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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ファンデリーはIPO後の調整が一巡して戻り歩調、健康食宅配事業の中期成長力を評価
ファンデリー<3137>(東マ)は健康食宅配事業を主力としてヘルスケア総合企業を目指している。一人暮らし高齢者や生活習慣病の増加も背景に中期成長期待は強い。株価は15年6月IPO後の調整が一巡して戻り歩調だ。16年6月期増収増益予想や中期成長力を評価して6月の上場来高値圏を目指す展開だろう。
■健康食宅配のMFD事業が主力
00年9月設立で、01年4月栄養士による健康食宅配サービス「カウンセリングデリバリー」を開始、15年6月東証マザーズに新規上場した。社名ファンデリーの由来は「FUN(面白さ・楽しさ・感動)をDELIVERY(お届けする)」である。
企業理念には「一食二医社会の実現」を掲げている。健康増進を図るためには第一に「食事コントロール」があり、それでも困難なときに「医療」を行うことが望ましく、医療費削減に貢献するためにも「一食二医社会の実現」を目指すとしている。
主力事業は健康食を宅配するMFD(Medical Food Delivery)事業である。健康食通販カタログを医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から電話・FAX・WEBを通じて注文を受け、健康食(冷凍弁当)を宅配する。定期コースとして、当社の管理栄養士・栄養士が顧客の疾病、制限数値、嗜好に合わせてメニューを選び、定期的に届けるサービス「栄養士おまかせ定期便」も提供している。なお定期コースの売上構成比は5割強である。
健康食通販カタログは医療機関・保健所・介護施設向け「ミールタイム」や、調剤薬局向け「ミールタイムファーマ」を発行し、健康食通販サイト「ミールタイム」も運営している。09年には介護食系通販カタログ「ミールタイムケア」も創刊した。
通販カタログ「ミールタイム」は年4回、通販カタログ「ミールタイムファーマ」は年2回発刊し、毎号半分程度のメニューを変更して旬の食材を提供する。なお「ミールタイム」発行部数は13年春号40万部、14年春号50万部、15年春号75万部と増加基調である。
また健康食宅配サービスから派生した事業として、健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などのマーケティング事業も展開し、収益源の多様化を推進している。
■専門性の高い栄養士によるカウンセリングや宅配サービスに強み
当社の健康食宅配サービスは、従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。
このため栄養士が開発した健康食メニュー、栄養士によるカウンセリング宅配サービス、さらに栄養士が電話対応する注文・相談・カウンセリングを特徴としている。なお15年7月1日現在、従業員50名のうち女性40名全員が栄養士である。
健康食通販カタログを配布する病院や調剤薬局などの紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得と、専門性の高い栄養士によって、食事制限が必要な方に対して「ヘルシー食」「ヘルシー食多め」「たんぱく質調整食」「ケア食」など多様な健康食を提案できることが強みだ。担当栄養士に対する信頼感でリピート率も上昇しているようだ。
15年6月末時点の紹介ネットワーク数は医療機関1万3663箇所、保健所・介護施設等1433箇所、調剤薬局等3957箇所の合計1万9053箇所(15年3月末比1133箇所増加)である。また15年3月末現在の顧客数は152千人(14年3月末比19千人増加)である。
なお15年11月には、在宅医療を必要とする患者等の食事療法をサポートするために、医療機関に所属する管理栄養士が作る健康食レシピサイト「はちまるレシピ」を開設した。
■16年3月期第2四半期累計はカタログ費増加などで減益だが純利益は想定超
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が13億06百万円、営業利益が1億77百万円、経常利益が1億73百万円、純利益が1億16百万円だった。売上高と営業利益は計画をやや下回ったが、経常利益はほぼ計画水準、純利益は計画を上回った。
前年同期との比較で見ると、売上高は2.9%増加したが、利益面では営業利益が13.9%減益、経常利益が16.0%減益、純利益が12.1%減益だった。売上面ではMFD事業が「栄養士おまかせ定期便」への移行などで順調に推移し、売上総利益も6.5%増加した。しかしカタログ発行部数の増加などで販管費が15.1%増加して減益だった。売上総利益率は56.7%で1.9ポイント上昇、販管費比率は43.1%で4.6ポイント上昇した。
