【アナリスト水田雅展の銘柄分析】リンテックは目先的な売り一巡、16年3月期業績予想に増額余地

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 リンテック<7966>(東1)は粘着製品の大手で幅広い分野に事業展開している。16年3月期第2四半期累計は増収増益で、通期予想に増額余地がありそうだ。株価は第2四半期累計の業績発表を受けて戻り高値圏から急反落したが、指標面に割高感はなく、目先的な売りが一巡して高値圏を目指す展開だろう。3期連続増配予想という積極的な株主還元姿勢も評価材料だ。

■高度な粘着技術と表面改質技術をベースとして幅広い分野に事業展開

 高度な粘着応用技術と表面改質技術(粘着剤や表面コート剤の開発・配合・塗工技術)に強みを持ち、印刷材・産業工材関連(シール・ラベル用粘着紙・粘着フィルム、ウインドーフィルム、自動車用・工業用粘着製品など)、電子・光学関連(半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサ製造用コートフィルム、液晶用偏光・位相差フィルム粘着加工など)、洋紙・加工材関連(カラー封筒用紙、粘着製品用剥離紙・剥離フィルム、炭素繊維複合材料用工程紙など)の分野に幅広く事業展開している。

■中期経営計画で17年3月期ROE8%以上目標

 14年4月にスタートした3ヵ年中期経営計画「LIP-2016」では重点テーマを、グローバル展開のさらなる推進、次世代を担う革新的新製品の創出、強靭な企業体質への変革、戦略的M&Aの推進、人財の育成とした。

 数値目標としては17年3月期売上高2400億円、営業利益200億円、経常利益200億円、純利益130億円、売上高営業利益率8%以上、そしてROE8%以上を掲げている。セグメント別には印刷材・産業工材関連が売上高1025億円、営業利益57億円、電子・光学関連が売上高943億円、営業利益88億円、洋紙・加工材関連が売上高432億円、営業利益55億円としている。

 海外展開に関しては、アジアを中心に拠点網を拡大している。15年1月には東南アジアおよびインドなどにおける事業統括会社をシンガポールに設立した。包括的な事業戦略の立案・実行により同地域での事業展開の強化を図る方針だ。また現在、タイの工場で各種粘着製品の生産能力増強を進めている。

 研究開発面では研究所新棟が15年秋完成した。最新鋭の大型研究設備の導入で新製品開発のスピードアップを図る。また米国テキサス州の研究開発拠点(NSTC)では新規シート材料の実用化に向けた研究を進めている。

 15年8月には、当社が開発を進めてきたハイバリアフィルムの技術を台湾の工業技術研究院(ITRI)に供与し、フレキシブル有機ELディスプレイの製造プロセス技術を共同開発すると発表した。

■第4四半期の利益構成比がやや低い傾向

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)493億22百万円、第2四半期(7月~9月)511億67百万円、第3四半期(10月~12月)529億36百万円、第4四半期(1月~3月)538億30百万円で、営業利益は第1四半期39億75百万円、第2四半期47億79百万円、第3四半期44億86百万円、第4四半期36億41百万円だった。

 経費発生時期などの要因で第4四半期の利益構成比がやや低くなる傾向があるようだ。また15年3月期の配当性向は29.7%だった。ROEは14年3月期比1.4ポイント上昇して7.2%、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して71.8%となった。

■16年3月期第2四半期累計は増収増益

 11月9日に発表した今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.0%増の1065億29百万円、営業利益が同10.0%増の96億32百万円、経常利益が同16.6%増の97億96百万円、純利益が同6.5%増の64億51百万円だった。

 電子・光学関連、洋紙・加工材関連の好調が牽引し、プロダクトミックス改善、原価低減、為替の円安などの効果も寄与して増収増益だった。売上総利益率は25.7%で同0.9ポイント上昇、販管費比率は16.6%で同0.5ポイント上昇した。

