【株式評論家の視点】日本郵政の中期経営計画に注目、グループで保有する土地は1.6兆円

株式評論家の視点

 日本郵政<6178>(東1)は、11月4日に東証1部市場に新規上場。同社は日本郵政グループの持ち株会社で、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を主な事業主体として、郵便・国内物流事業、国際物流事業、金融窓口事業、銀行業、生命保険業などを展開している。

 日本郵政グループは、2015年度から2017年度を計画期間とする「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」を策定。現在、グループが直面している「更なる収益性の追求」、「生産性の向上」、「上場企業としての企業統治と利益還元」という新たな3つの課題を克服するため、グループが一丸となって、郵便・物流事業の反転攻勢や郵便局ネットワークの活性化などの「事業の成長・発展のための戦略(5つの事業戦略)」、ITの活用や施設・設備への投資などの「ネットワークの拡大・機能の進化を支えるグループ戦略(5つのグループ戦略)」に取り組み、将来にわたって「トータル生活サポート企業」として発展することを目指している。

 今2016年3月期・第2四半期業績実績は、経常収益が7兆億0350億0100万円(前年同期比1.0%減)、経常利益が4733億7800万円(同8.8%減)、純利益が2133億4400万円(同1.7%減)に着地。経常利益は微減益だが、年計画に対する進捗率は55.0%と順調に推移している。

 第2四半期の郵便・物流事業セグメント(日本郵便連結)においては、ゆうパックの取扱物数は、eコマース市場の拡大と中小口営業活動の強化により、3期連続で増加。前年度後半からの中国宛てのEMS・国際小包など国際郵便の増加が継続。そのほか、スマートレター等の新サービス拡充などに取り組んだことにより、営業収益は前中間期比353億円の増加。ゆうパックやEMSなどの取扱物数増の中、人件費単価の上昇等の増加があったものの、集配業務の生産性の向上等の取組により費用の増加を抑制し、営業損益は前中間期比32億円改善した。

 同国際物流事業セグメント(日本郵便連結)においては、国際物流事業を担うトール社が、豪州を中心に強固な事業基盤を有し、アジア太平洋地域におけるフォワーディング及びコントラクト物流(3PL)を展開。グループとしてはトール社を国際物流事業のプラットフォームと位置付け、同社のこれまでの事業経験や実績を最大限活用することにより、国際物流事業をグループの成長の柱として展開している。7月からの連結に反映。JPグループ子会社化前であった前年同期との比較では、豪州アジア諸国における厳しい経済環境の下、営業収益・営業利益ともに前年同期並みの水準を確保した。

 同金融窓口事業セグメント(日本郵便連結)においては、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険と連携した営業施策の展開により、ゆうちょの営業・事務報奨手数料やかんぽの新契約手数料が増加したことから、金融受託業務の手数料が増加。加えて、物販事業におけるカタログ販売の増加、不動産事業の展開(中野弥生町及び福岡薬院分譲販売等)による収益の増加や7月からのがん保険取扱局の2万局への拡大などによる提携金融サービスの拡充もあり、営業収益は前中間期比371億円の増加。給与手当の増加や法定福利費の料率上昇及び物販事業や不動産事業の収益増加に伴う費用増などにより前中間期比291億円増となったが、営業利益は前中間期比79億円増加した。

 同銀行業(ゆうちょ銀行)においては、業務粗利益は、前中間期比619億円減少の7594億円。資金利益は前中間期比で減少、役務取引等利益、その他業務利益は前中間期比で増加。経費は、預金保険料率引下げを主因に、前中間期比334億円減少の5316億円。歴史的な低金利が継続する厳しい経営環境下、業務純益は前中間期比284億円減少の2278億円、経常利益は前中間期比213億円減少の2516億円。中間純利益は1715億円、前中間期比101億円の減益。通期業績予想の当期純利益3200億円に対し、53.6%の進捗と順調に推移した。

 同生命保険業(かんぽ生命)においては、経常利益は、前中間期比447億円減の2187億円。経常利益に特別損益を加減し、契約者配当準備金繰入額及び法人税等を差し引いた中間純利益は、前中間期比23億円減の485億円。なお、中間純利益は通期予想比の57.8%と順調に推移した。

 通期業績予想は、経常収益が14兆2100億円(前年同期比0.3%減)、経常利益が8600億円(同22.9%減)、純利益が3700億円(同23.3%減)と連続最高益更新を見込む。年間配当は18円(同2円増)を予定している。

 株価は、11月4日に公開価格1400円を16.5%上回る初値1631円をつけた後、12月2日には発行済み株式数(自社株を除く)の8.52%にあたる3億8330万6000株(金額で7309億円)を上限に、3日朝の東証の自己株式立会外買付取引「ToSTNeT-3」で自社株買い(買い付け価格は2日終値の1907円)を実施すると発表したことを好感し、同7日に上場来の高値1999円と上昇している。第2四半期業績は年間計画に対して順調に推移しており、通期業績予想は達成できる見通し。同グループが、東京と札幌の駅前ビルに続き、11月11日に名古屋駅前の再開発ビルが竣工と不動産開発を進めていることが特に注目される。郵政グループが保有する土地は総額1・5兆円で、上場企業では6番目の規模と言われており、将来的に収益に貢献するとの期待が大きい。2000円大台を前にモミ合っているが、押し目は注目されそうだ。(株式評論家&アナリスト・信濃川)

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