【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーは15年12月期業績予想の2回目の増額修正を発表

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)はオペレーティング・リース、環境エネルギーファンドを中心に金融ソリューション事業を展開し、M&Aも活用して純利益毎期50%以上の成長を目指している。11月27日には15年12月期業績予想の2回目の増額修正を発表した。株価は戻り歩調の展開であり、14年11月の上場来高値を目指す展開だろう。

■オペレーティング・リース主力に金融ソリューションを展開

 設立(06年9月)時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月にM&Aアドバイザリー事業、14年5月に太陽光発電第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業を開始した。14年12月には投資銀行本部を設置して金融ソリューション事業を本格展開している。

 主力のオペレーティング・リース事業は、11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海上輸送用コンテナを主対象に展開している。また米CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を持分法適用関連会社としている。

 14年9月の東証マザーズ上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。そして案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門、海運コンテナ部門とも、レッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。

 販売面では知名度・信用力の向上に伴って、全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が増加している。そして主要顧客である中堅・中小企業の収益改善や法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準だ。航空機オペレーティング・リースは賃借人が欧米の一流航空会社であることも好評の一因のようだ。太陽光発電ファンドも為替リスクのない安定利回り商品として投資家ニーズが高く、短期間で完売する状況が続いている。

■オペレーティング・リース事業の対象領域を拡大

 15年10月には船舶を対象とした日本型オペレーティング・リース第1号案件の組成完了を発表した。リース開始日は15年10月13日、リース対象物件はリベリア船籍1隻(96年製、積載容量約4200立米)、賃借人はケミカルタンカーオペレーター大手である。これにより対象物件として航空機・船舶・海上輸送用コンテナのすべての領域をカバーすることになった。投資対象の多様化という顧客ニーズに応えて収益拡大を加速する。

 また15年10月には航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業の開始を発表した。パーツアウト事業は退役航空機を解体し、その各部品を在庫管理し、世界の整備会社・リース会社・航空会社等へ販売する事業、コンバージョン事業は機齢の経った旅客機を輸送機等に改造してリサイクルする事業である。

 15年11月にはルクセンブルク公国に子会社JIAルクセンブルクを設立した。航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業をさらに推進するため、関連する海外企業に対する出資・貸付の実施を目的とする。

 そして11月27日にはJIAルクセンブルクを通じて、パーツアウト・ビジネスの専門業者であるフランスVAG社に出資して資本・業務提携すると発表した。機齢の経った旅客機を貨物機に改造してリサイクルするコンバージョン事業のノウハウを持つ同社との資本・業務提携で、航空機パーツアウト・ビジネスへの自己投資による収益機会拡大、オペレーティング・リース案件とは異なる新しいタイプの投資商品の開発、オペレーティング・リース案件の対象航空機の換価処分をスムーズに進めるためのツールとしての活用を実現する。

■中期成長に向けて環境事業を拡大

 主力のオペレーティング・リース事業に加えて、中期成長に向けてM&Aも積極活用しながら環境関連事業を拡大する方針だ。

 15年5月にLEシステム(福岡県)の株式を取得して資本業務提携した。同社の電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。さらにバイオマス発電に関するノウハウも豊富であり、当社の投資ネットワークやファイナンス技術との補完によって、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する。今後LEシステムへの出資比率引き上げも含めて、環境エネルギー事業を一段と拡大させる方針だ。

 なお9月4日付の日本経済新聞電子版ニュースでは「LEシステムが17年をメドにバナジウムレドックスフロー電池を製品化する方針」と報じている。主要材料である電解液の安価な製造法など独自技術の開発に成功したとしている。製品化した大容量電池を再生エネルギー取扱業者などに販売するほか、災害時の非常用電源として自治体などからの需要を見込み、電解液を他のメーカーに供給することも検討しているようだ。

