2016年1月1日から「金融所得課税の一本化」がスタートする。これによって、今までは損益通算が出来ず、かつ税体系も異なるものが適用されていた株式等と公社債等の税制が一本化される。
何が変わるのかというと、これまで公社債の譲渡益は非課税扱いだったのが、課税対象になる。一方で、株式等に生じた損失との間で損益通算が可能になる。加えて公社債等も株式等と同様、特定口座と一般口座に分かれ、譲渡益については、一般口座の場合は確定申告が必要になり、特定口座の場合は「源泉徴収あり」を選ぶことによって確定申告などの面倒な手続きを省くことができる。
このような、細かい手続きについてはともかく、今回の税改正によって最も大きな影響を受けるのは、恐らく外貨MMFの保有者だろう。
これまで外貨MMFに発生した分配金については、その20が源泉分離課税されていた。この点については、2016年1月からの金融所得課税の一本化がスタートして以降も何ら変わることはなく、同率で源泉分離課税される。本来は復興特別税がかかり、20.315%が正式な税率だが、以下の計算を簡単にするため、ここでは20%に丸めておく。
さて、外貨MMFを保有している個人にとって一番の問題は、外貨MMFの為替差益部分だ。これまで非課税扱いだったが、2016年1月からは20%の税金が差し引かれるようになる。
これは結構大きな話だ。というのも、ここ3年間、円安が進んだことを考えると、かなり為替差益が溜まっている人が多いと思われるからだ。
たとえば1ドル=80円の時に100万円で外貨MMFを買ったとしよう。ドルに換算して1万2500ドル分になる。そして現在の為替レートが1ドル=120円前後だから、円に換算した評価額は150万円にもなる。つまり50万円の為替差益が生じているということだ。これに対して20%が課税されると、税額は10万円にもなる。
ところが、年内に解約すれば、10万円の税金は取られずに済む。純粋にリターンを考えれば、10万円の差はかなり大きい。
そこで思案のしどころになるが、来年以降、税金分を差し引いて、なおかつ為替差益に課税されていない現状と同じ50万円の為替差益が得られるようにするには、1ドル=120円から、さらにいくら円安になる必要があるのかを考えてみる。20%課税後に50万円の為替差益が残るためには、62万5000円の利益が必要になる。円建ての評価額162万5000円になった時の為替レートはいくらになるのかというと、162万5000円をドル建ての元本額である1万2500ドルで割れば求められる。1ドル=130円だ。
1ドル=130円を超える円安になると思えば保有すれば良いし、さすがに130円は無理だろうと思うなら、年内に解約して、一旦利益確定をした方が良いだろう。(鈴木雅光=証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)