 セグメント別動向を見ると、印刷材・産業工材関連は売上高が同3.9%増の444億33百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が同24.8%減の13億11百万円だった。印刷・情報材部門は海外が中国やアセアン地域の景気減速の影響を受けたが、国内は飲料・医薬用などが堅調だった。産業工材部門はウインドーフィルムが中国の景気減速の影響を受けたが、自動車用粘着製品がインドやアセアン地域で堅調だった。

 電子・光学関連は売上高が同10.3%増の434億20百万円、営業利益が同15.7%増の60億10百万円だった。アドバンストマテリアルズ部門は半導体関連粘着テープ、積層セラミックコンデンサ製造用コートフィルムなどが伸長した。オプティカル材部門は液晶ディスプレイ関連粘着製品が堅調だった。

 洋紙・加工材関連は売上高が同1.6%増の186億75百万円、営業利益が同28.6%増の22億74百万円だった。洋紙部門はカラー封筒用紙が前年同期並みだったが、耐油紙がコンビニやファストフード店向けに伸長した。加工材部門は粘着製品用剥離紙が低調だったが、炭素繊維複合材料用工程紙が航空機用に好調だった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)525億50百万円、第2四半期(7月~9月)539億79百万円、営業利益は第1四半期49億56百万円、第2四半期46億76百万円だった。

■16年3月期増収増益予想で増額余地、3期連続増配予想

 今期(16年3月期)の連結業績予想は前回予想(5月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比6.1%増の2200億円、営業利益が同9.6%増の185億円、経常利益が同2.2%増の183億円、純利益が同8.9%増の127億円としている。

 配当予想も前回予想(5月8日公表)を据え置いて同6円増配の年間54円(第2四半期末27円、期末27円)としている。予想配当性向は30.7%となる。3期連続の増配予想だ。

 主要通貨の想定為替レートは1米ドル=115円、1ユーロ=126円80銭などとしている。設備投資は同50億円増加の128億円、減価償却費は同10億円増加の97億円、研究開発費は同14億円増加の82億円の計画だ。

 またセグメント別の計画は、印刷材・産業工材関連の売上高が同7.1%増の930億円、営業利益が同41.4%増の41億円、電子・光学関連の売上高が同5.6%増の879億円、営業利益が同3.0%増の104億円、洋紙・加工材関連の売上高が同4.8%増の391億円、営業利益が同横ばいの40億円としている。

 スマートフォン関連や自動車関連を中心に需要は概ね好調に推移する見込みだ。特に半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサ製造用コートフィルム、液晶ディスプレイ関連粘着製品など電子・光学関連の好調が牽引する。国内の消費回復などで印刷材・産業工材関連、洋紙・加工材関連の増勢も予想される。

 新研究棟の建設などによって減価償却費が増加するが、販売数量増加、プロダクトミックス改善、原燃料価格上昇に対応した製品価格改定、継続的な原価低減、さらに円安効果も寄与して増益見込みだ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.4%、営業利益が52.1%、経常利益が53.5%、純利益が50.8%と概ね順調な水準である。第4四半期の利益構成比がやや低くなる傾向があることを考慮しても、通期業績の会社予想に増額余地があるだろう。

 また需要の増加、高付加価値化の進展、さらにアジアを中心とする海外展開の加速も寄与して、中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は目先的な売り一巡して高値圏目指す

 株価の動きを見ると、11月9日の戻り高値2915円から急反落した。第2四半期累計の業績を嫌気した形だ。ただし目先的な売りが一巡して2600円近辺から切り返しの動きを強めている。

 11月30日の終値2661円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円06銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間54円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2363円81銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約2037億円である。

 週足チャートで見ると再び26週移動平均線を割り込んだが、9月の直近安値圏2400円台まで下押す動きは見られない。指標面に割高感はなく、目先的な売りが一巡して高値圏を目指す展開だろう。3期連続増配予想という積極的な株主還元姿勢も評価材料だ。

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