 15年9月には、あすかグリーンインベストメント(AGI)の株式を取得(発行済株式数600株のうち300株)して資本・業務提携した。AGIはウクライナ、カザフスタンなど主に中央アジア、南アジアにおいて再生可能エネルギーや省エネルギー事業を展開している。AIGの環境ビジネスのノウハウと当社のファイナンス技術などとのシナジー効果を創出して、相互の事業発展を目指す方針だ。

 15年10月には環境エネルギー関連の新たな取組として汚泥削減システムのフジ・エコ・テクノス(FET社、大阪市)への出資(46.7%を取得)を発表した。FET社は、汚泥に水撃圧を加えて生物処理層へ返送することができる新しい汚泥削減システム(水撃法)を開発して特許を取得している。また同社は噴流炭化システムの開発を行っており、当社が推進しているバイオマス発電事業などに大きく寄与するとしている。

■PE投資やIR支援にも進出

 プライベート・エクイティ(PE)投資や、上場企業のIR支援などにも進出して、事業の多角化も加速している。

 15年8月にはプライベート・エクイティ(PE)投資事業に本格的に進出するため、100%出資のPEファンドJPE第1号を設立してバリューアップ投資を開始すると発表した。当面は3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。

 第1号案件として日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。NMPスペシャリストは当社グループ入りと同時に日本マンパワーと包括的業務提携を締結し、当社の主要顧客である全国の優良な中堅・中小企業向け人材供給、ならびに人材育成・教育やキャリアアップへの参画を図る。3年後の上場を目指すとしている。

 15年9月には日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの全株式を取得して子会社化した。両社を通じて新聞・出版・広告を中心としたメディア関連事業、およびIR(投資家向け広報)支援事業に進出する。当社が持つ金融機関や会計事務所などとのネットワークを最大限活用し、さまざまな金融情報の提供、全国の上場会社へのIR支援業務を積極的に展開する方針だ。

 またIR支援サービスの日本証券新聞リサーチと、人材派遣・紹介事業のNMPスペシャリストが連携して、人材難に悩む企業に対して中小企業診断士や社外取締役などを紹介・マッチングする事業なども展開するようだ。

 さらに11月16日には、M&Aアドバイザリー事業に特化した専門子会社Japan M&A Adviser(仮称)の設立(18年1月上旬予定)を発表した。豊富な経験・ノウハウを持つプロフェッショナル専門家集団によって、事業承継案件や事業再生案件などを幅広く手掛け、当社グループのネットワークを最大限活用して事業展開する。

■案件組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱である。会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売すべてが終了した時点において、出資金に含まれる手数料を売上高として計上する。

 なお従来は営業費用に計上していた紹介手数料および案件組成に係る弁護士費用、営業外費用に計上していた案件組成に係る金融費用について、売上との直接的な対応関係を明確にするため、15年12月期から売上原価に計上している。

■15年12月期第3四半期累計は大幅増収増益

 今期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.8倍の18億25百万円で、営業利益が同2.7倍の8億05百万円、経常利益が同2.5倍の7億14百万円、純利益が同2.6倍の4億49百万円だった。

 オペレーティング・リース事業、環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が大幅伸長した。売上総利益率は69.0%で同16.1ポイント低下、販管費比率は24.9%で同15.1ポイント低下した。営業外収益では商品出資金売却益が増加(前期20百万円計上、今期1億13百万円計上)し、営業外費用では為替差損が増加(前期2百万円計上、今期99百万円計上)した。

 中核事業のオペレーティング・リース事業では、組成サイドで航空機部門・コンテナ部門ともにレッシーからの引き合いが途絶えることなく、販売サイドでも全国の金融機関や会計事務所ならびにコンサルティング会社などと綿密に連携して全国の投資家との成約に至っている。また為替リスクのない太陽光発電ファンドも投資家ニーズが高く、販売開始から短期間で完売している。

 第3四半期(7月~9月)の組成は2件(コンテナ1件56億39百万円、太陽光発電1件8億30百万円)で、販売は5件(航空機3件57億11百万円、コンテナ1件11億22百万円、太陽光発電1件8億30百万円)だった。

