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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】TACは調整の最終局面、収益改善基調を評価して切り返し
- 2014/12/25 07:52
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
「資格の学校」を運営するTAC<4319>(東1)の株価は、11月の年初来安値218円からの反発力が鈍く、安値圏220円~230円近辺で推移している。ただし13年のモミ合いレンジに到達して調整のほぼ最終局面のようだ。今期(15年3月期)利益増額の可能性や来期(16年3月期)の収益改善基調を評価して切り返し展開だろう。
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営し、法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。
財務・会計、経営・税務、法律など既存事業の市場が縮小傾向のため、中期成長に向けてオンライン教育(Webなどの通信系講座)の活用や、教員、医療、介護、語学など新領域への事業展開を強化している。
13年12月に増進会出版社(子会社のZ会が通信教育事業などを展開)と資本業務提携し、当社の教室運営ノウハウや資格系コンテンツ開発力と増進会出版社の通信教育ノウハウや教養系コンテンツ開発力を融合させたソリューションの提供を目指している。14年8月には増進会出版社が第2位株主となって資本関係を強化した。
14年6月には、レセプト点検・整理業務を中心に医療機関事務分野の人材サービスを展開するクボ医療(兵庫県加古郡)と、医療事務に関する労働者派遣事業・レセプト作成請負業務を展開する医療事務スタッフ関西(兵庫県神戸市)を子会社化した。医療事務講座への進出、医療事務関連の人材サービス事業の全国展開を推進する。
11月にはトーハン・コンサルティングとの業務提携および介護系資格取得支援事業開始を発表した。トーハン・コンサルティングが展開する介護系資格取得教室を、当社の主要校舎で「介護教室ケアマイスター TAC教室」の名称で15年1月から開講する。
12月には子会社TAC医療事務スタッフを設立した。クボ医療および医療事務スタッフ関西を子会社化し、自ら育成した医療機関系人材を幅広い医療機関に提供することが可能になったため、新たに子会社を設立して関東エリアでも医療事務スタッフ派遣事業や診療報酬請求事務請負事業を展開する。
なお当社の四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係で季節変動の特徴がある。公認会計士・税理士講座は第2四半期(7月~9月)と第3四半期(10月~12月)が翌年受験のための申込時期となるため、第2四半期と第3四半期は現金売上および売掛金計上が増加する。しかし受講期間に応じて前受金に振り替えられる一方で、経費は毎四半期一定額が計上されるため売上総利益率が低下する。そして第4四半期(1月~3月)と第1四半期(4月~6月)は、前受金が各月の売上高に振り替えられるため売上総利益率が上昇する傾向が強い。
今期(15年3月期)の連結業績見通しは前回予想(5月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比1.1%減の203億円、営業利益が同1.5%増の10億50百万円、経常利益が同16.9%減の10億80百万円、純利益が同24.7%減の6億15百万円、配当予想が前期と同額の年間1円(期末一括)としている。
第2四半期累計(4月~9月)は消費増税前駆け込み申込の反動などが影響して前年同期比6.7%減収となり、同47.1%営業減益、同40.1%経常減益、同41.3%最終減益だった。受講者数は個人受講者数が同6.6%減の8万4216人、法人受講者数が同7.3%減の3万5300人、合計が同6.8%減の11万9516人だった。
通期ベースでも消費増税前駆け込み申込の反動影響で減収見通しとして、投資有価証券運用益一巡なども影響して経常利益と純利益は減益見通しとしている。通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が51.0%、営業利益が75.1%、経常利益が86.4%、純利益が93.3%と高水準だったが、第3四半期(10月~12月)以降に公認会計士試験や税理士試験の合格発表後の講座申込状況を見極める必要があるとして、通期会社見通しを据え置いている。
四半期変動要因の影響もあるため現時点での判断は難しいが、消費増税の影響一巡、新講座の開講、人件費の抑制などの効果を考慮すれば通期利益見通し増額の可能性が高いだろう。
今後の重点取り組みとして、新講座(教員試験対策講座、建築士講座など)の開発と収益化、医療・介護系分野の講座や人材ビジネスへの進出と拡大、増進会出版社との共同事業の推進、連結子会社オンラインスクールによる新たな資格学習者層の開拓・囲い込み、事業構造改善やコスト削減の継続的実施を推進する方針だ。
来期(16年3月期)は、増進会出版社との業務提携効果、新講座の本格寄与などが期待される。本社ビル取得によって年間1億70百万円程度の営業損益改善効果が見込まれることもプラス要因だ。収益は改善基調だろう。
株価の動きを見ると、11月21日の年初来安値218円からの反発力が鈍く、安値圏220円~230円近辺で推移している。ただし11月の年初来安値を割り込むことなく調整のほぼ最終局面のようだ。
12月24日の終値222円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS33円24銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS224円46銭で算出)は1.0倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、13年のモミ合いレンジに到達して調整のほぼ最終局面だろう。今期業績増額の可能性や来期以降の収益改善基調を評価して切り返し展開だろう。