万円だった。

 人手不足に伴う人件費上昇や新規事業所の生産準備費用などの影響があったが営業損益改善基調だ。15年3月期のROEは14年3月期比1.3ポイント低下して4.2%、自己資本利益率は同2.3ポイント上昇して50.5%、配当性向は31.6%だった。

■16年3月期第2四半期累計は増収増益、通期は過去最高更新予想

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.9%増の233億06百万円で、営業利益が同41.1%増の8億02百万円、経常利益が同13.9%増の8億56百万円、純利益が同12.1%増の3億94百万円だった。経常利益と純利益は期初計画をやや下回ったが、主力の物流サービス事業が好調に推移して増収増益だった。

 売上面では格納器具製品の受注拡大、北米子会社での物流業務拡大など物流サービス事業を中心に好調に推移した。利益面では、自動車サービス事業のメンテナンス契約における車検費用について発生時に費用処理したことが売上原価増加要因となったが、物流サービス事業において前期発生した新規事業所生産準備費用一巡なども寄与して大幅営業増益だった。

 売上総利益率は15.8%で同0.6ポイント上昇、販管費比率は12.4%で同0.2ポイント低下した。営業外では持分法投資利益(90百万円)が同44百万円減少し、為替差損益が悪化(前期は47百万円の差益、今期は12百万円の差損)した。特別利益では前期計上の投資有価証券売却益57百万円が一巡したが、固定資産除売却損(8百万円)が同1億08百万円減少した。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、物流サービス事業は売上高が同9.6%増の155億90百万円、営業利益が同71.1%増の10億60百万円、自動車サービス事業は売上高が同1.4%増の71億01百万円、営業利益が同46.4%減の1億95百万円だった。

 また情報サービス事業は売上高が同7.3%増の5億32百万円、営業利益が同63.5%増の49百万円、人材サービス事業は売上高が同3.0%減の2億50百万円、営業利益が同33.8%減の10百万円、その他サービス事業は売上高が同6.2%減の27百万円、営業利益が同11.8%減の11百万円だった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)114億77百万円、第2四半期(7月~9月)118億29百万円、営業利益は第1四半期2億86百万円、第2四半期5億16百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月28日公表)を据え置いて、売上高が前期比3.3%増の473億円、営業利益が同31.5%増の20億円、経常利益が同8.8%増の22億円、純利益が同26.2%増の13億円としている。

 売上高、利益とも過去最高更新の見込みだ。配当予想は前期と同額だが記念配当2円を普通配当に変えて年間27円(第2四半期末13円、期末14円)としている。予想配当性向は25.1%となる。

 売上面では、単価改定やスーパージャンボの決算期変更による減収要因があるが、物流サービス事業でトヨタ自動車関連が順調に推移し、物流請負のNLS事業も拡大基調である。北米子会社および中国子会社の業容拡大と収益改善も寄与して、為替の円安も追い風となる。さらに自動車サービス事業におけるCMS(カーマネジメントサービス)のBtoBリース契約台数、スーパージャンボを核としたBtoC自動車販売台数の増加も寄与する。

 利益面では、単価改定や人件費増加が減益要因となるが、物流量の増加、国内外の新規事業所の本格稼働と収益化、生産準備など先行費用の一巡、生産性向上効果などが寄与して大幅増益予想だ。

 セグメント別(連結調整前)の計画を見ると、物流サービス事業は売上高が同2.1%増の308億10百万円、営業利益が同24.6%増の21億50百万円としている。北米子会社におけるNLS事業分野の受注拡大および収益改善が寄与する。自動車サービス事業は売上高が同5.5%増の151億40百万円、営業利益が同16.6%増の7億70百万円としている。リースおよびメンテナンス契約台数の増加が牽引する。

 情報サービス事業は売上高が同11.6%増の12億30百万円、営業利益が同0.1%増の95百万円、人材サービス事業は売上高が同2.3%減の5億40百万円、営業利益が同37.5%増の45百万円、その他サービス事業は売上高が同6.3%増の50百万円、営業利益が同37.1%増の20百万円としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.3%、営業利益が40.1%、経常利益が38.9%、純利益が30.3%である。利益進捗率がやや低水準の形だが期初時点で下期偏重の計画であり、期後半に向けて新規事業所の稼働率上昇効果や生産性向上効果が加速する。また営業外収益での為替差益を見込んでいないため利益は増額含みだろう。

■中期的に収益拡大基調

 15年5月に「中期経営計画2017」を発表した。経営目標値として18年3月期の売上高520億円、営業利益25億円、経常利益27億円、純利益16億円、EPS132円56銭、ROE6.0%を掲げた。利益還元は業績や設備投資計画を踏まえつつ連結配当性向30%以上を目標とした。

 セグメント別(連結調整前)の目標は、物流サービス事業の売上高が337億円、営業利益が25億50百万円、自動車サービス事業の売上高が168億15百万円、営業利益が9億円、情報サービス事業の売上高が14億円、営業利益が1億20百万円、人材サービス事業の売上高が7億円、営業利益が50百万円、その他の売上高が45百万円、営業利益が15百万円としている。

 そして中期重点強化事業の目標値としては、深トヨタグループ事業の売上高を15年3月期比9.2%増の194億30百万円、NLS(ニューロジスティクスサービス)事業の売上高を同29.2%増の108億50百万円、海外事業の売上高を同29.8%増の80億円、BtoB(CMS=カーマネジメントサービス)事業の管理台数を同90.7%増の4万台、BtoC(車両販売)事業の車両販売台数を同70.5%増の4500台としている。

 中期的にはROEの一段の向上が課題となるが、トヨタ自動車関連やNLS事業の拡大が牽引し、生産性改善効果も寄与して収益拡大基調だろう。

■積極還元姿勢

 株主優待は毎年3月31日現在および9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株数に応じて「お米券」を贈呈している。さらに500株以上を継続2年以上保有している株主に対しては、保有株数に応じて長期優待が上乗せされる。たとえば1000株以上を2年以上保有している場合は「基本優待お米券5kg+長期優待お米券2kg=合計お米券7kg」を贈呈する。

 なお10月29日に「コーポレートガバナンス・コードに関する当社の取り組み開示のお知らせ」として、コーポレートガバナンス・コードに対する要旨をリリースしている。その中で、今後もコーポレートガバナンスについて真剣に取り組み、ディスクローズの充実を含めたステークホルダーに対するアカウンタビリティの充実など、企業経営の透明性の確保と経営監督機能の強化を推進し、健全な成長・発展を通じてステークホルダーと満足の共創・共有を推進していくとしている。

■株価は調整一巡感、指標面の割安感も見直し

 株価の動きを見ると、8月の上場来高値1678円から反落して調整局面となり、10月以降は概ね直近安値圏1200円台で推移している。通期会社予想に対する第2四半期累計の低進捗率が嫌気されている可能性もあるが、その後も大きく下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。

 11月20日の終値1250円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS107円72銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2136円52銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約151億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、1200円台で下げ渋り、52週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。16年3月期連結業績は過去最高更新予想で増額含みである。そして低PER、低PBRと指標面の割安感も台頭している。収益拡大基調や割安感を見直して反発展開だろう。

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