トレックス・セミコンダクターはアナログ電源ICのリーディングカンパニー、小型低消費電力で業界をリード
- 2014/9/11 10:11
- IRインタビュー
■中期計画として、車載、産業機器の売上比率50%、利益率20%を目指す
トレックス・セミコンダクター<6616>(JQS)の代表取締役社長藤阪知之氏に近況と今後の展望について伺った。
――まず事業内容を簡単に確認させてください。
【藤阪社長】 アナログ電源専門メーカーです。扱っている製品は、レギュレーター、コンバーター、或いは電圧の検出器等の主力製品を製造しています。生産については、前工程は外部に委託、後工程も大半を外部に委託していますが、我々が特許を持っている特殊なパッケージの一部をベトナムで生産しています。基本的には、前工程も、後工程もファブレスという形です。ベトナムでは、我々の特殊な技術で作った製品の一部を生産しているということです。
――その比率はどのくらいになるのでしょうか。
【藤阪社長】 後工程でいいますと、15%程です。
――御社の事業のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
【藤阪社長】 私たちが事業を始めたきっかけは、ソニーが電池一本で駆動するカセットテープであるウォークマンを開発する際に、0.8ボルトで動く電源を使用するということで、数社の中から企業を選ばれました。その結果、当社が選ばれ、電源ICの事業がスタートしたといえます。当然ながら、電池1本で長時間動かすということは、低消費電力の電源が必要ということになります。これが、我々の一番の売りです。カセットテープは電池1本しか入らない容量となっていましたので、当然パッケージも小型でなければなりません。我々はそれ以来、電池で動く製品に対応してきました。ところが、カセットが流行って、CDとかMDとか、ページャー(小型の液晶端末にデータを送信する移動通信システム)という電池で動くものが増えてきましたので、我々の製品を扱ってくださるお客さまも増えてきました。その当時、我々が作ってきたのはカセットテープぐらいしかなかったので、それ用の小型低消費の電源を作るところはがありませんでした。マーケットとして非常に小さいかったのですがので、我々は始まったばかりの会社ということもありで、それ小型低消費のアナログ電源IC1本に絞って、事業を進めてきました。小型化の市場が進むと共に、我々の事業も拡大してきました。小型低消費のアナログ電源ICに関してえはいえば、業界でも一番最初に手掛けた企業といえます。バッテリーで動く製品用の電源ICについては、一番歴史を持っているといえます。携帯電話が普及してきて、他社さんはこのマーケットは伸びるということで、手掛けられたのが大半といえます。そういう意味では、小型低消費に関しては、我々が先行しているといえます。それまでは、電源ICというのは、殆んど家庭で使われる100ボルト対応製品向けのものが普通でした。あまり消費電流は気にせずに、小型でなくてもよかったのです。半導体も低消費向けのCMOSという作り方と、従来のバイポーラという作り方があるのですが、我々は最初からCMOSというやり方で電源を作りました。それがうまくいって、ソニーさんに採用されたということです。
――それなりの技術の蓄積が元々あったわけですね
【藤阪社長】 今は、ファブレスですが、元々作る技術は持っていました。ファブレスとしては珍しく、半導体の前工程のプロセス技術者も持っていますし、後工程のパッケージ技術者も持っています。単なるファブレスだと、作っていただくところの作り方へ、こちらの開発を合わせていく作っていただくということになるのですが。我々は、作っていただくところのプロセス技術と我々の開発技術を合わせて、一番効率よく特性を出せる設計を行い、作っていただくところ半導体メーカーさんに、製造プロセスを微調整してもらいさせながら作っていただいていもらいます。これが技術的な強みになっています。当社の強みのその典型といえるのが、独自のパッケージであり、特許を持っています。当初はパッケージ会社へ技術を供与しながら、超小型パッケージUSP(Ultra Small Package)を作っていりましたが、5年前にその専門工場を作りました。
――そういう歴史があるんですね。
【藤阪社長】 小型、低消費について20年以上の歴史があります。アメリカのアナログメーカーより先んじて、バッテリー対応機器という低消費、低電圧の分野では、歴史を持っているし、アナログに関するでは、技術の積み重ねも持っています。世界でもトップクラスだと自負しています。しかし、現在注力しているの車載用になりますと中高耐圧の製品が必要となります。この分野はさすがにアメリカが先行しています。現在追いかけていっている状況です。低消費電流という技術は持っていますので、車でも、何でも低消費が当たり前の時代なので、この技術を中高耐圧に応用して製品を揃えているところです。
――業績についてはこれまで順調でしたか。
【藤阪社長】 リーマン・ショックまでは右肩上がりでした。特に小型低消費の電源を必要とするアプリケーションが格段特段に増えましたから、CDからMDになり、ページャーになり、それから携帯になり、デジカメが出てきて、周りにモバイル機器が増えてきました。テレビも環境に優しくするために電力を抑えるということが10年前程から言われています。家庭用電気製品といえども低消費電流が求められています。ということでうまく右肩上がりの業績でありました。しかし、リーマンを境にテレビ、携帯、デジカメもコモディティ化して、誰でも部品を買ってくれば出来るという状態になってきますと特性よりも、いかに安くするかということが求められてきました。そうなると似たような製品が韓国、台湾、中国で作られて、価格競争で負けてしまうという結果になりました。これでは、今後難しいということで、リーマンを境に、そのような製品からは出来るだけ手を引いて、車載とか産業機器という、我々の技術特性を正当に評価してくれる分野に、経営資源を集中しました。今では、車載、産業機器が売上の35%を占めるまでに成長してきました。リーマン前は5%くらいでした。
