【アナリスト水田雅展の銘柄分析】鉄人化計画は調整の最終局面、16年8月期増益予想で収益改善基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 鉄人化計画<2404>(東2)はカラオケルーム運営を主力としている。不採算店舗閉鎖や不採算事業整理を進めて収益改善基調である。そして新規サービス企画も強化している。株価は再び水準を切り下げたが、10月の直近安値に接近して調整の最終局面のようだ。16年8月期増益予想で収益改善基調である。調整が一巡して反発のタイミングだろう。

■カラオケルーム運営事業が主力

 首都圏中心に展開する「カラオケの鉄人」ブランドのカラオケルーム運営事業を主力としている。さらに「カラオケの鉄人モバイル(カラ鉄モバイル)」サイト運営やコンテンツ配信ASPサービスのCP事業、ビリヤード・ダーツ遊技場運営、まんが喫茶(複合カフェ)運営、音響設備販売、海外事業(グアムのエンターテイメントレストラン運営)も展開している。

 カラオケルーム運営事業は、すべてのルームで複数の通信カラオケメーカーの機種が利用できる独自開発のカラオケ集中管理システム「鉄人システム」をベースとして、50万曲を超える豊富な楽曲配信、独自分析によるオリジナル楽曲の配信、顧客情報のデータベース化などを特徴としている。

 出店戦略は20ルーム前後の中小型店舗で設備投資負担が小さい居抜き物件への出店を基本としている。首都圏中心部の駅前立地などでは40ルーム以上の大型店も出店する。なお14年8月期からは、従来の拡大路線から収益性と効率性を重視した厳選出店戦略に変更し、不採算店舗の営業フロア縮小・業態転換・閉店も進めて収益改善に注力している。

■不採算事業整理と新サービス企画を加速

 コア事業であるカラオケルーム運営事業の収益向上に注力するため、グループ内の経営資源を本業に集中させ、不採算事業・子会社の整理を進めている。

 14年6月には業績不振だった韓国カラオケ店舗事業について当社持分の全部を譲渡した。15年1月には台湾でフルサービス型珈琲ショップを運営する連結子会社の解散を発表した。15年4月には広告代理店業務などを展開する子会社パレードの解散を発表した。15年7月には100%子会社のシステムプランベネックスを吸収合併した。

 15年8月には、京都を中心に「からふね屋珈琲店」を展開するフルサービス型珈琲ショップ運営事業について、運営子会社(からふね屋珈琲)の全株式をジェイアール西日本フードサービスに譲渡した。

 一方で12月8日には、モバイル・ミュージック配信サービス企画・運営などを転化うするレコチョク(東京都)との共同出資による企画会社設立を発表した。共同出資で設立する企画会社(仮称:T・Rプロジェクト、15年12月11日設立)を通じて新サービスに関する協議を適宜実施するとともに、映像と音楽を活用した新しい音楽体験サービスを提供する事業会社を設立して、来年度(17年8月期)のサービス開始を目指すとしている。

■第2四半期(12~2月)と第3四半期(3~5月)が繁忙期の収益構造

 なお当社の収益構造に関しては、カラオケルーム運営事業が季節要因の影響を受けやすく、忘年会・新年会シーズンの第2四半期(12月~2月)、および歓送迎会シーズンの第3四半期(3月~5月)が繁忙期となり、売上・利益構成比が高いという特徴がある。

 14年8月期の四半期別推移を見ると売上高は第1四半期(9月~11月)22億92百万円、第2四半期(12月~2月)27億95百万円、第3四半期(3月~5月)26億53百万円、第4四半期(6月~8月)24億11百万円で、営業利益は第1四半期2億12百万円の赤字、第2四半期2億86百万円の黒字、第3四半期1億49百万円の黒字、第4四半期82百万円の黒字だった。

