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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クレスコは7月の年初来高値に接近、16年3月期業績予想に再増額余地
- 2015/11/30 09:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
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クレスコ<4674>(東1)は独立系のIT企業でビジネス系ソフトウェア開発を主力としている。受注好調で第2四半期累計は計画超の増益だった。株価は強基調に回帰して7月の年初来高値に接近している。16年3月期業績予想に再増額余地があり、上値を試す展開だろう。
■ビジネス系ソフトウェア開発が主力のIT企業
ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。15年3月期の顧客業種別売上構成比は、ソフトウェア開発の金融・保険関連41.2%、公共・サービス関連20.1%、流通・その他21.3%、組込型ソフトウェア開発のカーエレクトロニクス6.2%、通信システム3.8%、情報家電・その他6.9%だった。
中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。
■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進
オリジナル製品・サービスに関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、14年6月に開始したSAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」の拡販を推進している。
15年3月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を発表し、5月から販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。
15年5月にはBLE(Bluetooth Low Energy)技術に基づくIoT基盤のプラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」の開発を発表した。
15年6月には、IoT基盤プラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」に対して、Skeed社(東京都)と共同で次世代技術の自律分散型P2Pネットワークを活用する取組に着手すると発表した。
15年7月には子会社クレスコワイヤレスが丸紅情報システムズと共同開発した単3電池2本型のビーコン(Beacon)デバイスの販売開始を発表した。スマートフォンやタブレットPCなどとBLE通信を行うビーコンデバイスである。そして15年10月には、クレスコワイヤレスがAPPLIYA社とスタンプ型のビーコンデバイス「Switch Beacon」と共同開発し、APPLIYA社が販売開始したと発表している。
また15年7月には、ソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定されたと発表している。テクノロジーパートナーとして、Pepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。
15年9月には、Kii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立した、IoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。現在21社が参加している。
■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用
得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。
13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。
15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。
15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。
第4四半期の構成比が高い収益構造で案件別の採算性も影響する。また15年3月期のROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して14.1%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して60.8%、配当性向は28.5%だった。
■16年3月期第2四半期累計は計画超の増収増益
11月6日に発表した今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.2%増の138億19百万円、営業利益が同24.6%増の12億08百万円、経常利益が同30.5%増の14億10百万円、純利益が同31.6%増の10億17百万円だった。なお受注高は同19.3%増の143億13百万円だった。
前回予想(5月8日公表)との比較で見ると、売上高は6億19百万円、営業利益は1億68百万円、経常利益は2億80百万円、純利益は2億72百万円、それぞれ上振れた。
金融セグメントを中心とする開発案件の増加、販管費の抑制効果などが寄与して計画超の増収増益だった。売上総利益率は18.2%で同0.3ポイント上昇、販管費比率は9.4%で同0.4ポイント低下した。営業外収益では有価証券売却益が増加し、営業外費用では有価証券評価損が減少した。
セグメント別の売上高を見ると、ソフトウェア開発事業は同14.8%増の114億29百万円(金融・保険分野が同22.8%増の58億35百万円、公共・サービス分野が同12.7%増の29億12百万円、流通・その他分野が同2.3%増の26億80百万円)だった。金融関連の開発規模拡大が継続し、インバウンド需要を背景に運輸・旅行関連の開発も好調だった。
組込型ソフトウェア開発事業は同17.2%増の23億40百万円(通信システム分野が同9.8%減の4億36百万円、カーエレクトロニクス分野が同46.5%増の9億75百万円、情報家電・その他分野が同9.6%増の9億28百万円)、商品・製品販売は同9.5%増の49百万円だった。カーエレクトロニクス分野では車載表示系やマルチメディア関連の開発が増加し、次世代の自動車自動走行関連の案件も含まれているようだ。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)65億64百万円、第2四半期(7月~9月)72億55百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期7億85百万円だった。なお受注高は第1四半期72億86百万円、第2四半期70億27百万円だった。
■16年3月期業績・配当予想を増額修正、さらに再増額余地
今期(16年3月期)通期の連結業績予想については10月26日に増額修正した。修正後の通期連結業績予想は、売上高が前期比10.1%増の276億円で、営業利益が同14.3%増の23億円、経常利益が同16.1%増の26億円、純利益が同26.7%増の17億80百万円としている。前回予想(5月8日公表)に対して売上高を6億円、営業利益を1億円、経常利益を2億円、純利益を2億10百万円、それぞれ増額した。
なお計算上は下期(10月~3月)を減額修正した形だが、通期の連結業績予想に関しては、来期(17年3月期)以降の継続的な成長に向けての教育投資、新技術開発に関連する技術研究投資、社内作業効率向上化に関連するシステム開発投資、受託開発案件増加に対応した事務スペース拡充等の施策を織り込んだとしている。
配当予想も10月26日に増額修正し、前回予想(5月8日公表)に対して第2四半期末に3円増額、期末に3円増額し、合計で6円増額して年間46円(第2四半期末23円、期末23円)とした。予想配当性向は29.1%で、前期との比較では8円増配となる。なお配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が50.1%、営業利益が52.5%、経常利益が54.2%、純利益が57.1%である。修正後の通期会社予想には来期以降の成長に向けた先行投資を織り込んだとしているが、第4四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば、通期会社予想に再増額の余地があるだろう。
国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は強基調に回帰して7月の年初来高値に接近
なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。
第2回新株予約権については3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日、10月28日、そして11月25日に行使許可を発表している。
株価の動きを見ると、直近安値圏1600円近辺から切り返して戻り歩調の展開だ。そして11月24日には2090円まで上伸して、7月の年初来高値2198円に接近してきた。強業績を評価する動きだろう。
11月27日の終値2013円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS158円07銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間46円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS990円11銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約242億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。強基調への回帰を確認した形だ。16年3月期業績予想に再増額余地があり、7月の年初来高値2198円を試す展開だろう。