【アナリスト水田雅展の銘柄分析】うかいはモミ合い煮詰まり感、文化事業は火山活動の影響だが飲食事業は順調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 うかい<7621>(JQS)は飲食事業(高級和食・洋食料理店)を主力として、文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。文化事業が箱根大涌谷周辺の火山活動活発化の影響を受けて16年3月期業績予想を減額修正したが、飲食事業は順調で株価への影響は限定的だ。そしてモミ合い煮詰まり感を強めている。16年3月期減額修正の織り込みが完了して上放れの展開が期待される。

■高級和食・洋食料理店チェーンを展開

 飲食事業(高級和食・洋食料理店)を主力として、文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。

 新たな成長ステージに向けた戦略として、商圏1万キロに向けたブランド構築、新業態の定着と新規出店、サービス向上のための人材育成、製菓工房「アトリエうかい」の本格稼働、和食店のお土産品強化、物販における販路開拓、海外へのブランド発信と海外企業との業務提携などを推進している。

 14年4月には、国内で4年ぶりの新店となる新業態の割烹料理店「銀座kappou ukai(呼称:割烹うかい)」をオープンした。また15年4月には、東京八王子市に焼菓子製造に特化した「アトリエうかい八王子工房」を新設し、品質向上・量産可能な体制を整えた。

 15年8月には、創業50周年記念本「うかい~その料理表現と味覚世界~」の発刊を発表した。15年9月1日~16年3月31日の期間限定でFAX・メールによる通信販売を行う。

 なお15年9月24日~15年12月25日の期間限定で、洋菓子店「アトリエうかい」をJR東日本品川駅構内の商業施設「エキュート品川」に出店している。これまで「アトリエうかい」店舗とグループ洋食各店舗で商品を販売してきたが、神奈川県横浜市の直営店舗以外で初めての、また商業施設で初めての出店である。

 また11月26日には、全日本空輸(ANA)とのコラボレーションで、ANAの国際線(台湾発日本路線)ビジネスクラスの機内食サービスに「とうふ屋うかい」監修のスペシャルメニューを、16年1月・4月・10月の期間限定で提供すると発表した。

■中期経営計画で18年3月期営業利益6億46百万円目標

 中長期経営計画では18年3月期売上高129億51百万円、営業利益6億46百万円を目標値として掲げ、ブランド認知度の向上、圏央道相模原愛川IC~高尾山IC間の開通に伴う商圏拡大などに取り組んでいる。訪日外国人旅行客のインバウンド需要や和食ブームも追い風となる。

 海外については13年5月に、台湾・高雄市FIHリージェントグループホテル内レストランのコンサルティング契約を締結して海外初出店を決定した。16年オープンに向けて準備を進めている。

■第3四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)30億66百万円、第2四半期(7月~9月)29億30百万円、第3四半期(10月~12月)34億99百万円、第4四半期(1月~3月)27億39百万円で、営業利益は第1四半期84百万円、第2四半期1億23百万円の赤字、第3四半期3億80百万円、第4四半期85百万円の赤字だった。

 第3四半期の構成比が高い収益構造だ。また15年3月期のROEは14年3月期比5.4ポイント低下して0.6%、自己資本比率は同0.5ポイント上昇して41.7%、配当性向は273.7%だった。15年3月期末の有利子負債売上高比率は31.6%まで改善して目標を達成した。

■文化事業が箱根大涌谷周辺火山活動の影響

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比1.5%減の59億07百万円、営業利益が10百万円の赤字(前年同期は39百万円の赤字)、経常利益が38百万円の赤字(同90百万円の赤字)、純利益が49百万円の赤字(同84百万円の赤字)だった。

 飲食事業はインバウンド需要や、14年5月開業の「銀座kappou ukai」の認知度向上も寄与して順調に推移したが、文化事業が箱根大涌谷周辺の火山活動活発化の影響で箱根ガラスの森の来館客数が大幅に減少し、売上高、利益とも期初計画を下回った。

