【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カーリットホールディングスは12月8日の戻り高値から一旦反落したが切り返しの動き、低PBRも評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 自動車用緊急保安炎筒などを展開するカーリットホールディングス<4275>(東1)の株価は、12月8日の戻り高値630円から利益確定売りなどで一旦反落したが、足元では切り返しの動きを強めている。0.6倍近辺の低PBRも評価材料として上値を試す展開だろう。6月の高値685円も視野に入りそうだ。

 日本カーリットが純粋持株会社を設立して13年10月東証1部市場に上場した。化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、危険性評価試験受託、2次電池試験受託、化成品関連、電子材料・機能性材料など)、ボトリング事業、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、研削材、耐火・耐熱金物、スプリングワッシャー)を展開している。

 自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力だ。半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は中国・上海、シンガポールに展開している。

 前中期経営計画「飛躍500」では「事業領域の拡大、市場の拡大、シェアの拡大という、3つの拡大戦略により売上高500億円の化学会社への成長」を基本方針として、グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略を積極展開して事業を多様化してきた。

 12年1月に工業用塗料販売・塗装工事の富士商事、12年8月に耐火・耐熱金物製造販売の並田機工、13年10月に一級建築士事務所の総合設計を子会社化した。そして14年2月には東洋発條工業を子会社化した。自動車・建設機械向けを中心とした各種スプリング分野に展開し、耐火・耐熱金物の並田機工などと合わせた産業用部材事業を新たな収益柱とする方針だ。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは前回予想(5月15日公表)を据え置いて売上高が前期比18.0%増の470億円、営業利益が同0.3%増の16億円、経常利益が同1.4%増の17億円、純利益が同28.1%減の9億円、配当予想が前期と同額の年間10円(期末一括)としている。M&A効果も寄与して大幅増収見込みだ。

 第2四半期累計(4月~9月)は、売上高が222億19百万円、営業利益が2億13百万円、経常利益が2億54百万円、純利益が2億83百万円だった。前年同期は持株会社移行前のため、日本カーリットの前年同期との比較で見ると16.0%増収、63.7%営業減益、60.3%経常減益、25.7%最終減益だった。

 新規連結子会社ののれん償却、新規事業の受託試験設備の償却負担、ボトリング事業での設備メンテナンスなどが影響して減益だったが、産業用部材事業での需要拡大、新製品上市や東洋発條工業の新規連結も寄与して増収だった。なお営業利益と経常利益は期初計画を下回ったが、売上高は期初計画を上回り、純利益は保土ヶ谷工場跡地譲渡による固定資産売却益2億74百万円が寄与して期初計画を上回った。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は、ボトリング事業のメンテナンス費用の発生等あり低水準だが、通期ベースでは緊急脱出用ガラス破壊器具付き自動車用緊急保安炎筒「ハイフレヤープラスピック」の拡販、新規事業の2次電池充放電受託試験の本格稼働、工業薬品のシェア拡大、光機能性材料の車載用・建材用熱線遮蔽フィルムの拡販、ボトリング事業での新商品受注、並田機工のごみ焼却場向け需要増加などで挽回が期待される。

 なお次なる100年企業への礎作りとして、18年度を最終年度とする新中期経営計画を15年2月に発表予定としている。M&A戦略も奏功して中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動き(12月9日付で貸借銘柄)を見ると、10月17日の直近安値518円から切り返し、12月8日の戻り高値630円まで上伸した。その後は利益確定売りなどで一旦反落したが、12月17日の565円から切り返しの動きを強めている。

 12月22日の終値587円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.7%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS922円98銭で算出)は0.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線近辺で下ヒゲを付けて反発の動きを強めている。下値を切り上げる形でありサポートラインを確認したようだ。0.6倍近辺の低PBRも評価材料として上値を試す展開だろう。6月の高値685円も視野に入りそうだ。

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