【編集長の視点】師走相場のサブ・シナリオ浮上を想定し業績上方修正済みの「冬仕度銘柄」のマークも一法=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

二十四節気ではきのうの勤労感謝の日が「小雪」で、来月早々の7日が「大雪」に当たり、いよいよ冬将軍がお出ましの冬本番目前となる。株式市場の方も、11月26日の月替わりから実質的に師走相場がスタートと押し詰まってくる。振り返ればアッという間の年末、師走相場で、いろいろと紆余曲折、有為転変のあったなかそれぞれの投資家が、それぞれの年間のパフォーマンスの総決算を迎える。負け組投資家は、競馬・競輪の最終レースよろしくオッズを頼りに大穴株に賭けて失地回復の期待を高め、勝ち組投資家は、大納会ギリギリまで深追いして足をすくわれることなどないようにと早期の市場撤退を図りたくなるような心境になる頃合だろう。 これこそ、米国市場でいえば「クリスマス・ラリー」、東京市場では「餅つき相場」が展開されるエルギーの源となる。そのエネルギーの大小を占う最大のポイントは、もちろん12月15日、16日に開催されるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)の動向である。すでに前週18日に公表された10月のFOMCの議事要旨により、大半の委員が12月利上げを支持したことが明らかになり、利上げ時期の不透明感が一巡し、その後の利上げペースも緩やかになる相場シナリオが台頭して日米の株価が急騰し高値を窺った。 だから、東京市場の師走相場のメーン・シナリオは、FOMCによる利上げ決定により一段の円安・ドル高が進み、輸出採算が向上することを手掛かりに輸出主力株を中心にして高値を追う株価想定である。しかし、この高値追いで、日経平均株価が、今年6月24日の取引時間中につけた今年の高値2万952円の上抜くようだと、いかにもピッチが速すぎるとして警戒感が兆すことも考えられる。日経平均株価は、1月16日ザラ場の年初来安値1万6592円から6月の同高値まで26%上昇するのに5カ月を要したのが、その後の9月29日につけた調整安値1万6901円から仮に師走相場で高値を奪回して24%高するとして、所要期間はわずか3カ月弱にしか過ぎないからだ。それこそが、「餅つき相場」、「掉尾の一振」のいわれであると反論されそうだが、パリの同時テロ事件など不測の地政学リスクなどで為替相場が、円高・ドル安などにまき直されることだって想定範囲外とはいえないのである。 このことは、師走相場では、メーン・シナリオ以外にいろいろなサブ・シナリオが浮上する余地を残していることを示唆するはずだ。そのなかで注目したいのが、「冬仕度銘柄」シナリオである。「冬仕度銘柄」とは、いわゆるシーズン・ストック群の一角の銘柄を指す。すでに今期業績を上方修正済みだったり、買い材料が表面化したりした銘柄で師走相場に備えた「冬仕度」の整った銘柄である。米国では、11月27日の「ブラックフライデー」でクリスマス商戦がスタートし、東京市場でも、12月10日に霞ヶ関の官庁街や大手企業で冬のボーナスが支給されてお歳暮商戦が本格化することになり、この商戦でより業績の上ぶれや好材料の評価が高まることが期待できるからだ。かつてはこのシーズン・ストックの定番銘柄は、お歳暮商戦の最先陣に立つ百貨店株や、正月興行期待の映画株、コート、スーツなどを扱う重衣料株であり、一時は「フリース」人気でファートリテイリング<9983>(東1)に集約した感があったが、ここにきて多様化する様相を濃くするようなのである。 シーズン・ストックのなかから絞り込んだ「冬仕度銘柄」は、11月25日には気象庁が、3カ月予想の発表を予定しており、万が一、厳冬観測などが出ようものなら、スタートダッシュに弾みをつけ、あるいはロケットダッシュの思惑も高まるかもしれない。

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