■15年8月期は営業損益が大幅改善

 15年8月期連結業績は、売上高が14年8月期比3.1%減収だが、営業利益が同38.2%増益、経常利益が同52.1%増益、純利益が同2.2倍増益と大幅増益だった。

 カラオケルーム運営事業の不採算店2店舗閉店などで減収だったが、厳選出店と不採算店閉店、店舗商圏・環境を意識したセグメント・マーケティングの推進、既存店舗オペレーションの見直し、閑散期における店舗原価削減施策の推進の効果などで営業損益が大幅に改善した。売上総利益率は同2.2ポイント上昇して19.5%、販管費比率は同0.9ポイント上昇して15.2%だった。

 特別利益には固定資産売却益、子会社からふね屋珈琲の株式譲渡に伴う関係会社株式売却益、特別損失には投資額の回収が長期におよぶと判断したカラオケ運営事業の用に供する店舗建物設備について減損損失を計上した。ROEは同7.7ポイント上昇して15.3%、自己資本比率は同3.8ポイント上昇して21.4%となった。配当は同6円50銭増配の年間11円(第2四半期末5円50銭、期末5円50銭)で配当性向は23.5%だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)22億78百万円、第2四半期(12月~2月)27億25百万円、第3四半期(3月~5月)24億04百万円、第4四半期(6月~8月)24億34百万円、営業利益は第1四半期1億01百万円の赤字、第2四半期3億34百万円の黒字、第3四半期1億36百万円の黒字、第4四半期53百万円の黒字だった。

■16年8月期増益予想で収益改善基調

 今期(16年8月期)の連結業績予想(10月15日公表)は、売上高が前期比9.6%減の89億円、営業利益が同4.2%増の4億40百万円、経常利益が同13.1%増の5億円、純利益が同3.3%増の3億円としている。

 子会社からふね屋珈琲の株式譲渡によってフルサービス型珈琲ショップ運営事業から撤退するため減収予想だが、店舗環境に応じた効率的な販促活動、原価削減、人員配置などの確実な計画・実行などで増益予想だ。なお財政状態が相当程度改善したため、カラオケルーム運営事業における新規出店を再開する方針だ。

 カラオケルーム運営事業は大手チェーンとの競合が激しいが、収益性の高い地域に厳選した出店戦略、顧客満足度向上に向けた店舗教育の強化、オリジナル楽曲の開発・提供加速、大手レーベルとのコラボレーション企画などの営業強化策、店舗オペレーションの効率化などの施策を推進している。不採算店舗閉鎖や不採算事業の整理進展なども寄与して収益改善基調だろう。

 配当予想は前期比1円減配の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。予想配当性向は20.7%となる。配当についての基本方針は、中長期的な配当性向の目安として連結純利益の20%をメドに配当を行うとともに、当期および今後の業績や財政状況等を勘案して継続的に配当を行うとしている。

 なお15年7月に総額29億円のシンジケートローン契約締結を発表した。既存借入金のリファイナンス資金の調達を目的として、8月6日付でトランシェA18億円(実行日9月30日予定)、トランシェB11億円(コミットメント期間開始日15年9月1日、満了日16年8月30日)のシンジケートローン契約を締結した。既存借入金のリファイナンスによって有利子負債の削減を着実に進めて財務健全性を高める。

■株主優待制度で積極還元姿勢

 子会社からふね屋珈琲の株式譲渡に伴って15年7月、株主優待制度の内容変更を発表した。変更後は毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、①当社カラオケ店舗「会員カード」、②当社カラオケ店舗およびマンガ店舗で使用可能な「飲食ご優待券」の2商品を贈呈する。なお②は保有株数に応じて贈呈する。

■株価は調整の最終局面

 株価の動きを見ると、株価は再び水準を切り下げて調整局面だ。レコチョクとの共同出資による企画会社設立を好感して12月9日に565円まで急伸する場面があったが、買いが続かず12月14日には495円まで調整した。

 12月15日の終値499円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS48円30銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS327円07銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約33億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、10月の直近安値471円に接近して調整の最終局面のようだ。16年8月期増益予想で収益改善基調である。調整が一巡して反発のタイミングだろう。

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