 また第3四半期累計(1月~9月)の組成は航空機2件(組成金額222億93百万円)、コンテナ2件(同92億63百万円)、太陽光発電4件(同26億55百万円)の合計8件(同342億11百万円)で、販売は航空機5件(販売金額106億74百万円)、コンテナ3件(同28億94百万円)、太陽光発電4件(同24億95百万円)の合計11件(同160億63百万円)となった。さらに第3四半期末の商品在庫として航空機1件(募集総額41億63百万円)、コンテナ1件(同17億44百万円)の組成を完了している。

 販売ネットワーク(ビジネスマッチング契約先)は、15年12月期第3四半期末時点の累計提携先が、税理士・会計事務所85事務所(14年12月期末比18増加)、銀行21行(同10増加)、証券会社6社(同増減なし)、合計112件(同28増加)となった。また資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は14年12月期第3四半期末比33.0億円増加の55.3億円となった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億30百万円、第2四半期(4月~6月)3億50百万円、第3四半期(7月~9月)10億45百万円、営業利益は第1四半期1億85百万円、第2四半期94百万円、第3四半期5億26百万円だった。

■15年12月期業績予想を2回目の増額修正(11月27日)

 今期(15年12月期)通期の連結業績予想については11月27日に増額修正を発表した。7月29日の増額修正に続く2回目の増額修正である。前回予想に対して売上高を5億19百万円、営業利益を57百万円、経常利益を1億20百万円、純利益を85百万円増額した。

 中核事業のオペレーティング・リース事業、および環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が大幅に伸長し、当期から事業開始した航空機対象のパーツアウト・コンバージョン事業も順調に推移している。

 修正後の通期連結業績予想は売上高が前期比2.6倍の27億40百万円、営業利益が同2.1倍の11億02百万円、経常利益が同77.7%増の12億10百万円、純利益が同74.9%増の7億40百万円となった。配当予想については無配継続としている。

■純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画

 中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進してきた。

 そして今後の第4ステージでは、当社の優良中堅・中小企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ(PE)投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業、メディア関連・IR支援関連事業など、金融ソリューション事業を中心にM&Aも積極活用して事業領域を広げる方針だ。

 オペレーティング・リース事業の継続的強化、環境エネルギーファンド事業の拡大、全国に広がる幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品とソリューションの提供に向けて、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。

 白岩直人代表取締役社長は「オペレーティング・リースの市場規模は今年度末に2500億円程度になると推測している。当社のシェアは現在10%程度だが早期に20%程度まで伸ばしていきたい。顧客の投資意欲は旺盛であり、当社の商品は現在検討されている税制改正に対する準備ができているため有利な状況だ」と述べている。そして「M&Aも積極活用して事業多角化やシナジー創出という成長戦略を推進し、純利益ベースで毎期50%以上の成長を目指す」と高成長に自信を見せている。

 主力のオペレーティング・リース事業は高水準の需要を背景として一段の伸長が予想される。さらに環境エネルギー事業やPE投資事業なども本格化して中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を導入

 11月12日に株主優待制度の導入を発表した。毎年12月末日時点で1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株式数および継続保有期間に応じて、クオカードおよび日本証券新聞デジタル版購読券を進呈する。15年12月末日時点の株主を対象として開始する。

 なお優待内容の例としては、継続保有期間1年以上で1000株以上保有株主に対してクオカード5000円+日本証券新聞デジタル版6ヶ月購読券1万8000円などとしている。

■株価は戻り歩調で14年11月の上場来高値目指す

 株価の動きを見ると、8月の年初来安値885円から反発して戻り歩調の展開だ。10月16日に1898円まで上伸し、その後の利益確定売りをこなしながら11月27日には戻り高値となる1998円まで上伸した。

 11月27日の終値1888円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS66円75銭で算出)は28~29倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円78銭で算出)は15倍近辺である。時価総額は約210億円である。

 週足チャートで見ると上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなり、52週移動平均線を突破した。強基調を確認した形だ。15年12月期業績予想の2回目の増額修正も好感して14年11月の上場来高値2756円を目指す展開だろう。

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