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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは15年12月期業績減額修正だが中期成長に向けた施策を推進
- 2015/11/26 08:02
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
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ワイヤレスゲート<9419>(東マ)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを基盤として事業展開し、中期成長に向けた施策も着実に推進している。株価は15年12月期業績予想減額修正に対する失望売りが一巡したようだ。15年12月期業績予想を減額修正したが増収増益基調に変化はなく、インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連のテーマ性も注目される。中期成長力を評価して出直り展開だろう。
■ワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供するMVNO
通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。
販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。
中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。
■法人向けインフラ構築・運用支援事業を拡大
新規事業として14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築・運用支援)事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体(災害時通信インフラ)、観光地(外国人旅行客誘致)、商店街(集客力向上)などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。
14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、訪問看護サービスのNフィールド<6077>と業務提携し、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」を開始した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブ<3681>と業務提携した。
15年3月には移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社と資本業務提携、およびWi-Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。観光地や商業施設などに構築するWi-Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility-Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi-Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。
■市場拡大のSIMカード分野に積極展開
SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月に音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。
15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコ<2311>と共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールータを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。
15年5月にはベネフィット・ワン<2412>と共同で、訪日旅行者向けに「飲食店割引サービス」と「Wi-Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始した。訪日旅行客の日本での利便性を高めるサービスで、今後ベネフィット・ワンが展開するアジア各国でも同サービスを展開する方針だ。15年10月にはチャイナエアラインを利用する台湾からの訪日旅行者に対して同サービスの提供を開始した。
15年7月には、安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向けに「Wi-Fiインフラ」の提供を開始した。両校の自動車教習生の利便性を高めるサービスを提供する。
■中期成長に向けてフォン・ジャパンなどへ出資
14年11月に、世界200カ国以上・1700万ヶ所以上のWi-Fiスポットを保有する世界最大のグローバルWi-FiコミュニテォーであるスペインFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年3月には日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルータを活用したWi-Fiエリアを構築する。
そして15年11月には、スペインFon社が保有するフォン・ジャパンの株式の一部を取得(出資比率30%、取得金額1200万ユーロ)した。フォン・ジャパンを当社の持分法適用会社とする。
この資本・業務提携によって、Fon社の持つグローバルWi-Fiプラットフォームを当社のインフラに加え、総合モバイルネットワーク事業者として新サービの開発・提供を推進する。SIMカードサービス自体での差別化は難しい状況だったが、グローバルWi-Fiネットワークを軸にして、LTE帯域を必要に応じて効率的に使うサービスを提供することで、安価でかつ通信速度もアンリミデッドな、他社にはないグローバルなサービスを提供することが可能になる。
そして11月19日には、一般社団法人ニセコプロモーションボードおよびフォン・ジャパンと共同で、北海道「ニセコ」観光エリア一帯をWi-Fi化するプロジェクトを発表した。訪日外国人旅行客を中心とした来訪者向けに無料Wi-Fiサービスを提供する。
また15年10月には、米nCore社の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額30万ドルのマイノリティ出資としている。米nCore社が保有する「LTE over WiFi」技術を活用したサービス展開を企図し、将来的に日本を含めた全世界で展開することを目指す。