――モバイル関連は、技術的な優位性だけでは、なかなか難しくなってきたということですか。
【藤阪社長】 そうですね。例えば、リチウムイオン電池の3.3ボルトで動くようになってきたのです。3.3ボルトだけで動くモノづくりをすると非常に安く作ることが出来ます。我々は0.1ボルト単位で、あらゆる電圧に対応する技術を持っていますが、その機能を必要としないわけです。ただ、3.3ボルトだけに対応する機器であればよいので、如何に、大量に安く作れるか、というることだけが求められたのです。それで、その分野からは撤退したということです。
――では、御社にとっての競合相手はどこになりますか。
【藤阪社長】 今の、車載とか産業機器になりますと欧米系、特にアメリカ系のアナログ専業メーカーです。TI(テキサス・インスツルメント)、マキシム等が挙げられます。市場は大きくないうえに、アナログの技術者を一人前に育てるまでに、10年近く、或いはそれ以上の年月がかかりますので、大企業は参入しようとはしません。
――御社の説明会資料を見てみますと、IC電源の市場は8700億円であり、年々4%ほど伸びているということですが、この市場がなくなるということはあり得ませんね。
【藤阪社長】 あり得ません。自然現象は全てアナログですから、それを処理するためにアナログをデジタルに変えて処理した方が便利ですからデジタルの半導体が真ん中あたりで使われています。しかし、入と出はアナログです。
――電気の専門のアナリストであれば、半導体にも色々な製品があって、分野も色々に分かれているということは理解していますが、個人投資家から見ますとどうしても、半導体といえば、全体が一緒くたになってしまって、全部がDRAMの世界のように捉え、半導体は儲からないと思っていらっしゃる人たちも多いと思います。そのような皆さんに、アナログは成長産業ですよ、と説明するにはどのようにすればよいのでしょうね。
【藤阪社長】 例えば、デジカメでいうと機能が色々増えてくるわけです。マイコンがあり、液晶を動かし、機械的にモーターを動かし、或は時計の機能があるとか、現在はGPSの機能も付いています。それらを動かすためには皆電気が必要です。ところが、電池は1個しか入っていません。マイコンとかを動かすためにには、必要な最適な電流、電圧はがそれぞれ違います。全部が3.3ボルトで動くわけではありません。マイコンであれば、1.1ボルトで動くだとか、必要な電圧が皆違うので、バッテリーの電圧で上げたり下げたりしながら、それぞれの機能へ電気を送らなければなりません。要するに、機能が増えれば増えるだけ、電源の数が必要となってきます。ここを処理するのはアナログで行うのが一般的です。厳密にいえば、デジタルの電源ICもあるのですが、基本的にはアナログの電源ICが主流ですで行っています。今後も製品の機能が増えていけば、必然的にアナログ電源ICの需要必要性も増えてくることになります。
――こうやって、過去の話を伺っていますと、ベンチャー企業とは違いますね。
【藤阪社長】 もともと半導体を作る能力と、設計の部門を持っていましたので、ファンドリーに委託するだけではなく、自前の製品を持たないと業績は安定しないと思っていました。ちょうどその頃、先ほど話しましたように、ソニーさんの話が来ましたので、今後はバッテリー対応の製品が増えるだろうと判断し、小型低消費を強みに、アナログ電源ICメーカーとして成長してきました。
――今期の業績の見通しについてですが、最終利益は別にしまして、営業・経常利益は増益なのですが、伸び率が少し保守的ではないかと思いますが。
【藤阪社長】 我々が主力としているのは、一つは車載です。これはご存知のように、採用されるまでに時間がかかります。またこれが採用されても量産が始まるまでも時間がかかるため、売上への貢献してくれる増える速度がゆっくりとしたものであるということです。産業機器も車載機器と同じく、採用までの期間と量産までの期間が長いことと同じく、1社のお客さまんでは売上数量が少ないので、どれほど多くのお客さまんをつかんでいくかということなので、比較的時間がかかります。従って、車載、産業機器の売上予想はほぼ固まっています。車載、産業機器の売上が全体の35%ですが、残りの65%も付加価値の高い分野の製品に当社の製品をを納めています。主に行っているのな対象は、1眼レフカメラ、ウェアラブル機器、白物家電であり、この分野は、急激に台数が伸びるものでもありません。従って、業績は安定していますが、急拡大するというわけではありません。ただ、これから普及が進むであろうウェアラブル機器が爆発的に売れるということはあるかもしれません。
――今後は、車載・産業機器向けのシェアを拡大し、急成長ではなく、安定的な成長を目指すということですね。
【藤阪社長】 第1四半期は計画通りでしたが、通期に対する進捗率で見ると高いとは言えません。これは季節要因のためです。これから第3四半期に向けて売上が伸び、第4四半期には減少するというパターンです。しかし、車載、産業機器のシェアが伸びましたので、カーブは緩やかになっています。今後、車載、産業機器を全体の50%まで伸ばす計画です。残りは、付加価値の高い高級機種向けの製品を増やしたいと思っています。売上を追わず、20%の利益率を目指します。
――本日は、長い時間ご説明頂き誠にありがとうございました。
今期15年3月期通期業績予想は、売上高104億円(前期比10.7%増)、営業利益15億円(同6.0%増)、経常利益15億円(同12.0%増)、純利益11億円(同18.9%減)を見込む。