 ただし前年同期との比較では、販管費抑制が寄与して各利益とも赤字幅が縮小した。売上総利益率は53.0%で同0.1ポイント低下したが、販管費比率は53.1%で同0.6ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、飲食事業は売上高が同1.4%増の54億73百万円で、営業利益(連結調整前)が同11.5%増の6億27百万円、文化事業は売上高が同27.5%減の4億33百万円で、営業利益が73百万円の赤字(前年同期は1百万円の赤字)だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)30億36百万円、第2四半期(7月~9月)28億71百万円、営業利益は第1四半期67百万円、第2四半期77百万円の赤字だった。

■16年3月期通期も減額だが飲食事業は順調

 今期(16年3月期)通期の非連結業績予想(11月6日に減額修正)は、売上高が前期比1.6%減の120億38百万円で、営業利益が同29.5%減の1億80百万円、経常利益が同34.3%減1億22百万円、純利益が同39.0%増の39百万円としている。

 第2四半期累計の実績や箱根ガラスの森の減収状況を勘案して売上高、利益とも減額修正した。なお純利益は繰延税金資産取崩に伴う法人税等調整額が一巡して増益予想だ。配当予想は前回予想(5月19日公表)を据え置いて前期と同額の年間15円(期末一括)としている。予想配当性向は197.4%となる。

 箱根大涌谷周辺の火山活動活発化の影響で通期予想を減額修正し、通期会社予想に対する第2四半期累計の利益進捗率も低水準だが、第3四半期の構成比が高い収益構造であり、期初時点で下期偏重の計画だった。また飲食事業は順調であり、文化事業の大幅減収は火山活動活発化という特殊要因の影響だ。

 飲食事業の月次売上高(前年比、アトリエうかい店頭販売含む)の動向を見ると、全店および既存店とも15年4月98.4%、5月106.2%、6月97.3%、7月100.2%、8月101.7%、9月104.4%、10月103.7%、11月97.4%と概ね好調に推移している。11月の客単価は7ヶ月連続の前年比プラスとなった。

 飲食事業は既存店売上が順調であり、新店「銀座kappou ukai」の収益寄与本格化やインバウンド需要取り込みも期待される。利益面では前期減益要因だった新店「銀座kappou ukai」や「アトリエうかい八王子工房」の開業費、創業50周年記念事業費、箱根ガラスの森特別企画展開催に係る販促費用が一巡する。全体業績も下期の挽回が期待される。

■株主優待の内容を一部変更

 株主優待制度については14年5月に実施時期変更を発表し、毎年3月期末から毎年9月中間期末に変更して14年9月末から実施した。

 また11月6日に優待内容の一部変更を発表した。変更前の「株主様お食事優待券」を変更後の「株主様ご優待券」として、利用可能店舗に「アトリエうかい」を追加し、優待内容を「利用可能店舗におけるご飲食代のご優待」から「利用可能店舗におけるご利用代のご優待券」に変更した。15年9月30日現在の株主から実施する。

 この結果、変更後の優待内容は、(1)100株以上所有株主に対して箱根ガラスの森株主様限定お食事付ご入場招待券5枚(1万5000円相当)、(2)所有株式数に応じた「株主様ご優待券」または「うかい特選肉」となる。

■株価はモミ合い煮詰まり感

 株価の動きを見ると、株主優待の権利落ち後は概ね2600円~2700円近辺の小幅レンジでモミ合う展開だ。ただし16年3月期業績予想の減額修正に対するネガティブ反応は見られない。影響は限定的のようだ。そしてモミ合い煮詰まり感を強めている。

 12月11日の終値2635円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS7円60銭で算出)は347倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は0.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS925円25銭で算出)は2.8倍近辺である。時価総額は約138億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、2600円近辺が下値支持線の形となってモミ合い煮詰まり感を強めている。16年3月期業績予想減額修正の織り込みが完了してモミ合い上放れの動きが期待される。

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