【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ソーバルは上場来高値に接近、16年2月期業績予想は増額の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ソーバル<2186>(JQS)は組み込みソフト開発などエンジニアリング事業を展開している。株価は戻り歩調で6月の上場来高値に接近してきた。16年2月期業績予想増額の可能性、大幅連続増配や株主優待制度といった積極的な株主還元姿勢、2%台後半の予想配当利回りを評価して高値を試す展開だろう。なお12月28日に第3四半期累計(3月~11月)の業績発表を予定している。

■組み込みソフト開発などエンジニアリング事業を展開

 組み込みソフト開発、ウェブ/スマホアプリ開発、ハードウェア設計・開発などのエンジニアリング事業を展開している。技術力と経験豊富な人材を合わせ持つ国内有数の独立系組み込みソフト開発企業で、優良な大口顧客を抱えていることも特徴だ。

 15年2月期の主要顧客別売上構成比は、キヤノン<7751>グループが63.3%、ソニー<6758>グループが11.9%、富士通<6702>グループが8.5%、NTT<9432>グループが3.7%だった。

 M&Aも積極活用して顧客や分野の多様化、新規事業の開拓、人材の確保を推進している。12年9月にはオムロン<6645>向けを主力とするモバイルコンピューティングテクノロジーズ(現MCTEC)を子会社化した。

 15年5月にはアンドールシステムサポート(東京都)を子会社化した。同社は車載システム開発、生産ラインや物流搬送設備などの制御システム開発に強みを持ち、子会社化することで組み込み用ソフトウェア・ハードウェア受託開発分野の業容拡大に繋がる。また同社の大阪支社を当社グループの関西圏進出の拠点と位置付けて積極的な事業展開を推進する。

 一方では15年3月にRFID事業をアートファイネックス(福井県)に譲渡した。15年2月期にソフトバンク関連の機器置き換え特需が一段落したため、RFID事業を売却して経営資源をエンジニアリング事業に集中する。

■15年2月期は本社移転費用が影響したが収益拡大基調

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)17億74百万円、第2四半期(6月~8月)16億86百万円、第3四半期(9月~11月)17億65百万円、第4四半期(12月~2月)16億95百万円、営業利益は第1四半期2億01百万円、第2四半期70百万円、第3四半期1億73百万円、第4四半期1億07百万円だった。

 第2四半期の営業利益は本社移転費用計上という一時的要因も影響したが収益は拡大基調だろう。なお15年2月期の売上総利益率は20.9%で14年2月期比0.5ポイント上昇、販管費比率は12.9%で同0.4ポイント上昇、ROEは13.5%で同0.5ポイント上昇、自己資本比率は70.8%で同6.0ポイント低下した。配当性向は40.1%だった。

■16年2月期第2四半期累計が高進捗率で通期増額の可能性

 今期(16年2月期)の連結業績予想(4月10日公表)は、売上高が前期比2.6%増の71億円、営業利益が同5.1%増の5億80百万円、経常利益が同3.5%増の5億80百万円、純利益が同5.0%増の3億50百万円としている。また配当予想(4月10日公表)は同7円増配の年間38円(第2四半期末19円、期末19円)としている。大幅連続増配で予想配当性向は45.6%となる。

 エンジニアリング事業の受注が増加基調である。新規顧客の開拓、受託案件の作業効率化、エンジニアの技術力アップとローテーションによる稼働最適化といった施策も推進する。本社移転費用や厚生年金基金脱退損失といった一時的費用一巡も寄与して増収増益予想だ。

 第2四半期累計(2月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比8.0%増の37億37百万円、営業利益が同22.5%増の3億32百万円、経常利益が同24.0%増の3億42百万円、純利益が同25.9%増の2億01百万円だった。

 受託開発案件の受注拡大、各プロジェクトにおける品質管理・納期管理・コスト管理の取り組み徹底、本社移転効果による作業効率化や各種ノウハウの共有化などで、期初計画を上回る増収・増益だった。売上総利益率は23.2%で同1.5ポイント上昇、販管費比率は14.2%で同0.5ポイント上昇した。

 第2四半期累計の主要顧客別売上構成比は、キヤノン<7751>グループが61.0%、ソニー<6758>グループが11.0%、富士通<6702>グループが9.4%、NTT<9432>グループが3.0%となった。富士通グループ向けが好調で前年同期比0.9ポイント上昇した。

 その他顧客の構成比は前年同期12.6%から15.6%に上昇した。特定顧客依存からの脱却を目指した新規顧客開拓が進展し、全体として上位顧客に対する依存度が低下した形だ。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)17億69百万円、第2四半期(6月~8月)19億68百万円、営業利益は第1四半期1億79百万円、第2四半期1億53百万円だった。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が52.6%、営業利益が57.2%、経常利益が58.9%、純利益が57.4%と高水準である。パートナー確保難航などを要因として通期会社予想を据え置いたが、新規連結のアンドールシステムサポートの業績を織り込んでいないことも考慮すると、通期会社予想は増額の可能性が高いだろう。

■受注環境良好、M&A戦略も寄与して収益拡大基調

 製造業では技術者不足が深刻化しているため、新製品開発関連などで優秀な技術者に対するニーズが一段と高まっている。受注環境は中期的にも良好だ。

 人材やパートナー企業の確保が課題だが、エンジニアのワーク・ライフ・バランスの充実、エンジニアの技術力向上、プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダーの育成、精度の高いプロジェクト管理、そして積極的なM&A戦略などの効果で、中期的に収益拡大基調が期待される。

■株主優待はQUOカードを贈呈

 株主優待制度については、毎年8月31日現在で1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株以上~500株未満保有株主に対して500円相当のQUOカード、500株以上保有株主に対して2000円相当のQUOカードを贈呈する。

■株価は戻り歩調で6月の上場来高値に接近

 株価の動きを見ると、9月の直近安値1026円から反発して戻り歩調の展開だ。11月30日には1340円まで上伸した。6月の上場来高値1480円に接近する動きだ。

 12月2日の終値1298円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS83円32銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間38円で算出)は2.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS599円57銭で算出)は2.2倍近辺である。時価総額は約55億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だ。16年2月期業績予想増額の可能性、大幅連続増配や株主優待制度といった積極的な株主還元姿勢、2%台後半の予想配当利回りを評価して6月の上場来高値1480円を試す展開だろう。

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