【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは16年3月期大幅減益予想の織り込み完了、0.6倍近辺の低PBRを見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームなども展開している。株価は16年3月期業績予想の減額修正を嫌気して下押す場面があったが素早く切り返している。16年3月期大幅減益予想の織り込みが完了し、0.6倍近辺の低PBRや17年3月期の収益改善基調を見直す動きが強まりそうだ。

■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開

 厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開し、中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。

 重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、ブランド力の強化、中高級システムキッチンの市場シェア上昇および普及クラスの強化、全国のショールームへの集客強化と総合競争力の強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、トータルコストの低減、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、そして海外事業の強化などを推進している。

 リフォーム戦略では会員登録制組織「水まわり工房」加盟店が、15年3月期に前期比514社増加して5346社となった。海外展開では中国で瀋陽や蘇州など4地区にキッチン等の提供を開始した。台湾やベトナムでの販売も拡大しているようだ。

■ショールームのリニューアルを推進

 全国101ヶ所のショールームへの集客を強化するため、リニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。15年3月期は帯広、藤沢、鹿児島、和歌山、新潟の5ヶ所の移転リニューアル、大宮、大阪、岡山、大分の4ヶ所のリニューアルを実施した。

 さらに15年4月は石巻(移転リニューアル)、仙台(リニューアル)、15年10月には岡崎(移転リニューアル)、15年11月には福知山(移転リニューアル)、福山(リニューアル)を実施した。

 また12年7月オープンした西日本の旗艦ショールーム「キッチンタウン・大阪」に続いて、15年10月に首都圏エリア旗艦ショールーム「キッチンタウン・東京」が増床・全面改装してオープンした。16年3月期は15年10月時点で合計7店舗のリニューアルを実施した。

■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。

 新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造で、15年3月期は消費増税の影響長期化や原材料費の上昇などで営業損益が悪化した。また15年3月期のROEは14年3月期比7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%、配当性向は96.0%だった。

■消費増税の影響長期化で16年3月期業績予想を減額修正

 11月2日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)および通期の連結業績予想について減額修正した。新設住宅着工件数は回復傾向だが、消費増税の影響長期化などで持家やリフォームに大きな伸びが見られず、第2四半期累計の売上高が計画を下回った。また需要期に向けたショールームのリニューアルやCM等の実施、原材料価格の上昇などで利益も計画を大幅に下回った。第2四半期累計の業績を踏まえて通期予想も減額修正した。

 そして11月6日に発表した第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比6.6%減の563億93百万円、営業利益が同84.2%減の3億98百万円、経常利益が同88.1%減の2億76百万円、純利益が同88.5%減の83百万円だった。

 部門別の売上高は厨房部門が同7.4%減の436億77百万円、浴槽・洗面部門が同4.7%減の97億45百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」および浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」「ユアシス」など主力商品が、いずれも数量・金額とも減少した。売上総利益率は32.7%で同1.7ポイント低下、販管費比率は31.9%で同1.7ポイント低下した。

 なお四半期の別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)271億23百万円、第2四半期(7月~9月)292億70百万円、営業利益は第1四半期32百万円の赤字、第2四半期4億30百万円だった。

 通期連結業績予想は前回予想(5月11日公表)に対して、売上高が40億円減額して前期比1.9%減の1140億円、営業利益が13億円減額して同50.5%減の15億円、経常利益が11億90百万円減額して同53.4%減の12億60百万円、純利益が7億50百万円減額して同32.1%減の6億円とした。配当予想は前回予想(5月11日公表)を据え置いて前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。予想配当性向は138.6%となる。

 通期ベースでも消費増税後の厳しい事業環境が継続する見込みとしている。ただし15年5月に「流レールシンク」を標準装備して新発売したシステムキッチン「クリンレディ」や「美コートワークトップ」を標準装備したシステムキッチン「S.S.」などの拡販を強化する方針だ。

 さらに会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携によるリフォーム需要の喚起、生産設備の増強、ショールームの改装、生産面での原価低減などを推進する。16年3月期は大幅減益予想だが、17年3月期は収益改善基調が期待される。

■株価は16年3月期大幅減益予想の織り込み完了

 株価の動きを見ると、16年3月期業績予想減額修正を嫌気して11月4日に年初来安値となる680円まで下押す場面があったが、素早く700円台後半の水準まで切り返している。

 11月20日の終値749円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円43銭で算出)は52倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1358円69銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約314億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んで調整局面だが、11月の年初来安値で長い下ヒゲをつけて切り返している。16年3月期大幅減益予想の織り込みが完了し、0.6倍近辺の低PBRや17年3月期の収益改善基調を見直す動きが強まりそうだ。

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