【編集長の視点】キッセイ薬品は新薬薬価収載で今期業績も株価も上ぶれ期待を高める
キッセイ薬品工業<4547>(東1)は、9月29日につけた年初来安値2631円から25日移動平均線水準までリバウンド、同水準で売り買いが交錯している。ただ同社は、きょう26日に同社の高リン血症治療薬「ピートルチュアブル錠250mg、500mg」が薬価に収載されたことから、今年11月4日に上方修正された今3月期業績が、再上方修正されるとの期待が潜在している。同新薬の製造販売承認取得の今年9月から約400円高した株価上昇も、現実買いとして再現思惑を高めそうだ。
■「ピートル」のピーク時年商は120億円を予想し今期下期から業績寄与
「ピートル」は、昨年11月に製造販売承認を申請し今年9月28日に承認を取得した。慢性透析患者は、腎臓の機能低下のため食事により吸収されたリンが腎臓から排泄されず、血清リン濃度が上昇して高リン血症を発症し、心不全などの心血管病変に影響して死亡リスクを上昇させる。「ピートル」は、酸化水酸化鉄が消化管内でリン酸と結合して体内へのリンの吸収を抑制することにより血清リン濃度を低下させる。同新薬は、ピーク時に投与患者数を4万5000人、販売金額を120億円と予測されている。
一方、同社の今3月期業績は、第2四半期(2Q)累計業績開示の今年11月に上方修正し、売り上げを期初予想より12億円、経常利益、純利益を各14億円引き上げ、純利益を79億円(前期比10.3%増)と期初の連続減益予想から増益転換させた。2Q累計業績が、医薬品売り上げの計画超、売り上げ原価率の低下、販管費の計画比減などを要因に期初予想を上ぶれて前年同期比減益率を縮小して着地しており、この上ぶれ分を通期業績に上乗せして通期業績を上方修正した。
ただこの3月通期業績の上方修正は、なお保守的との見方も続いている。例えばきょう26日に薬価収載された「ピートル」は、下期の一部寄与だけで7億円の売り上げを見込んでいるが、ピーク時年商120億円は、同社の主力薬の排尿障害改善薬「ユリーフ」(今期予想151億円)に迫るだけに、今後の販売動向により注目が集まる。
■1株純資産水準から半値戻し、全値戻しとリバンド幅を拡大へ
株価は、年初来高値3975円から今期業績の連続減益予想や今期第1四半期の連続減益着地などが響いて同安値2631円まで調整し、「ピートル」の製造販売承認取得とともに底上げ、今期業績の上方修正とともに、この調整幅の3分の1戻しまでリバウンドし1株純資産3094円水準を固めていた。PER評価では19倍台と市場平均を上回っているが、業績再上ぶれ期待を高めて半値戻し、全値戻しと一段の戻りにトライしよう。(本紙編集長・浅妻昭治)