セグメント別に見ると、MFD事業は売上高が前年同期比5.6%増の12億21百万円、営業利益(連結調整前)が同18.9%増の2億48百万円だった。売上高が計画をやや下回ったが概ね順調に推移した。マーケティング事業は売上高が同25.2%減の84百万円、営業利益が同31.0%減の56百万円だった。一部案件に実施延期が発生したことが影響した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)6億58百万円、第2四半期(7月~9月)6億48百万円で、営業利益は第1四半期1億05百万円、第2四半期72百万円だった。
なおMFD事業の主要指標を見ると、新規会員数は第1四半期3873人、第2四半期3850人、定期コース会員数は第1四半期6252人、第2四半期6185人、そして1件あたり購入単価は第1四半期6873円、第2四半期6854円だった。定期コースの売上構成比は第1四半期54.9%、第2四半期55.2%だった。
■16年3月期通期は増収増益予想
今期(16年6月期)通期の非連結業績予想は前回予想(6月25日公表)を据え置いて、売上高が前期比10.1%増の29億39百万、営業利益が同6.7%増の4億68百万円、経常利益が同3.2%増の4億51百万円、純利益が同4.6%増の2億71百万円としている。配当予想については無配としている。主力のMFD事業が順調に推移し、事業拡大に向けた人件費の増加などを吸収して増収増益予想だ。
セグメント別売上高の計画は、MFD事業が同10.3%増の26億37百万円、マーケティング事業が同8.7%増の3億01百万円としている。MFD事業では受注件数が同12.2%増の386千件、16年3月末時点の紹介ネットワーク数が同14.4%程度増加、会員数が同12.1%程度増加、平均単価が同横ばいを想定している。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.5%、営業利益が38.0%、経常利益が38.5%、純利益が42.8%である。やや低水準の形だが、主力のMFD事業が概ね順調に推移し、マーケティング事業は下期の構成比が高い傾向がある。そして期初時点で下期偏重の計画であり、通期ベースでは増収増益が期待される。
■一人暮らし高齢者や生活習慣病の増加なども背景に中期成長期待
中期成長に向けた戦略として、紹介ネットワークの拡大・深耕、定期コース顧客の獲得、コラボレーションによる商品付加価値の向上、マーケティング事業の拡大を掲げ、ヘルスケア総合企業を目指している。
紹介ネットワークに関しては、開拓余地の大きい全国10万箇所強の一般病院・診療所向けに拡大を推進するとともに、既存紹介ネットワークにおいても栄養士の交流会「輝く栄養士の会」運営などを通じて、当社の栄養士と医療機関・保健所・介護施設等の栄養士とのコミュニケーション向上を図る。管理栄養士・栄養士のコミュニティサイト「Foodish(フーディッシュ)」も運営している。
定期コース顧客の獲得では「栄養士おまかせ定期便」の拡充などの施策によってリピーターの獲得を推進する。リピーターの獲得によって安定的な売上・利益の拡大に繋げる。
コラボレーションによる商品付加価値の向上では、食品メーカー・協会や病院栄養士とのコラボレーションを強化する。15年9月には味の素冷凍食品とのコラボレーションで、たんぱく質を約39%カットした「ミールタイム焼餃子」を発売した。
マーケティング事業の拡大では、健康食レシピ情報サイトに食品メーカー等の商品を使用した健康食レシピを公開するなど、健康食レシピ情報サイトも活用して事業を拡大する。
高齢者数の増加、特に一人暮らし高齢者の増加、さらに生活習慣病患者や食事制限対象者の増加を背景に、健康食宅配市場は拡大基調が予想される。中期的に収益拡大基調だろう。
■株価はIPO後の調整が一巡して戻り歩調
株価の動きを見ると、8月の上場来安値573円から反発し、さらに900円近辺でのモミ合いから上放れの動きを強めている。12月1日には戻り高値となる1100円まで上伸した。IPO後の調整が一巡して戻り歩調だ。
12月4日の終値970円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS43円45銭で算出)は22~23倍近辺、実績PBR(16年3月期第1四半期末実績のBPS190円97銭で算出)は5.1倍近辺である。時価総額は約61億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が上向きに転じてサポートラインの形となった。強基調への転換を確認した形だ。16年3月期増収増益予想や中期成長力を評価して6月のIPO直後の上場来高値圏を目指す展開だろう。