【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アドアーズはアミューズメント既存店売上改善や介護事業休止で営業損益改善基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アドアーズ<4712>(JQS)はアミューズメント事業や不動産事業を展開している。株価は調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期は減損損失計上で最終赤字だが、アミューズメント施設既存店売上の改善や介護事業休止で営業損益改善基調が期待される。出直り展開だろう。

■Jトラストグループで総合エンターテインメント事業が主力

 13年2月に、親会社Jトラスト<8508>グループで戸建て住宅分譲や商業建築など展開するキーノート、アミューズメント施設向け景品製作・販売など展開するブレイクを子会社化し、Jトラストグループ内で総合エンターテインメント事業、不動産事業、商業施設建築事業の中核を担う位置付けとなった。

 総合エンターテインメント事業では、利益率の高いメダルゲームジャンルを注力分野として収益改善を目指している。新業態開発やゲーム景品製造も強化して、当社独自のアミューズメント機器の開発も視野に入れている。不動産事業では一戸建分譲事業のエリア拡大や不動産アセット部門の強化を推進している。

 14年9月には韓国JBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す方針だ。

 15年4月には、フォーサイドエンタテイメントが運営するスマートフォン向けソーシャルコミュニケーションアプリ「Eyeland」による「地域コミュニケーション起点の店舗送客O2Oマーケティング」サービスの提供を開始すると発表した。当社が運営する店舗情報を「Eyeland」内の地図上に表示させ、当社のリアル店舗への送客を目指すとしている。

■介護事業は休止

 14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、15年8月に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。

 同社は競争激化などで通所介護事業の低迷が続き、デューディリジェンスで想定していた金額を超えて大幅な債務超過となった。このため同社に対して追加出資を行って債務超過を解消したが、業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止することとした。

■15年3月期第4四半期の営業損益悪化は介護事業連結も影響

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億85百万円、第2四半期(7月~9月)60億97百万円、第3四半期(10月~12月)61億04百万円、第4四半期(1月~3月)55億13百万円、営業利益は第1四半期3億60百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期1億10百万円、第4四半期1億58百万円の赤字だった。

 第4四半期の営業損益悪化は介護事業の連結化も影響した。また15年3月期の配当性向は60.4%だった。ROEは14年3月期比4.8ポイント低下して4.1%、自己資本比率は同5.4ポイント低下して47.8%となった。

■16年3月期は介護事業休止に伴う減損損失計上だが営業損益改善

 11月11日発表の今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.3%減の111億58百万円、営業利益が同51.0%減の3億48百万円、経常利益が同53.3%減の3億04百万円、純利益が4億29百万円の赤字(前年同期は5億67百万円の黒字)だった。

 総合エンターテインメント事業は、売上高が同1.9%減の75億80百万円で、営業利益が同15.4%減の4億92百万円だった。アミューズメント施設運営部門はゲームセンター市場における個人消費意欲の減退や既存店舗の閉店などで減収だった。利益面ではアミューズメント景品・製造販売部門における円安による製造原価の上昇も影響した。

 不動産事業は売上高が同17.3%減の28億77百万円で、営業利益が同26.0%減の2億69百万円だった。前期好調だった不動産アセット部門が反動減だった。商業施設建築事業は売上高が同85.6%減の82百万円で、営業利益が38百万円の赤字(前年同期35百万円の黒字)だった。大口案件が減少した。介護事業(15年3月期第4四半期から連結、15年8月事業休止)は売上高が6億08百万円で、営業利益が1億10百万円の赤字だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)54億74百万円、第2四半期(7月~9月)56億84百万円、営業利益は第1四半期11百万円、第2四半期3億37百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(日本介護福祉グループの株式譲渡と特別損失計上に伴って、8月11日に売上高と純利益を減額、営業利益と経常利益を増額修正)を据え置いて、売上高が前期比6.0%減の220億円、営業利益が同20.4%増の8億円、経常利益が同26.8%増の7億円、純利益が1億10百万円の赤字(前期は4億61百万円の黒字)としている。配当予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて前期と同額の年間2円(期末一括)としている。

 介護事業休止に伴って、居宅支援事業所などの開設に係る先行費用が減少するため、営業利益と経常利益は増益予想だ。純利益については特別利益に固定資産売却益2億円を計上するが、介護事業休止に伴う減損損失10億32百万円を計上する。

 アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)は、15年4月が97.6%、5月が99.5%、6月が94.9%、7月が99.1%、8月が95.1%、9月100.5%、10月94.8%である。16年3月期の営業損益は、アミューズメント施設既存店売上の改善、介護事業の休止で改善基調が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標

 15年5月に発表した中期経営計画では、目標数値として最終年度の18年3月期売上高330億円(アミューズメント事業148億円、不動産事業・商業建築事業80億円、介護事業102億円)、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げた。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。

 基本戦略として、アミューズメント事業ではアニメコンテンツなどの活用・開発による総合アミューズメント事業の確立、Jトラストの活動基盤を活かしたアミューズメント施設の海外展開、不動産事業・商業建築事業ではJトラストの事業基盤を活かした日本基準住宅などの東南アジア展開を推進する。なお日本介護福祉グループの株式譲渡による影響については精査中としているが、グループ連携強化も奏功して中期的に収益改善基調が期待される。

■株価は調整一巡して強基調に転換する動き

 株価の動きを見ると、8月の年初来安値71円から9月末の100円近辺まで一旦反発したが、その後はやや水準を切り下げて80円~90円近辺でモミ合う展開だ。ただし80円台を割り込むことなく、足元では切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 11月27日の終値88円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS82円22銭)は1.1倍近辺である。なお時価総額は約123億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期は減損損失計上で最終赤字だが、アミューズメント施設既存店売上の改善や介護事業休止で営業損益改善基調が期待される。出直り展開だろう。

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