【経営者の言葉】川崎近海汽船の石井繁礼社長

【川崎近海汽船の石井繁礼(いしい・しげのり)社長】

外航と内航の両方を持っていることが強み

 川崎近海汽船<9179>(東2・売買単位1000株)の2016年3月期は、アジア新興国経済の鈍化により売上は6.4%減の430億円の見通しだが、燃料価格の下落で営業利益は12.2%増の26億5000万円、1株利益59.5円、配当年11円(前期年10円)の見通し。350円台の株価には割安感が強い。

 石井繁礼社長は、「当社グループの強みは、外航(近海部門)と内航の両方を持っていることです。両方を持っていることのメリットは、内航が安定しているため、グローバル経済が拡大すれば一気に(売上の)拡大を図ることができることです」と強調する。

中国経済減速で外航厳しいが、得意の内航でカバー、今期2ケタ増益

 ただ、足元では、近海部門が予想以上に厳しいという。「リ-マンショックのあと中国経済の上昇で(海運の)市況が上がり、ここで、中国などを中心に新しい船を多く造ったことが、その後の中国経済の減速で大きく影響している。今はリーマンショックのときより厳しい状況で、あと2~3年は我慢が必要だろうと思っています。私が社長に就任したときには内航と外航の売上比率を半々(現在は内航が約6割、外航約4割)にしたいと思っていましたが、しばらくは難しそうです」(石井社長)ということだ。

 もちろん、手をこまねいているわけではない。新たに、オフショア支援船業務を展開する。日本近海における海洋資源の探査、開発、掘削を支援するもので2016年2月にオフショア支援船を竣工の予定。また、得意の内航フェリーにおいて、長距離トラックドライバー不足問題とCO2問題を追い風に海運輸送の強さを発揮していく。

 長距離運転に対する規制が厳しくなっていることに、「最近の若いドライバーは、家庭重視の意識が強く長距離を敬遠するようです。今後ますます、荷物は陸(トラック輸送)から海(海上輸送)へシフトする傾向が強まるとみています。受け皿としてフェリーの積載台数を増やす計画です」(石井社長)という。

 関東と北海道・東北を結ぶフェリー航路では圧倒的な強さを誇っており、さらに、宮古港(岩手)と室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を計画している。また、清水港(静岡県)と大分港の間にRORO船(高速船)による新規航路を開設する。20時間のスピード運行を武器に農水産物等の輸送で優位性を発揮する。

 石井繁礼社長は強調する。「(外航を止めて)内航に特化したらどうだという指摘もありますが、外航を持っていることによる利点は優秀な人材が集まることです」という。今は停滞気味だがTPPなど経済のグローバル化という方向には変わりはないということのようだ。

株価は利回り、PERなどかなりの割安水準

 株価は年初来高値が440円(1月8日)、同安値は314円(9月7日)、12月11日の終値は353円。利回りは3.1%、PERは5.9倍。中国など新興国経済減速の影響を受けてはいるが内航部門の好調で業績がよいことから見直されてよい内容といえる。

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