【アナリスト水田雅展の銘柄分析】松田産業は戻り歩調で3月高値に接近、連続増配や自己株式取得の還元姿勢を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 松田産業<7456>(東1)は貴金属リサイクル事業を主力として農林水産品販売事業も展開している。株価は戻り歩調の展開だ。12月8日には戻り高値1534円まで上伸して3月の年初来高値1635円に接近してきた。低PER、低PBRで指標面の割安感は強い。16年3月期連続増配や自己株式取得といった積極還元姿勢を評価して上値を試す展開だろう。

■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開

 貴金属リサイクルや産業廃棄物処理の貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。

 貴金属リサイクルでは、半導体・電子材料部材・化成品などの貴金属製品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属(金・プラチナ・パラジウムなど)をリサイクルする。

 産業廃棄物処理では、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。

 貴金属関連事業では「東アジアNO.1リファイナー」を目指し、国内外の拠点拡充、貴金属原料の確保と化成品などの製品販売強化、および製品・技術開発強化を推進している。海外は中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開し、ベトナムでは貴金属製錬工場の建設を進めている。

 食品関連事業では、すりみ・エビ・貝類などの水産品、鶏卵・鶏肉・ポーク・ビーフなどの畜産品、乾燥野菜・冷凍野菜などの農産品を取り扱っている。取扱商品の豊富さとグローバルな調達ネットワークが強みだ。海外は中国、タイに拠点展開している。

■エレクトロニクス業界の生産動向や貴金属・食品市況が影響する収益構造

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)429億40百万円、第2四半期(7月~9月)446億83百万円、第3四半期(10月~12月)469億16百万円、第4四半期(1月~3月)449億84百万円、営業利益は第1四半期9億31百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期16億86百万円、第4四半期17億14百万円だった。

 半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向や、貴金属および食品市況の影響を受ける収益構造である。また15年3月期のROEは14年3月期比0.1ポイント低下して6.8%、自己資本比率は同1.8ポイント低下して69.7%、配当性向は19.9%だった。

■16年3月期第2四半期累計は営業増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.6%減の853億66百万円で、営業利益が同1.9%増の20億47百万円、経常利益が同1.7%増の23億55百万円、純利益が同0.6%増の15億69百万円だった。

 売上総利益率は9.5%で同0.7ポイント上昇、販管費比率は7.1%で同0.6ポイント上昇した。営業外では持分法投資利益が増加(前期2億49百万円、今期3億27百万円)した。

 セグメント別に見ると、貴金属関連事業は売上高が同7.9%減の564億11百万円、営業利益が同6.3%増の15億18百万円だった。貴金属リサイクルおよび産業廃棄物処理の取扱数量は増加したが、貴金属製品および電子材料等の販売数量が減少し、金を除いた価格下落も影響して減収だった。

 食品関連事業は売上高が同9.7%増の289億90百万円、営業利益が同9.0%減の5億29百万円だった。水産品、畜産品、農産品とも販売数量が増加し、価格上昇も寄与して増収だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)450億14百万円、第2四半期(7月~9月)403億52百万円、営業利益は第1四半期9億68百万円、第2四半期10億79百万円だった。

■16年3月期業績予想を減額修正だが連続増配予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(11月13日に減額修正)は、売上高が前期比1.9%増の1830億円、営業利益が同15.0%減の46億円、経常利益が同12.6%減の51億円、純利益が同1.7%増の34億円としている。第2四半期累計が計画を下回り、現在の市場環境ならびに貴金属市況が弱含みであることを考慮した。

 配当予想は前回予想(5月11日公表)を据え置き、普通配当26円に株式公開20周年記念配当2円を加えて、同3円増配の年間28円(第2四半期末14円、期末14円)としている。連続増配で予想配当性向は21.9%となる。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が46.7%、営業利益が44.5%、経常利益が46.2%、純利益が46.2%である。やや低水準の形だが、第3四半期(10月~12月)以降の挽回に期待したい。

■株価は自己株式取得も好感して戻り歩調

 11月13日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限7万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間15年11月16日~16年1月15日)については、11月30日時点での取得株式総数が3万5700株、取得価額総額が5349万1900円となった。

 株価の動き(15年11月16日付で貸借銘柄)を見ると、9月の直近安値圏1200円台から切り返し、自己株式取得も好感して戻り歩調の展開だ。そして12月8日には戻り高値となる1534円まで上伸し、3月の年初来高値1635円に接近してきた。

 12月9日の終値1495円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS128円01銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1923円86銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約432億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスが接近して先高感を強めている。低PER、低PBRで指標面の割安感は強い。16年3月期連続増配や自己株式取得といった積極還元姿勢を評価して上値を試す展開だろう。

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