15年11月には、落し物追跡タグ「MAMORIO」を提供する落し物ドットコム(東京都)の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額2990万円のマイノリティ出資としている。落し物ドットコムへ資本面でのサポートを行うことで新サービスの共同展開を加速させる。
■月額有料会員の積み上げによるストック型収益構造
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)20億45百万円、第2四半期(4月~6月)21億59百万円、第3四半期(7月~9月)23億69百万円、第4四半期(10月~12月)25億32百万円、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円である。
第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収増益基調である。また14年12月期の配当性向は50.7%、ROEは13年12月期比3.9ポイント低下して23.0%、自己資本比率は同1.2ポイント低下して58.1%だった。
■15年12月期業績予想を減額修正だが増収増益基調に変化なし
10月15日に今期(15年12月期)業績予想の減額修正を発表した。ワイヤレス・ブロードバンド事業において、個人向けSIMサービスが苦戦して計画未達となる見込みだ。音声通話プランの提供開始時期が遅れたことに加えて、他業種からの新規参入も含めて競争が激化し、会員数獲得や利益率が想定を下回っている。その他事業では機器(Fon社ルータ)販売が、Fon社との資本提携発表遅れが影響して計画未達となる見込みだ。
ただしワイヤレス・ブロードバンド事業において、収益基盤であるWiMAXサービスおよびWi-Fiサービスは想定どおり順調に推移している。またワイヤレス・プラットフォーム事業も順調に推移し、その他事業では期初計画に織り込んでいなかった訪日旅行者向けSIMサービスや、法人向けM2M/IoTサービスが売上高の増加に貢献した。
そして11月6日発表の第3四半期累計(1月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比27.1%増の83億53百万円で、営業利益が同33.4%増の7億77百万円、経常利益が同33.9%増の7億77百万円、純利益が同34.9%増の4億95百万円だった。
大幅増収増益となり、売上高、各利益とも第3四半期累計として過去最高だった。
事業別売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業のモバイルインターネットサービスが同29.9%増の75億47百万円、公衆無線LANサービスが同11.0%減の5億90百万円だった。モバイルインターネットサービスでは、個人向け「Wi-Fi+LTE SIMカード」が競争激化で計画未達だったが、主力の「Wi-Fi+WiMAX」が好調に推移した。また公衆無線LANサービスは店頭での主な獲得活動を「Wi-Fi+LTE SIMカード」にシフトしたため減収だった。
ワイヤレス・プラットフォーム事業は月額課金「電話リモートサービス」が堅調に推移して同1.1%増の86百万円だった。その他は同9.0倍の1億29百万円だった。法人向けM2M/IoTサービスでシステム受託開発案件を計上した。またベネフィット・ワンと共同の訪日外国人向けプリペイドSIMサービスの販路拡大に取り組み、Wi-Fiインフラ事業ではFon社ルータを活用したエリア拡大を推進した。
なお売上総利益率は同1.2ポイント低下して26.6%、販管費比率は同1.7ポイント低下して17.3%となった。SIMサービスは約1億64百万円の利益押し下げ要因となったようだ。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)26億18百万円、第2四半期(4月~6月)28億59百万円、第3四半期(7月~9月)28億76百万円で、営業利益は第1四半期2億08百万円、第2四半期2億98百万円、第3四半期2億71百万円だった。
通期の連結業績予想(10月15日減額修正)は売上高が前期比23.7%増の112億59百万円、営業利益が同21.0%増の9億61百万円、経常利益が同21.1%増の9億56百万円、純利益が同21.8%増の6億07百万円とした。
期初計画(2月12日公表)との比較で、売上高を12億12百万円、営業利益を3億88百万円、経常利益を3億92百万円、純利益を2億48百万円減額したが、増収増益基調に変化はない。
なお配当予想については前回予想(2月12日公表)を据え置いて、同1円増配の年間26円(期末一括)としている。予想配当性向は43.6%となる。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.2%、営業利益が80.9%、経常利益が81.3%、純利益が81.6%である。主力の個人向けモバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」が順調であり、通期計画未達の主因となった個人向けSIMサービスやFon社のルータ販売についても第4四半期(10月~12月)以降は販売を強化する方針だ。法人向けWi-Fiインフラ事業の収益化も期待され、中期的にも増収増益基調に変化はないだろう。
■監査等委員会設置会社に移行予定
なお15年2月に東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを発表したが、企業統治と執行を強化することによって成長スピードを再び加速し、市場変更準備は今後も継続するとしている。
また11月6日には監査等委員会設置会社に移行すると発表した。16年3月開催予定の第12回定時株主総会において承認されることを条件として実施する。
■株価は減額修正に対する失望売りが一巡して出直り
株価の動きを見ると、15年12月期業績予想減額修正を嫌気して急落し、11月4日の年初来安値1628円まで下押した。しかし失望売りが一巡して出直りの動きを強めている。11月25日は1970円まで戻した。
11月25日の終値1970円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円62銭で算出)は33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS224円48銭で算出)は8.8倍近辺である。時価総額は約201億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。15年12月期業績予想を減額修正したが増収増益基調に変化はなく、インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連のテーマ性も注目される。中期成長力を評価して出直り展開だろう。