【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は調整一巡して戻り歩調、16年2月期増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(JQS)は、クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。株価は9月の年初来安値圏から反発して戻り歩調だ。16年2月期増収増益・増配予想であり、中期成長力も評価して14年10月高値893円を目指す展開だろう。

■クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力としている。また韓国のクリエイティブ分野、および医療・IT・法曹・会計などの分野におけるエージェンシー事業も展開し、事業領域拡大戦略を加速している。

 日本のクリエイティブ分野では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価され、TV番組制作受託事業が急拡大している。15年2月期の当社制作番組はレギュラーと特番を合わせて24本となった。

 また当社が制作協力した、日本人の老後の現実と希望を描いたドキュメンタリー映画「抱擁」が、平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)文化記録映画優秀賞を受賞した。

 さらに当社、白組(東京都)およびハウステンボス(長崎県)が共同制作した劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」が、10月10日から全国東映系列劇場で公開されている。小さなネズミ「ガンバ」を主人公とした壮大な冒険物語である。そして「GAMBAガンバと仲間たち」の公開に合わせて、当映画のキャラクターと世界観を共有したスマートフォンゲームアプリ「GAMBA RACER」の配信を開始した。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野のエージェンシー事業へ展開している。M&Aも活用して当面は人件費などの費用が先行するが、12年に開始した電子書籍取次事業については、ダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字が定着した。

 15年3月には中国最大の電子マンガプラットフォーム「布卡漫画」において一迅社のコミック雑誌「コミック百合姫」中国語電子版の配信を開始した。一迅社の人気コミック単行本の中国語電子版を制作して同プラットフォームで順次配信する。またサイブリッジが運営するWebデザイナーのためのギャラリーサイト「ikesai.com」内において、Web業界に特化した「キャリア・求人情報」サービスの運営を開始した。

 15年4月にはプロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。広告分野における人材事業を強化する。

 また子会社C&R上海と中国のエンターテインメント企業DragonPRCの共同出資で、中国市場に向けたコミック・ゲームの配信取次事業を行う合弁会社を立ち上げる。日本企業として初めてスマホ中国1位の小米に日本マンガをプリインストール配信することが決定した。

 15年5月にはエコノミックインデックスの第三者割当増資を引き受けて持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かし、当社グループのクライアントに対して商品やサービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。

 15年6月にはベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。海外のMCNとの提携は国内企業として初めてとなる。日越両国の企業が行うOnline動画を使用したプロモーション支援などを推進する。

 15年9月には、川崎市から平成27年度コンテンツ産業振興事業を受託した。川崎市内の製造業、卸売・小売業などさまざまな業種を対象に、映像、アニメーション、イラストなどのコンテンツを活用した事業展開の浸透を図り、市内産業の活性化をサポートする。

 15年10月にはオンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。動画共有サービスYouTubeに自作動画を投稿するクリエイターと、YouTube動画によるプロモーションを行う企業とを繋ぐプラットフォームだ。

 また15年10月には、教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本本格的始動を発表した。研究者の生涯価値の向上と企業の新しい価値創造に貢献すべく、高度な専門性を有する研究者をバックアップするとともに、日本の優れた研究を世界へと広める機会を創出する。

 なお法曹分野では、世界中の弁護士を繋ぐオンラインプラットフォームを構築中であり、15年12月~16年1月ごろリリース予定としている。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)60億92百万円、第2四半期(6月~8月)56億97百万円、第3四半期(9月~11月)55億42百万円、第4四半期(12月~2月)55億95百万円、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。

 医療分野が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 また15年2月期の配当性向は19.9%だった。ROEは14年2月期比3.9ポイント上昇して17.0%、自己資本比率は同5.8ポイント上昇して52.6%だった。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国、医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)の各連結子会社が事業展開している。

■16年2月期第2四半期累計減益だが計画水準

 今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%増の128億72百万円で、営業利益が同2.3%減の9億07百万円、経常利益が同4.9%減の8億95百万円、そして純利益が同11.8%減の4億66百万円だった。売上高、利益とも概ね計画水準だった。

