【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスラポート・ダイニングは8月の年初来高値に接近、今期再増額の可能性や中期成長力を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 外食FC事業や食品製造販売事業などを展開するアスラポート・ダイニング<3069>(JQS)の株価は、12月22日の終値で306円まで上値を伸ばして8月の年初来高値319円に接近してきた。強基調に転換した形であり、今期(15年3月期)業績再増額の可能性や中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

 外食FC事業や食品製造販売事業を展開する持株会社である。傘下の事業会社に、焼肉店「牛角」エリアFC本部運営や釜飯・串焼が特徴の居酒屋「とりでん」FC総本部運営などのプライム・リンク、鶏料理専門居酒屋「とり鉄」FC総本部運営などのとり鉄、たこ焼きや洋菓子「GOKOKU」事業(13年12月事業譲受)のフードスタンドインターナショナル、業務用乳製品加工の弘乳舎(13年9月子会社化)を置き、14年9月には焼鳥居酒屋「ぢどり亭」「浪花屋鳥造」を関西中心に展開しているレゾナンスダイニングを子会社化した。

 14年9月末の店舗数は焼肉「牛角」172店舗(直営6、FC166)、居酒屋「とりでん」69店舗(直営4、FC65)、居酒屋「おだいどこ」20店舗(直営7、FC13)、居酒屋「とり鉄」60店舗(直営11、FC49)など合計343店舗(直営43、FC300)で、レゾナンスダイニングを加えるとグループ総合計431店舗である。なお焼肉「牛角」のエリアは東北、北関東、北陸、東海、近畿、九州(大分・熊本を除く)、および沖縄の27府県である。

 FCによる外食ブランド展開、持株会社制による効率的運営とポートフォリオ管理、六次産業への展開を促す事業基盤がビジネスモデルの特徴だ。中期成長戦略として既存ブランドの競争力強化と成長、ブランド・ポートフォリオの多様化、海外市場への進出、食品生産事業と六次産業化への取り組みを推進している。従来の外食FC運営の枠にとどまらず、重点戦略を連動させて生産から流通・飲食・小売までを包括し、多層的に協業することでシナジー効果を発揮する「食のバリューチェーン」企業を目指している。

 中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、目標数値として17年3月期売上高112億71百万円、営業利益7億89百万円、売上高営業利益率7.0%、ROE20.0%、D/Eレシオ1.2倍を掲げている。

 既存ブランドの競争力強化と成長では、関西エリアにおける焼肉「牛角」の都市型大型店舗の成功事例をベースとして積極出店を推進する。ブランド・ポートフォリオの多様化では、M&Aを活用した新業態の獲得や他社ブランド業態をFCパッケージに育成する戦略を推進する。製造分野では外食とも協業して新商品開発を推進し、弘乳舎から大手外食チェーンへの商品供給も拡大する方針だ。

 海外事業では14年9月、英国3社(水産物加工卸売のT&S社、食材輸出入のS.K.Y.社、寿司店および水産物小売店運営のAtari-Ya社)を持分法適用会社化した。欧米における日本食ブームも追い風であり、14年4月設立のアスラポート・フランスとともに欧州市場への進出を加速する。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(レゾナンスダイニング子会社化に伴って9月19日に売上高、利益を増額修正)は売上高が前期比17.3%増の110億26百万円、営業利益が同23.8%増の6億96百万円、経常利益が同35.4%増の6億23百万円、純利益が同18.3%増の3億55百万円としている。

 関西都市部への「牛角」大型店舗出店、CMなどを活用した販促・集客、ポートフォリオ多様化戦略に沿ったアライアンス事業拡大、居酒屋業態の不採算店閉店や業態転換による収益力改善、洋菓子「GOKOKU」事業や弘乳舎の通期寄与、FC加盟店からのロイヤリティ収入およびFC加盟店への食材売上の増加が寄与して大幅増収増益の見通しだ。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比30.9%増収、同2.1倍営業増益、同2.2倍経常増益、同2.4倍最終増益だった。主力の「牛角」の既存店が好調に推移した。また弘乳舎の乳製品販売やデザート受託製造が想定以上に好調で、人件費が想定を下回ったことも寄与して大幅増収増益となり、売上高、利益とも期初計画を上回った。

 ブランド別既存店売上の状況(直営店+FC店、前年比速報値)を見ると、14年11月は「牛角」が105.2%で4ヶ月連続のプラス、「とりでん」が101.2%で3ヶ月ぶりのプラス、「おだいどこ」が96.7%で2ヶ月ぶりのマイナス、「とり鉄」が96.4%で2ヶ月ぶりのマイナスだった。子会社化したレゾナンスダイニングの11月は「ぢどり亭」が102.2%、「浪花屋鳥造」が96.8%だった。

 また14年4月~11月累計で見ると「牛角」が101.5%、「とりでん」が98.2%、「おだいどこ」が97.0%、「とり鉄」が100.0%となった。主力の「牛角」が好調に推移している。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が46.8%、営業利益が50.4%、経常利益が50.9%、純利益が71.0%である。主力の「牛角」の既存店や乳製品製造の弘乳舎が好調であり、消費増税先送りもプラス要因となりそうだ。食材の集中購買による調達コスト低下なども寄与して通期見通しに再増額の可能性があるだろう。ブランド・ポートフォリオの多様化戦略や海外展開の進展で、中期的にも収益拡大基調だろう。

 株主優待制度は毎年3月末および9月末時点の500株以上所有株主を対象として実施している。所有株式数500株以上~1000株未満所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から1点(3000円相当)、1000株以上所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から2点(6000円相当)を贈呈する。

 株価の動きを見ると、10月14日の282円を直近ボトムとして水準切り上げの動きを強めている。12月22日には終値で306円まで上値を伸ばして8月の年初来高値319円に接近してきた。今期業績見通し再増額の可能性を評価する動きだろう。

 12月22日の終値306円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19円13銭で算出)は16倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS94円64銭で算出)は3.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって徐々に水準を切り上げている。強基調に転換したようだ。今期業績見通し再増額の可能性や中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る