【編集長の視点】ロゼッタはもみ合いも初値倍率トップを見直し直近IPO株人気の再燃が有力
ロゼッタ<6182>(東マ)は、155円高の4195円と3営業日ぶりに急反発して始まったあと、125円安と下押すなど前週末27日終値を挟みもみ合いを続けている。きょう30日の日経平均株価が、欧米金融当局の金融政策待ちで、122円安と続落してスタートするなどやや方向性が不透明化しているなか、同社株にも目先の利益を確定する売り物が続いている。ただ下値には、同社株が、今年11月19日に公開価格695円で新規株式公開(IPO)され、初値を3705円でつけ、初値倍率5.33倍が今年のIPO株中トップとなったことを見直し、初値を窺う水準での直近IPO株人気の再燃を期待する買い物も交錯している。同社の業容自体が、人工知能(AI)とインバウンド(外国人観光客)需要関連の2つのテーマ性を内包し成長可能性が高いことも再評価されている。
■2025年にウエアラブル端末内蔵型の自動翻訳の完成形を実現
同社の初値高倍率は、公開価格のPERが、わずか10倍台、配当利回りも、今2月期の年間予定配当15円から2.14%と高く、資金吸収額も、2億7800万円の小規模にとどまったことなどが要因で、IPO初日、2日目と買い気配値を切り上げて推移し、3日目に3705円で初値をつけ、この初値倍率は、今年7月16日IPOのアイリッジ<3917>(東マ)の初値倍率5.29倍を抜いてトップに躍り出た。
もちろんこの高初値倍率は、同社の成長可能性が高いことが背景となっている。同社は、「我が国を言語的なハンディキャップの呪縛から解放する」ことを企業ミッションに翻訳事業を展開しているが、このなかでも評価が高いのがMT(自動翻訳サービス)事業である。同事業は、AIを活用して顧客が使うほど翻訳の精度が高まる自動学習機能を持ち、人間による翻訳からは別次元の日本語と外国語の壁がなくなるコミュニケーションの未来形を示唆している。同社は、2025年に画像認識・音声認識対応で訳文精度が95%、さらにウエアラブル端末内蔵型の完成形(T-4PO)を研究・開発し、実現を目指している。
業績も、このMT事業のほか、人間翻訳から機械翻訳への過渡的形態のGLOZE事業、従来型の人間による翻訳・通訳事業、企業向けの研修事業も好調に推移して高成長している。今2月期業績は、売り上げ15億6300万円(前期比11.5%増)、営業利益1億9300万円(同49.3%増)、経常利益1億7500万円(同33.6%増)、純利益1億2500万円(同32.7%増)と予想している。
■初値目前の安値から急騰特性を再発揮して上場来高値奪回に弾み
株価は、初値形成後にストップ高・ストップ安が交錯する荒い値動きとなったが、IPO4日目は再度、ストップ高して上場来高値4990円まで上値を伸ばした。最高値後は、3850円安値まで突っ込んだが、初値目前として直近IPO株買いが再燃した。IPO株として小型株で、なお同社株を買い切れていない投資家も多いだけに、実需買いを集めて急騰特性を再発揮、高値奪回に弾みをつけよう。(本紙編集長・浅妻昭治)