 積極的な事業展開に伴う人件費の増加や、プロフェッショナルメディアを子会社化した影響などで営業減益だった。新規事業分野(作家、オンラインクリエイター、建築、ファッション、シェフ等)における先行投資負担の営業利益への影響額は前年同期並みの約1億円だった。また期初時点では計画していなかったエコノミックインデックスの持分法適用関連会社化に伴って持分法投資損失を計上したため、経常減益、最終減益だった。

 ただし売上面では、主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移し、上半期ベースで過去最高を記録した。

 セグメント別に見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同10.3%増の76億31百万円、営業利益(連結調整前)が同0.3%増の4億14百万円だった。TV番組・Web・ゲーム関連などが順調に推移した。映像専門社員90名の入社、開発スタジオの増床など社内制作体制も一段と強化した。

 ゲーム分野では1タイトルを配信開始した。電子書籍取次事業では第2四半期末時点の取扱書籍数が約3.5万タイトルとなり、ダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字が定着した。作家エージェンシー分野の契約作家数は120名となった。建築エージェンシー分野のプロデュース案件も増加している。オンラインクリエイター分野はプロモーション案件が増加して黒字化メドとなった。

 韓国のクリエイティブ分野は売上高が同17.4%増の19億08百万円、営業利益が同23.1%減の12百万円だった。韓国国内における派遣事業の競争激化の影響で利益率が低下したようだ。医療分野は売上高が同5.8%増の18億69百万円、営業利益が同11.6%増の4億68百万円だった。全国各地での慢性的な医師不足や地域偏在を背景として、医師紹介事業が好調だった。

 その他の事業は売上高が同0.9%減の14億62百万円で、営業利益が同86.3%減の10百万円だった。IT分野における大型案件一巡、プロフェッショナルメディアの新規連結が影響して減益だったが、法曹分野では弁護士登録数が8000名を超えて紹介事業が順調に伸長している。なお第1四半期のシェフ・エージェンシー事業に続いて、第2四半期にはプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げた。

 なお四半期別に見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)63億69百万円、第2四半期(6月~8月)65億03百万円、営業利益は第1四半期4億58百万円、第2四半期4億49百万円だった。

■16年2月期は増収増益・増配予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月8日公表)を据え置いて売上高が前期比9.0%増の250億円、営業利益が同15.7%増の15億円、経常利益が同13.6%増の15億円、純利益が同7.5%増の8億円としている。配当予想は同1円増配の年間8円(期末一括)で予想配当性向は21.2%となる。

 日本のクリエイティブ分野の好調が牽引し、新規事業の収益化も進展して増収増益予想だ。セグメント別売上計画は日本のクリエイティブ分野が同8%増収、韓国のクリエイティブ分野が同3%増収、医療分野が同6%増収、その他(4分野)が同23%増収としている。

 ゲーム分野は上期の1タイトルに加えて下期に4タイトルのリリースを予定している。利益率が低下している韓国のクリエイティブ分野は収益の多様化を目指す。子会社プロフェッショナルメディアでは、取引実績5000社、登録ユーザー5万人の求人サイト「広告転職.com」をリニューアル(15年9月)してマッチング機能を強化した効果も期待される。オンラインクリエイター分野では15年10月リリース予定の新プラットフォームによる売上増も期待される。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が51.5%、営業利益が60.5%、経常利益が59.7%、純利益が58.3%である。医療分野で第1四半期と第2四半期に利益が偏重する収益構造のため全体として高水準の形だが、通期ベースでも好業績が予想される。

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。ロボット、バイオ、ファイナンシャルなどの分野への進出も想定しているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は年初来安値圏から反発して戻り歩調

 株価の動きを見ると、9月の年初来安値圏400円近辺から反発して戻り歩調の展開だ。11月27日には604円まで上伸した。

 11月27日の終値602円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS229円00銭で算出)は2.6倍近辺である。なお時価総額は約136億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。強基調への転換を確認した形だ。16年2月期増収増益・増配予想であり、中期成長力も評価して14年10月高値893円を目指す展開だろう。

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