『仕手筋逮捕と証券大衆化』=大物仕手筋の逮捕に続いて元、ファンド代表の強制捜査が相次いで報道されている。言うまでもなく株投資には、「配当金受領」、「売買差益狙い」、「会社経営への参加」という3大要素がある。仮に、株式を保有し当該企業へ脅しなどの行為を行えば刑事々件で恐喝罪に当るが、今回の2つの事案は、売買差益に関し、相場操縦を禁止した「金融商品取引法」の範疇ということである。 今回の件では、どちらかといえば、大物仕手筋は「買い」中心、元代表は「売り」(株券を借りてうる空売り)中心といえるが、両者とも株価と出来高を意図的に操作して売買差益による利益を得た、という容疑である。なぜ、今のタイミングでの逮捕・捜査なのかという声も聞かれるが、NISA導入、日本郵政グループの上場など、「貯蓄・不動産から証券投資へ」という証券大衆化が国策として進められていることと無関係ではなさそうだ。 証券市場は昭和24年の取引所再開、昭和44年の時価発行公募増資を経て、コーポレートガバナンスコードのもと投資家に目を向ける経営の流れにある。とくに、個人投資家層の拡大が急務となっている。一時は仕手系株がモテハヤされた時代もあったことは事実だが、基本は経済の発展と共に株価が形成され国民の資産形成に貢献することが証券市場の使命である。 邸永漢氏は、常々、「歳をとったら身体がきつくなるのだからお金に働かせなさい」と言われ続けていた。若い人の先行き老後のためにも株式投資に真剣に取り組んでもらいたいもである。しかし、社会では未だ株は怖いものというイメージが強い。とくに、仕手系銘柄の動いた後はひどい状態だったこともその一因だけに今回の報道は株式投資初心者に安心して投資できるものに向けて進んでいるものとみられる。