【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カナモトは12月9日決算発表予定、16年10月期の収益改善期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタルの大手である。国内ではM&Aも活用して業容を拡大し、長期ビジョンで成長エンジンと位置付ける海外展開も強化している。株価は9月安値から切り返して戻り歩調だ。14年9月高値後の調整が一巡して強基調へ転換したようだ。中期的に事業環境は良好であり、16年10月期の収益改善期待で出直りの動きを強めそうだ。12月9日に15年10月期の決算発表を予定している。

■建設機械レンタルの大手、M&Aも活用して業容拡大

 建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。

 北海道を地盤として東北、関東、中部、近畿、九州にも営業拠点網を拡充して全国展開するとともに、12年6月に道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化して業容を拡大している。

 15年7月には三郷営業所(埼玉県三郷市)と敦賀営業所(福井県敦賀市)を開設し、営業拠点数は177拠点、子会社・アライアンスを含めると359拠点となった。

 15年7月には有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得して子会社化した。同社は大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルを主力としている。非連結子会社となるため業績面への直接的な影響はないが、東京都内および関東地域におけるサービス拡大や営業基盤強化に繋がるとしている。

 15年8月には、理工系研究開発要員をメーカー等に派遣している連結子会社カナモトエンジニアリングの全株式を、技術者派遣会社のトラスト・テック<2154>に譲渡すると発表した。15年10月期連結業績への影響は軽微としている。

 11月25日には、名岐エンジニアリング(岐阜県)および東友エンジニアリング(東京都)で構成されるグループとの、一部株式取得を含む建設機械レンタル事業に関する業務提携を発表した。トンネル工事向け有力プラントメーカーの名岐エンジニアリング、およびトンネル工事向けレンタルに強みを持つ東友エンジニアリングとの連携により、増加傾向のトンネル工事への対応力を高める方針だ。

■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化

 14年9月発表の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示した。そして実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では、経営目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げた。

 海外では15年1月にインドネシアの現地法人が営業を開始した。新長期ビジョン「BULL55」で海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けており、インドネシアへの進出はその一環としている。

 そして15年6月にはベトナムにおける現地パートナー企業との合弁会社(当社出資比率80%)が営業開始し、15年7月にはタイにおける現地パートナー企業との合弁会社(当社出資比率49%)が営業開始した。

 なお環境保全設備や地下施設建設機械などの製造・レンタル事業を展開する子会社KGフローテクノは、14年4月に中国・上海に現地法人を設立している。

■公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造

 14年10月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)331億48百万円、第2四半期(2月~4月)310億64百万円、第3四半期(5月~7月)284億45百万円、第4四半期(8月~10月)328億98百万円で、営業利益は第1四半期56億51百万円、第2四半期44億21百万円、第3四半期27億41百万円、第4四半期36億41百万円だった。

 公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造だ。また14年10月期の配当性向は13.6%だった。ROEは13年10月期比3.5ポイント上昇して15.8%、自己資本比率は同1.4ポイント上昇して33.6%だった。

■15年10月期営業減益予想

 前期(15年10月期)の連結業績予想(9月4日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前々期比4.4%増の1310億30百万円、営業利益が同3.1%減の159億50百万円、経常利益が同2.6%減の156億60百万円、純利益が同0.4%増の93億40百万円としている。

 建設需要については、東北の震災復興工事関連や首都圏の開発工事関連などは好調だが、一部地区における公共投資の減少や地域間格差の顕在化などで、全体としてはやや弱含みだったようだ。また全国的な舗装工事の減少で一部の連結子会社が影響を受けたようだ。

 配当予想は10月19日に期末5円増額修正して、年間35円(第2四半期末15円、期末20円)としている。前々期と同額だが、前々期の年間35円には会社設立50周年記念配当15円(第2四半期末に5円、期末に10円)が含まれているため、普通配当ベースでは15円増配となる。予想配当性向は13.5%となる。

 第3四半期累計(11月~7月)の連結業績は売上高が前年同期比6.8%増の989億56百万円、営業利益が同2.5%減の124億98百万円、経常利益が同0.9%増の125億46百万円、純利益が同4.2%増の74億99百万円だった。

 建設関連事業は売上高が同5.7%増の918億13百万円、営業利益(連結調整前)が同3.6%減の119億92百万円だった。その他事業は売上高が同23.7%増の71億43百万円、営業利益が同65.7%増の2億27百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)363億27百万円、第2四半期(2月~4月)319億80百万円、第3四半期(5月~7月)306億49百万円、営業利益は第1四半期63億06百万円、第2四半期43億46百万円、第3四半期18億46百万円だった。

 なお通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.5%、営業利益78.4%、経常利益80.1%、純利益80.3%と高水準の形だが、第1四半期の構成比が高い収益構造であり、第3四半期累計の業績および今後の見通しを踏まえて営業減益予想としている。

■中期的に事業環境良好で16年10月期の収益改善期待

 国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。中期的に良好な事業環境に変化はなく、建機レンタル需要は高水準で推移することが予想される。

 前期(15年10月期)は営業減益予想だが、今期(16年10月期)は収益改善が期待され、中期的には海外展開強化も寄与して収益拡大基調だろう。

■株価は14年9月高値後の調整が一巡して戻り歩調

 株価の動き(15年8月JPX日経インデックス400構成銘柄に選定)を見ると、9月の年初来安値2082円から切り返して戻り歩調の展開だ。12月3日には戻り高値となる2907円まで上伸した。

 12月4日の終値2855円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS259円16銭で算出)は11倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は1.2%近辺、そして前々期実績の連結PBR(前々期実績の連結BPS1758円24銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約1030億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。14年9月高値後の調整が一巡して強基調へ転換したようだ。中期的に事業環境は良好であり、16年10月期の収益改善期待で出直りの動きを強めそうだ。

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